12月は利上げペースが減速する可能性がほぼ確実

FRBの金融政策の行方に非常に注目が集まってきていますが、その中でパウエル議長が講演を行い、その発言に非常に注目が集まりました。結果的には何も新しいものはなく、従来の発言をそのまま確認したような形ですが、結果的にはそれが安心材料になったのかなという感じです。いつも思うことですがFRBは何もぶれていないのに勝手に市場が先走っているという構図はいつも変わりません。そういうわけで今日は先日行われたパウエル議長の発言についてみていきたいと思います。

12月は利上げペースが下がる

パウエル議長はブルッキングス研究所での講演で、12月の利上げペースを落とす可能性について言及しました。その上で今後も引き続き引き締めは継続する必要性について言及しました。

パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は11月30日、政策金利引き上げのペースを12月にも減速させると示唆した。一方でインフレとの闘いのため利上げを継続し、金利をなおしばらくの間、景気抑制的な水準にとどめる必要があると強調した。

  今回の発言を受けて、12月13、14両日に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)会合で50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げが決まるとの観測が強まる可能性が高い。FOMCは過去4会合連続で、政策金利を75bp引き上げている。

  パウエル氏はブルッキングズ研究所での講演テキストで、「利上げペースを落とす時期は早ければ12月の会合になる可能性がある」と発言。「政策引き締めにおけるわれわれの進展を踏まえれば、インフレ抑制に向けあとどの程度金利を引き上げる必要があるのか、また政策を景気抑制的な水準でいつまで維持する必要があるかという問題に比べ、こうしたペースを落とすタイミングは重要性がかなり低い」と述べた。

  パウエル氏のコメントを受け、金融政策見通しに敏感な米2年債利回りは低下し、この日の上昇分を打ち消した。S&P500種株価指数は上昇に転じた一方、ドルは主要通貨に対して下落した。

  1980年代以来となる積極的な金融引き締めにより、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは3月時点のゼロ近辺から3.75-4%となった。パウエル氏は利上げの終着点について、来年4.6%としていたFOMC参加者の9月時点の予測中央値を「若干上回る」公算が大きいと語った。12月のFOMC会合では最新の予測が示される。

  金利先物市場は政策金利が5%前後に到達した後、来年4-6月(第2四半期)中に利上げを停止するとの見通しを織り込んでいる。トレーダーはその後の利下げを予想しているが、パウエル氏は近いうちの利下げを当局は望んでいないと話した。

  また、エコノミストは向こう1年以内のリセッション(景気後退)入りの確率を5割超とみているが、パウエル氏は米経済のソフトランディング(軟着陸)への道筋が狭まっていると認めながらもなお「かなり有望」であり「達成可能」だとし、現時点での利上げのペースダウンはインフレと成長鈍化が米経済に及ぼす「リスクのバランスを取る良い方法だと思う」と述べた。

  インフレについては、近いうちの鈍化を示す強力な証拠は十分でないとし、「インフレが実際に鈍化していると安心するためにはさらに多くの証拠が必要になるだろう。実際のところ、インフレの先行きは引き続き極めて不透明だ」と説明。これまでの金融引き締めと成長鈍化にもかかわらず、「インフレ減速で明確な前進は目にしていない」とも語った。

  このほか、パウエル氏はサービスコストを巡り、労働市場の供給不足に言及。新型コロナウイルス禍前のトレンドとの比較で労働参加が不足していることについて、主としてコロナ禍で退職者が増えたことが原因だとの見解を示し、「労働力不足の350万人のうち、こうした過剰な退職が200万人超を占めている可能性がある」と話した。

  その上で、賃金は2%のインフレ率に長期的に合致する水準を「大幅に上回っている」とし、労働市場は「リバランシング」の「不確かな兆候」しか示していないと説明した。

引用:Bloombergより

パウエル議長はこのように述べ、今後も引き続き引き締めを継続する必要性を強調しながらも12月についてはやや減速させる可能性について言及しました。これは最近の消費者物価の減速や労働市場の悪化などの経済指標を受けてのことだと思われます。これまでインフレを抑制するために急激に引き締めを行ってきました。なかなかその効果が表れてきませんできたが、ここへ来てようやくその兆しが見えてきた可能性があります。そういう意味ではそのペースを少し緩める時期が来たということでしょう。しかし、それでも依然としてインフレは高いまま居座っており、まだまだ引き締めを緩めることはできないということも述べ、過度な楽観論に対しては注意をしたところです。

大きなサプライズはなし

今回の発言については特別大きなサプライズはないのかなという印象です。これまでも消費者物価の鈍化や労働市場の悪化を受けて、FRB関係者をはじめとして金融政策の変更の可能性については言及されてきました。そういう意味ではパウエル議長の発言もそれと同じようなものだと思います。そういう意味では特別驚きはないといった感じです。引き締めについてはそろそろ天井は見えてきたといっていいのだろうと思いますが、すぐに緩めるということはないということでしょう。パウエル議長もそれについて明確な発言はしていませんし、依然としてインフレに対する脅威を強調しています。そういう意味でもしばらくはこの厳しい引き締めというのは続いていくことでしょう。

まとめ

今日は先日行われたパウエル議長の発言についてみてきました。内容としては予想通りという感じであり、特別大きなものはなかったのかなという印象です。ただ、それだけにこのインフレとの戦いは長いものになるなと改めて感じさせるものでもあったと思います。来年の成長率は非常に低いものになりそうですし、インフレも当分居座り続けることでしょう。そういう意味では我々投資家も長く厳しい時期を過ごさなければならなくなりそうです。