景気減速とインフレの加速が同時に進行する可能性

米国経済の先行きについてやや雲行きが怪しくなってきたのかもしれません。昨日発表された第一四半期のGDPは市場予想を下回るものとなり、景気減速懸念がやや意識されるようになってきました。反面、インフレは依然として強く居座っていることも確認され、利下げ期待は大きく後退しています。景気減速とインフレ再加速が同時に起こるリスクが増加しており、今後の限界が非常に心配になるような展開です。

GDPは予想外に減速

昨日発表された第一四半期のGDPは市場予想を下回るものとなりました。

1-3月(第1四半期)の米経済は前期比で予想以上に減速し、ほぼ2年ぶりの低い伸びとなった。一方で、インフレ率は懸念を引き起こすほど高い水準に上昇。これまで強い需要と落ち着いた物価上昇圧力を背景に経済のソフトランディング(軟着陸)期待が強まってきたが、そうした楽観に水を差す内容となった。

  個人消費は2.5%増で、市場予想(3%増)を下回った。食品とエネルギーを除く個人消費支出(PCE)コア価格指数は3.7%上昇と、四半期ベースで1年ぶりに伸びが加速。市場予想は3.4%上昇だった。

  今回のGDPは、米経済が予想外に力強い1年となった2023年を終えた後、24年に入り勢いを大きく失ったことを示している。インフレ加速を受け、米金融当局に対して利下げを一段と先延ばしするよう圧力が再び高まる可能性があるほか、政策金利が十分高い水準にあるのかどうか当局が検討することもあり得る。

  フィッチ・レーティングスの米経済調査担当責任者、オル・ソノラ氏はリポートで、「今回のGDPで最も注目すべきなのは強いインフレデータだ」と指摘。「経済成長がゆっくりと減速を続ける一方でインフレが悪い方向へと再び強く上昇すれば、年内の米利下げ見通しはますます実現が遠のきそうだ」と記した。

  第1四半期には幅広い分野でインフレが加速。住宅とエネルギーを除くサービス分野の価格指数は5.1%上昇と、伸びが前四半期の2倍近くとなった。

  連邦政府の支出は、GDPへの寄与度が2年ぶりにマイナスとなった。在庫は2四半期連続でのマイナス寄与。

  基調的な需要の強さを測る、在庫と政府支出、貿易を除くインフレ調整後の国内民間最終需要は3.1%増加した。

  サービス支出は2021年7-9月(第3四半期)以来の大きな伸び。医療と金融サービスが特に増えた。財の支出は約1年ぶりに減少。自動車とガソリンが低調だった。

  住宅投資は14%近く上昇し、2020年10-12月(第4四半期)以来の大きな伸びとなった。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、イライザ・ウィンガー氏は「変動の大きな項目を除けば、経済はトレンドを上回るペースで拡大を続けている。加えて、輸入の強さは堅調な需要が続いていることを示唆しており、金融当局としては望ましくない状況といえる」と分析した。

引用:bloombergより

このように今年に入り、米国の経済は予想以上に失速していることが確認されています。その要因としては色々あるとは思いますが、インフレが大きく影響していることは間違いないでしょう。そしてそのインフレも予想以上に強く、まだまだ鈍化する様子もないことも改めて確認されるようなものでした。そういうわけで景気減速とインフレ再加速というある意味最悪の状態へと米国は向かっている可能性が出てきました。これまではインフレ鈍化によりソフトランディングも現実味を帯びてきていましたが、ここへ来てそれがかなり怪しくなってきたと言っていいのかもしれません。

景気減速とインフレ再加速

今回の結果だけを見て、景気減速やインフレの再加速などを断言できるということはないでしょう。それらを判断するのにはより多くの証拠を持って結論づけるべきであり、安易に判断すべきではないと思います。しかしながら、最近の経済指標を見てみるとやや以前よりは厳しいものが多くなってきたのかなという印象があります。経済が減速傾向を示すのにも関わらず、インフレが減速しないという最悪の状況がやや近づいてきたのかなという感じがします。もちろんそれが第一選択ということはありませんが、以前ほどには楽観的になれるものではないという感じがします。

まとめ

今日は第一四半期のGDPについて見てきました。米国経済はややその勢いに陰りが見え始め、先行きに懸念が出てきたと言っていいのかなともいます。もちろんまだまだ確定的なことは言えませんが、これまでよりも不確定な状況になってきていることは確実でしょう。そういう意味でも今後の経済指標がどのようになるのかが注目されるところです。