3月の消費者物価は落ち着いてきているがインフレはまだしぶとく居座り続ける

米国のインフレは確実に落ち着いてきているようです。昨日発表された3月の消費者物価は鈍化の傾向を示し、物価はようやく落ち着きを見せ始めています。しかし、サービス業では根強いインフレが続いているなどまだまだ楽観できるような状態ではなく、FRBの引き締めが緩むというほどのものではないようです。

3月の消費者物価は鈍化するも依然として強い

昨日発表された3月の消費者物価は大きく鈍化する結果となりましたが、今後の金融政策を大きく変更するほどのものではなかったようです。

3月の米消費者物価指数(CPI)統計では、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数が鈍化の兆候を示唆したものの、米金融当局に来月の追加利上げを思いとどまらせるほどではなさそうだ。

  前年同月比ベースでコアCPIの伸びが総合指数の伸びを上回るのは、この2年余りで初めて。総合指数の前年比上昇率は2月(6.0%上昇)からは急減速したが、ロシアのウクライナ侵攻直後でエネルギー価格が急騰していた昨年3月と比較していることが要因だ。

  今回の統計は先行きのディスインフレの兆候も示したが、特にサービスセクターでの根強いインフレを浮き彫りにした。金融政策当局者らは最近の銀行混乱による景気への影響を注意深く見守っているが、CPIが堅調な伸びを示し、労働市場も依然力強い中、少なくともあと1回は利上げを実施する可能性が高い。

  LHマイヤー/マネタリー・ポリシー・アナリティクスのエコノミスト、デレク・タン氏は「5月は利上げの方向になお傾くはずだ」と指摘。「6月に再度の利上げが必要かどうかという点では、モメンタムが変わってくる」と述べた。

  総合CPIの約3分の1を占める住居費は前月比0.6%上昇。昨年11月以来の小幅な伸びにとどまったが、前月比上昇率への寄与度はなお最大だった。ホテル宿泊費は昨年10月以来の大幅な伸び。住居費用は算出方法の関係からリアルタイムのデータよりも大幅に遅行する。

  食料品の価格は2020年以来の低下。鶏卵の価格が前月比ベースで1987年以来の大幅な下げとなった。ただ、外食のコストは引き続き堅調に伸びた。

  コアの財価格は0.2%上昇と、昨年8月以来の高い伸び。昨年終盤には明確なデフレが示され、全体的な物価上昇圧力の緩和につながっていた。

  3月には中古車価格が低下した一方、航空運賃や家庭用調度品、自動車保険などは上昇した。

  エネルギー価格は3.5%低下。ガソリンや天然ガス、電気代の下げを反映。しかし、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要産油国で構成する「OPECプラス」が今月に減産を発表したことから、こうした低下傾向は短命に終わる可能性がある。ガソリン価格は足元では昨年11月以来の高水準となっている。

  ジョナサン・チャーチ氏らブルームバーグ・エコノミクスのエコノミストは「今夏にわたって住居費からの強いディスインフレ圧力が想定される。ただし、労働市場の堅調継続やOPECプラスの減産などを踏まえれば、連邦公開市場委員会(FOMC)は来月に0.25ポイントの追加利上げを決定する見込みだ」と述べた。

  ブルームバーグの計算に基づけば、エネルギーと住宅を除いたサービス価格は0.4%上昇。前年同月比では5.8%上昇で、7カ月ぶりの低い伸び。

  パウエル議長をはじめ金融政策当局者は、インフレ動向を見極める上でこうした指標が重要だと強調してきた。ただ当局の計算は別の指標に基づく。

  この日発表された別の統計によると、3月の実質平均時給は前月比0.2%増と、今年初めて増加。前年同月比では0.7%減少した。

引用:bloombergより

このように物価の上昇圧力は確実に落ち着いてきていますが、まだまだインフレが完全にコントロールできる状態ではなく、目標とする2%へ向けての努力を必要とする状態です。食品やエネルギーなどの大きな落ち込みを背景に、物価はやや落ち着きを見せているようですが、サービス価格は依然として高く、インフレが落ち着いてきたとは言えない状態です。また、記事にもある通り、OPECは大幅な減産を発表しています。なので今後エネルギー価格は上昇する可能性が高いと言っていいでしょう。そういう意味ではインフレ圧力が今後また復活する可能性も十分に考えられます。そういう意味では今後も引き続き引き締めを継続していくだろうという感じです。

債券市場は利下げを織り込みだす

今回の結果については概ね予想通りといったところでしょうか。やはり大幅な金融政策の変更をFRBに考えさせるようなものではない結果と言えるでしょう。そういう意味では次回のFOMCでは25bpでの利上げは今のところ間違いないというところでしょう。よほどのことがない限りこれは確定かなという感じです。問題はそれ以降がどうなるかということです。現状ではそれ以降は金利を維持させて様子を見るという感じだと思いますが、状況によっては更に引き上げたり、一転して利下げという展開も十分にありえます。債券市場では利下げの予想をすでにしているようですが、果たしてどうなるでしょうかという感じです。

まとめ

今日は3月の消費者物価について見てきました。落ち着いてきたとはいえ、インフレはしぶとく居座っています。FRBもインフレ退治に注力しており、その方向性の変化というのは今の所なさそうです。そういう意味で引き続き厳しい金融政策に変更はないと言っていいでしょう。