岸田首相めざす四半期開示の見直しについて、審議会が賛成ゼロという回答

株式投資を行なう上で投資対象の企業を正確に分析するということは非常に重要なことです。その企業がどのような事業を行っているのか、業績はいいのか、この先の業績予想はどうなのか、法を犯したり倫理に反するようなことはしていないのか等、知っておくべきことは多岐にわたります。そのための重要な資料として企業が報告を義務付けられている四半期決算短信や四半期報告書があります。これは上場企業は3ヶ月ごとに投資家に対して現在の業績がどうなっているのかや今後の見通しがどうなっているのか等を報告する非常に重要なものです。しかし、岸田政権はこの四半期ごとに行っている開示の義務を改めようとしています。これは投資家からすると非常に重要なテーマであり、見逃すことができないものです。そういうわけで今日は政府の四半期開示見直しの動きについて見ていきます。

四半期開示は投資家にとって非常に重要

上場企業は経営の透明性や投資家保護などの観点から四半期ごとの業績などの報告義務が法律によって義務付けられています。この制度は日本だけでなく、諸外国でも導入されている制度であり、経営目標の進捗状況を確認する上でも非常に重要なものとなっています。ですが、岸田政権はこの四半期開示を見直そうとしています。なぜこのようなことになっているのでしょうか。

四半期開示が企業の短期的な利益追求を助長している?

岸田総理はご存知の通り、「新しい資本主義」という理念を掲げ、政策を進めています。その政策の中で、利益第一主義からの脱却というものがあります。企業があまりにも短期的な利益にのみ注視しすぎることにより、従業員や社会に対して悪影響を及ぼすとの考えからです。そのため四半期開示を義務化していると短期的な利益追求に企業が走りやすくなり、経済や社会にとって負の影響が大きくなると考えているのでしょう。

投資家の視点で言えば有効であることこの上ない

しかし、四半期開示を義務化していることが本当に社会に対して悪影響を及ぼしているのでしょうか。少なくとも投資家の視点から言えば、とても有効な制度であり、投資環境の透明性を確保することのできる良いものだと思います。企業が何をやっているのかわからないのであればとても投資などできないし、経営計画について現状どうなっているのかというのは非常に興味があるものです。それがいつまで立ってもなんの報告もないというのであれば、流石に投資対象として疑問が出てきます。そういう意味でも四半期開示という制度は投資環境の整備という意味ではデメリットはないと思います。

四半期開示と短期的利益追求の関係があるのか

その結果として企業が短期的な利益追求に走ってしまうというのもよくわかりません。そもそも四半期開示と短期的な利益追求の関係がどうして存在すると言えるのでしょうか。企業は四半期開示をしようがしまいが常に利益を追求していくものです。そうでなければ株主から厳しい指摘を受けることとなり、最悪経営陣は退陣に追い込まれてしまうことでしょう。なので常に企業は利益を求め続けます。そこに四半期開示がどうとかというのは全く関係ありません。仮に四半期開示をやめたところで短期的な利益を追求する企業や株主がいなくなることはないでしょう。

明らかにデメリットのほうが大きい

それ以上に四半期開示をやめることによる経営の不透明性が出てくることのほうがよっぽどデメリットが大きいと思います。あまりにも長期間、経営状況に対する報告がないというのは非常に投資家からすると不安になります。そういうわからないものというのを投資家は非常に嫌う傾向があります。よく、将来の不透明感から株価が下がるとかいうことがあります。これは投資家の心理をよく表している現象だと思います。同じようなものとして、悪材料が出たとしても材料でづくしということで株価が上昇したりもします。要は現状が悪いとしても、将来の不透明感がなくなったということで投資家が安心するということです。このような状況を見たことのある人は多いと思います。なのでとにかく株式市場では透明性が重要なのです。その透明性を阻害するような制度というのは株式市場にとってプラスになるとはとても思えません。

審議会での賛成はゼロ

実際、金融審議会作業部会でこのテーマが議論されたようですが、賛成はゼロだったそうです。参加した人は機関投資家や経済の専門家ばかりなので、当然の結果だと思いました。特に海外投資家からすると市場の不透明性が出てくるというのは受け入れられないでしょう。そうなると海外からの資金がますます日本へ入らなくなり、日本市場の停滞がますます進むと思われます。当然専門家の方々はそのことを十分に理解しているので賛成などするはずもありません。

まとめ

今日は上場企業の四半期開示に対する最近の動きについて見ていきました。投資家からすると企業の不透明性が増す政策というのは全く賛成できません。そもそも四半期開示をやめることによって企業が短期的な利益追求をやめるという考えがよくわからないです。仮にそういう悪い企業があったとしたら、四半期開示をやめた途端に影でいろいろと不正を行いそうです。しかも業績の開示義務がないのですからいつまで立っても表に出てこないということになりかねません。そんな市場や企業に投資したいと思う投資家なんていないです。四半期開示の義務化については、安倍政権下でも議論されたろうですが、デメリットのほうが大きいとして導入を見送られています。審議会でもあまり感触は良くないようですから導入されることはないでしょう。しかし、結果がどうなるかはわかりません。短期的な利益を追求するのは良くないと岸田首相は思っているようですが、短期的な利益を求めているのはむしろ岸田首相の方でしょう。あまりにも考えが浅はかです。金融所得課税や自社株買規制など経済政策については本当に同意できるところがないなと日に日に感じています。