金融所得課税も問題だけれど…

最近、金融所得課税の話が結構盛り上がっています。私が毎日読んでいるブログ、「The Financial Pointer」でも記事に取り上げられていました。最近、日本のマーケットが非常に低調なこともあって、岸田政権の姿勢に疑問を持っている人も多いようです。そういう人たちからすれば、この増税の話は非常にたたきやすい的になるのでしょう。私が最初にこの政策を認識したのは、自民党の総裁選で、高市氏が発言してからです。たしか、高市氏は金融所得課税を、現在の20%から30%への引き上げを主張していたと思いますが、岸田政権内では25%への増税の検討が行われているようです。そういうわけで今日は、この金融所得課税のニュースについて考えてみたいと思います。

金融所得課税とは

金融所得課税とは、預金、株式、投資信託などの金融商品で得た所得(配当金、利子、株式譲渡益など)に対して税金を課すことをいいます。現在、金融所得に対する税率は一律20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)となっています。数百円の利益であろうと、数億円の利益であろうと税率は変わりません。

引用:マイナビニュースより

日本国内で発生したあらゆる所得に対して所得税がかかるのは御存じだと思いますが、そのうち、金融所得に対してかかる税金を金融所得課税といいます。昔は株式や公社債では税率が違ったんですが、2016年から税率が一体化し、投資商品にかかる税金はすべて同じになりました。こうすることにより不公平感がなくなり、非常にわかりやすいものとなったのです。株式投資をする者にとっては非常に重要な問題で、この税率が少し変化するだけでも、投資成績に大きな影響を及ぼします。たとえ1%であっても、資産が大きくなればなるほど、影響は無視できない金額になります。それだけに今回のニュースは投資家にとって大きな話題となっているのでしょう。

岸田政権はなぜ増税をしようとしているのか

現在、税率は所得税・住民税と復興特別税を合わせて20.315%となっていますが、これを25%にしようというのです。なぜそんなことをしようとするのかはおそらく以下の3点が目的だと思われます。

  • 格差是正
  • 新型コロナウィルス対策
  • 財政健全化

参照:金融所得課税、20%から25%へ増税でも市場害さず-岸田派・山本氏 ブルームバーグ

格差是正

格差是正というのはいわゆる「一億円の壁」とよばれる、一定の収入を超えると、税率が下がるという問題の解消です。給与所得など累進課税方式の所得は、所得が増えるほどに税率が上昇していきますが、金融所得についてはいくら収入があっても一律20%です。そのため、所得が上昇していくと結果的に税金が低くなってしまい、不公平になるのです。そして、その転換点が一億円なのです。

引用: 金融所得課税、20%から25%へ増税でも市場害さず-岸田派・山本氏 ブルームバーグ

たしかに、高額所得者の方が税金が少ないというのは明らかに不公平でです。そこを是正するというのに全く異論はないですが、なぜこのタイミングなのかと思います。今、日本は経済状態が非常に悪いです。新型コロナウィルスの影響もあると思いますが、そもそもコロナウィルスパンデミックの前から日本経済は、成長がとまり、むしろ悪くなっていたように思います。そのタイミングでパンデミックが起き、経済が大変ダメージを負いました。そこからコロナ前の状態に戻し、さらにそれ以上に成長をしていかなければならないというときに、増税というのはさすがに問題があると思います。明らかに個人も企業もネガティブなマインドになるでしょうし、それは当然経済にとってマイナスです。格差是正は個人的には異論はありませんし、やるべきだとは思いますが、タイミングと手段が明らかに間違ってるような気がしてなりません。

そして、課税するのであれば、低所得者に対する配慮をするべきだと思います。特に若い人をはじめ、投資をする人は年々増えてきています。証券口座の開設数もどんどん増加しています。なので、投資をしているイコール富裕層というのは明らかに間違った考え方です。今は低所得の人たちも投資をしてますし、むしろこれからはそういう若い層はどんどん増えていくでしょう。政府の「貯蓄から投資へ」の方針ともあっています。そういうところへ増税となると、明らかにハードルが上がってしまい、投資への意欲をそぐことになるでしょう。そういう意味でも、一律で増税ではなく、高所得者への増税や、短期売買など一部の取引に限定しての課税が望ましいと思います。

新型コロナウィルス対策

新型コロナウィルス対策についてはブルームバーグの記事で自民党岸田派の山本幸三衆議院議員の発言として「真水で30兆円必要」といっています。だから増税が必要ということでしょう。しかし、何度も言いますが、増税は景気後退局面でやるべきではありません。こんな時に増税すればかえって悪影響の方が強くなるんじゃないでしょうか?それに、30兆円という莫大なお金をたった5%程度、金融所得課税を増やしたところで賄えるとも思えません。

財政健全化

財政健全化については、何度も言いますが、タイミングが違います。きちんと経済成長をし、そののちに少しずつやっていけばいいのです。このままだと将来がどうのというかもしれませんが、今がダメになれば将来なんてやってきません。少なくても十分な成長を確認できるまでは財政健全化については凍結すべきでしょう。

個人的に一番感じている問題

ただ、岸田総理は金融所得課税について、当面触ることはないとテレビで発言したそうです。岸田総理は分配を重視する発言をしていますが、その前に成長だとも以前から言っています。これは高市氏も、総裁選の時、そのように発言していました。私も、岸田総裁がインタビューやトーク番組等での発言をいくつか聞きましたが、私が聞いたときはほぼ確実に「成長が先で分配が後」と言っていました。分配が大事だが、その前に分ける物がなければ意味がないといっていたのです。ですから、私はそこまで心配はしていなかったのですが、最近の報道で方針が変わったのかなと思っていました。しかし、改めて成長が先といったことは評価できると思います。問題は総理とその周辺の人間の意思疎通ができてないことだと思います。今回の騒ぎでは総理の派閥である岸田派の人から増税の発言が出てきています。もし、岸田総理が考えを改めたわけでもないのに、周りの人間が全く違うことを言ってしまえば混乱するに決まっています。こんなことをしても誰も得しません。そういう意味でも、政権内・および派閥内の意思統一をしっかりしてもらいたいものです。そうでなければ国民は混乱するだけです。この辺の政府・与党内での意見の相違というのが、私自身か今回一番問題に感じたところです。

参照:金融所得課税、当面見直さず 「すぐやる」は誤解―岸田首相 時事通信

まとめ

今日は最近話題の金融所得課税について述べました。私は細かい法律の話はよく分かりませんし、どのようにしたら皆が幸せになる税制ができるのか、見当もつきません。しかし、今現在の税制は不公平感があるというのは何となく感じています。ですから税制改正については反対しません。ただ、タイミングと方法についてはしっかりと考えてもらいたいです。いかなる増税も、景気後退局面でやるべきではないと思うし、やり方を間違えればもっと格差が広がっていくでしょう。あくまで成長が先で、増税はその先です。それと、国民との意思疎通もしっかりしてほしいと思いました。政府内や与党、そして総理大臣が違うことを言っていては混乱するだけですし、信用もされなくなります。まずは身内からきちんと意思統一をして、しっかりと国民に対して広報をしてほしいと強く感じました。