日本たばこ産業の株主優待廃止のニュースから思うこと

株主優待は個人投資家に非常に人気の制度です。株主優待に主眼を置いた投資をしている人も多く、企業もこれまで個人投資家を取り込むため重視してきた側面もあります。しかし、これからはその傾向は変わるのかもしれません。先日、日本たばこ産業が株主優待の廃止を発表し、非常に大きな話題となりました。失望の声が大きく上がったことも当然ですが、むしろその方がよいという意見もあります。個人的にも本来の投資という意味においては株主優待はない方がよいと常々思っていました。なので良い傾向なのではないかと思っています。そこで今日は今後の株主優待について考えてみたいと思います。

個人投資家に衝撃が走ったニュース

2022年2月14日、個人投資家にとって衝撃的なニュースが発表されました。日本たばこ産業が株主優待の廃止を決定したというのです。

このニュースは非常に注目を集め、特に株主優待を中心に投資をしている個人投資家にとっては衝撃的なものであったろうと思われます。日本たばこ産業は配当利回りも非常によく、かつ株主優待も魅力的であり、個人投資家にとって非常に人気の銘柄でした。その日本たばこ産業が株主優待を廃止するというのはとてもインパクトの大きいものでした。

株主優待廃止の背景

その背景として、日本たばこ産業は以下のような説明をしています。

  • 株主優待の目的はグループ事業の理解を得るためであった
  • 株主に対する公平な利益配分の観点から廃止を決定した

株主優待を行う企業というのは通常は自社製品を提供することが多いです。それにより自社商品をより広く認知してもらったり、その有用性を知ってもらうなどの効果を期待してのことだと思います。日本たばこ産業についてもその効果を見込んで行ったことは十分に考えられます。日本たばこ産業はその名の通り、たばこ事業を中心に行っている会社です。しかし、最近はたばこだけではなく食品事業など様々な分野での事業展開をしています。最近はそのことを知っている人も多くなってきたと思いますが、以前は今ほど認知されていなかったように思います。そういう意味でも株主優待制度を利用し、自社の行っている事業を広く知ってもらおうという試みは十分に効果を上げられたのではないかと思います。

株主優待は非常に不公平な還元制度

しかし、株主優待を行うということは株主に対する利益還元という面で見れば,不公平感を与えることは少なくありません。例えばビールメーカーなどは株主優待として自社製品のビールを株主優待として提供していますが、当然お酒を飲めない人にとっては何の利益にもなりません。これは明らかに不公平です。このように特定の商品による利益還元というのはどうしても不公平感を出してしまいます。そういう意味では株主優待での利益還元をあまり重視しすぎるのは問題があるのでしょう。

個人的にはこの動きに賛成

個人的には昔から株主優待には疑問を持っていました。株主優待を比較するサイトなどでは、優待と配当を合わせた還元率などで評価しているものもあります。しかし、優待は金銭とは違い、それが自分自身にとって有益かどうかというものは調べてみないとわかりません。もし、不必要なものであったらその分損をしてしまうということになります。食品など幅広い層にとって有益なものであればまだいいですが、非常に狭い範囲の人しか対象としないようなものを優待としている企業というのは正直投資対象として見づらいです。そういう意味でも今回の日本たばこ産業の決定は個人的には非常に良い動きだと思います。その方が株主に対する利益還元という観点から非常に平等であり、問題も起きづらいでしょう。もちろん株主優待を否定するつもりはありませんし、なくなるとも思いません。日本たばこ産業のように、自社のあまり知られていない商品をアピールする機会として有効であることは間違いないだろうとはおもいます。要は程度の問題だということです。あまり株主間での不公平感が出ない程度の宣伝効果を狙ったものであればいいのではないかと思います。

まとめ

今日は日本たばこ産業の株主優待廃止の動きから、株主優待に対する個人的な意見を述べてきました。この制度自体は非常に日本的で面白いものだと思いますし、続けていくことに反対はしません。しかし、あまり過熱しすぎると株主還元に対する不公平感を出してしまうのでほどほどにしておくべきでしょう。特に海外投資家にとっては株主優待というのは何の意味もないものです。そして現在の日本市場を動かしているのは海外投資家です。そういう意味ではこの流れというのはこれからも続いていくでしょう。なので株主優待を中心に投資をしているという人は注意が必要かもしれません。