国民負担率が48%にも達してしまった日本

世界はインフレによる物価上昇に苦しんでいますが、日本は今のところ諸外国ほどの物価上昇は起きていません。それでも食品やエネルギー価格の上昇は起きており、国民生活は以前よりも厳しいものとなってきています。その厳しさを表すような数字が先日財務省より発表されました。税や保険料などをどれくらい負担しているかを表す国民負担率がなんと48%にもなり、非常に多くの税負担が課せられていることが明らかとなりました。所得が全く伸びない中で、負担だけが年々増えているという事実はとても厳しい現実です。そういうわけで今日は先日発表された国民負担率についてみていきたいと思います。

財務省

国民負担率とは

国民負担率とは国民や企業がどの程度の負担を強いられているのかを表す指標で、公的負担の割合を国際的に比較することのできるものとして利用されています。財務省の発表によると、令和3年度の国民負担率は48.0%となり前年度より0.1%増え、過去最大の負担率となりました。令和4年度については国民所得の改善が見込まれるなどの影響により、46.5%まで改善するとの見通しだそうです。

日本の国民負担率は年々上昇している

日本の国民負担率は年々上昇しています。財務省の資料によると、国民負担率は以下のような推移をしてきています。

  • 昭和45年 国民負担率24.3%
  • 平成元年 国民負担率37.9%
  • 平成10年 国民負担率36.2%
  • 平成20年 国民負担率39.2%
  • 平成30年 国民負担率44.3%
  • 令和03年 国民負担率48.0%

このように国民負担率は年々上昇してきています。ときどき停滞気味になることもありますが基本的には右肩上がりです。しかも令和に入ってからは急激に負担率は上昇してきており、令和2年度には前年に比べ3.5%も上昇しています。

諸外国と比べると日本の負担率はそこまで高くはない

このように日本という国は非常に厳しい負担を国民に敷いているように見えますが、同時に財務省から発表された諸外国の国民負担率と比べてみると、そこまで負担が高くはないことが分かります。OECD加盟国35か国の中で比較してみると日本の負担率は25番目となり、特別高い負担を強いられているわけではないことが分かります。

財務省発表資料より

国民負担率の数字だけで善悪は判断できない

これらの数字を見てどのように感じるでしょうか。国民負担が増え続けているから問題だと思う人が多いとは思いますが、諸外国よりも少ないのであればそんなに問題でもないのではないかと思う人もいるかもしれません。この判断についてはおそらくは正解というものはないのではないかと思います。仮に負担がとても多くても、その分保障が充実しているのであれば不満も出ないでしょう。国民負担が少ないということはそれだけ自分で自分のことをしなければならないということです。なので一概にこの数字だけを見ていい悪いは言えないような気がします。実際日本よりも負担率の多い国というのは北欧などのいわゆる高福祉高負担の国々であり、少ないのは米国のような自分のことは自分でやるという国になっています。

低福祉高負担になってはいないか

今回の発表ではおそらくは財務省としてはまだまだ国民負担が足りないぞということを言いたいのではないかと思います。国民負担は増えてはいるが諸外国に比べればまだ大したことないのだから文句を言うなよということでしょう。だからこそ日本の国民負担と合わせて諸外国の負担率、特に高負担の国々の物を出してきたのだと思われます。そういう意味では非常にたちの悪いものです。個人的には負担率が高いか低いかということにはそれほど大きな意味はないと思います。先ほども言いましたが、負担が大きいということは保証が充実しているということですし、少ないということは自分のことは自分でやるということです。これはどちらが優れているかということではなく、価値観の問題です。日本人がどのような社会の方がいいのかを判断し、それに合わせていけばいいだけだと思います。問題は税負担が増えているのにもかかわらず、保障がちっとも充実しているように見えないところです。国民負担は確実に増えてきています。しかし、国民生活は物価の上昇もあり全く楽にはなっていません。エネルギー価格が上昇しているのにもかかわらず、それに対する税負担の軽減などは全く行われないのです。社会保障についても特に若年層に対する補償の少なさに対しては多くの問題が言われています。これでは国民の納得は得られないでしょう。負担を増やすというのも一つの方法だとは思いますが、そうであれば保障を充実させるべきです。保障をしないのであれば負担を課すべきではないし、個人的にはそのような低負担の社会の方がいいと思っています。

まとめ

今日は先日発表された国民負担率についてみてきました。ネットではこの発表について批判的な意見が多いような気がします。負担が重くなるのは嫌だというのはわかりますが、それだけで善悪を判断できるものではないと思います。社会全体をどうしたいのかという全体像をしっかり持ったうえで議論しなければ意味がありません。北欧のような高福祉高負担の方がいいのか、米国のように低福祉低負担がいいのか、または全く違った独自の物を目指すのか。個人的には自由な社会というものがいいと思っているので負担は可能な限り低く抑えるべきだとは思いますが、日本人の気質的に困ったときは国が何とかするべきと思っている人が多いような気がするので、ある程度の負担は仕方がないのかなとは思います。そうであったとしても、負担を強いるのであればそれ相応の保証を充実させてほしいものです。今のようにただ負担だけが増大し、保障が全く充実しないというのでは意味がありません。