消費者物価はコアコアCPIで見るといまだ1%に満たず、金融政策の変更にまでは至らないのではないか。

日本も長くデフレの状態が続いてきましたが、もしかしたらようやくその状況が変わるのかもしれません。先日発表された消費者物価の伸びが1.9%上昇し、日銀の目標である2%まで随分と近づいてきました。もちろん、これだけで日銀の政策がすぐに変更するということはないでしょう。しかし、来年には日銀総裁の交代も行われることもあり、大きな金融政策の変更もありそうです。そういう意味では日本経済も大きく変わっていくのかもしれません。そういうわけで今日は先日発表された消費者物価についてみていきたいと思います。

コアCPIは1.9%の上昇

6日、総務省が発表した東京区部の消費者物価の伸びはコアCPIにおいて前年同月比1.9%の伸びとなりました。

総務省によると、4月の東京都区部消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)は前年同月比1.9%上昇し、前月の同0.8%上昇から大幅にプラス幅が拡大、2015年3月以来の水準となった。前年の携帯電話料金値下げの反動に加え食品価格の上昇が押し上げた。

引用:ロイターより

1.9%というのは変動の激しい食品を除いたものであり、すべてを含めた総合やエネルギーものぞいたコアコアと呼ばれるものは以下のようになります。

  • 総合CPI:2.5%(前年同月比)
  • コアCPI:1.9%(前年同月比)
  • コアコアCPI:0.8%(前年同月比)

引用:総務省ホームページより

このように、消費者物価はこれまでに比べ非常に大きな伸びとなりました。これは記事にもある通り、携帯電話値下げの影響が大きく出たものと思われます。菅政権時に行われた携帯電話の値下げにより、消費者物価はこれまで随分と低く抑えられていました。しかし、4月からはその影響もなくなり、逆に反動が大きく出るようになったのです。そのため消費者物価の伸びも大きくなりました。それに加えて最近のエネルギー価格の上昇や円安や商品価格の上昇など複数の要因が重なり、これほどの消費者物価の上昇となったのでしょう。

多くの物の価格が上昇してきている

今回の物価上昇に影響したものについてロイターの記事では以下のように述べています。

コアCPIの前年比プラス幅拡大にもっとも寄与したのは携帯料金値下げの剥落で、約0.8ポイント押し上げた。このほか生鮮食品を除く食料も0.17ポイント押し上げた。持ち帰り用寿司が前年比12.1%、ハンバーガーが同6.7%、食パンが同8.4%上昇した。家庭用耐久財も0.08ポイントの上昇要因。冷蔵庫が前年比21.6%上昇した。一方、エネルギーは前月比で0.03ポイント押し下げ要因だった。ガソリンの前年比が3月の17.7%上昇から4月は14.3%に縮小したのが要因。政府によるガソリン高抑制のための補助金制度などが作用したと総務省ではみている。このほか生鮮食品では前年比で、タマネギが88.7%、マグロが25.2%、イチゴが14.1%上昇した。

引用:ロイターより

携帯電話についてはすでに述べたとおりですが、生鮮食品以外でもパンなどの値上げが厳しいようです。ご存じの通り、日本は小麦の多くを海外からの輸入に頼っています。そのため今の物価上昇の影響をもろに受けてしまうのでしょう。その他の食品も大きく上昇しています。エネルギー価格の上昇の影響も大きく、家計への負担もかなり大きくなっているものと思われます。

コアコアで見るといまだに1%未満

しかし、中身を見てみると今回の記事の中で価格が上昇しているもののほとんどが食品やエネルギー関連の物ばかりです。実際それらを含めた総合CPIについては2.5%の上昇ですが、それらを除いたコアコアCPIは0.8%といまだに1%にも満たない上昇率です。世間では物価の上昇が大変だといわれてはいますが、日本全体の物価として見た場合、まだまだインフレと呼ぶには程遠いという状況ではないかと思います。そういう意味では金融政策の変更というのはまだ怒らないのではないかと思います。

まとめ

今日は先日発表された消費者物価についてみてきました。いよいよ日本も物価が上昇し始めたのかなとみられていますが、中身を見てみるとそれほど大きく上昇しているという感じはしません。もちろんエネルギーや食品等の価格上昇は厳しいものがあり、家計への影響は大きいでしょう。しかし、それらを除いてみるといまだに1%に満たない物価上昇というのは日銀の金融政策を変更させるというのには不十分だといわざるを得ません。少なくとも今の黒田総裁が在任のうちに大きな金融政策の変更は起こらないものと思われます。そのため為替は円安傾向であり、輸入品についても上昇傾向が続いていくのでしょう。