労働市場の減速がさらに確信されるようになった

減速が懸念される米国の労働市場ですが、その可能性はかなり高くなった可能性があります。先日発表された新規失業保険申請件数は市場予想よりも減少しましたが、感謝祭等特殊要因の可能性もあり、また、継続して失業保険を受給している人の数は増加していることがわかりました。そういう意味では労働市場の悪化は進んでいるものとみた方がいいでしょう。そういうわけで今日は米国の労働市場についてみていきます。

労働市場は悪化してきている可能性

11月26に終了週の新規失業保険申請件数は市場予想よりも低下しましたが、継続して失業保険を申請している人の数は増加しており、新しい職を見つけることが困難になってきている可能性が示唆されました。

米国では失業保険の新規申請件数が減少したが、継続受給者数は2月以来の高水準に増加した。労働市場が徐々に冷え込みつつある中、失業者が新たな仕事を見つけるのが以前より困難になっている状況を示唆する。

  エコノミストらは過去数週間、失業者の職場復帰がどの程度難しいかを示す指標として継続受給者数をより注視してきた。継続受給者数はリセッション(景気後退)の兆候を示唆する統計としても知られており、過去2カ月は増加傾向にあるものの、歴史的に見ればなお低水準にある。

  米金融当局が今年行っている積極的な利上げは、まだ労働市場には顕著な影響を及ぼすには至っていない。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)は11月30日の講演で労働市場の供給不足に言及した。レイオフの波はハイテク企業や金融機関で起きているものの、まだ限られた業界にとどまっている。

  季節調整前の失業保険申請件数は約5万件減少し、19万8557件となった。州別ではカリフォルニア、テキサス、イリノイ、ジョージアでの減少が目立った。

  先週は感謝祭が含まれ、祝日前後は数値が大きく変動する傾向がある。より変動の少ない失業保険申請の4週移動平均は22万8750件に増加した。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、イライザ・ウィンガー氏は今回の統計について、「新規失業保険の減少は労働市場の活力を示すというよりも、感謝祭などの祝日前後によくある不安定なデータの産物だ」と指摘した。

引用:Bloombergより

このように米国の労働市場は力強さを失いかけているように見えます。新規での失業保険申請件数は予想よりも低下しましたが、この週には感謝祭による祝日があったため、減少したのではないかとみられています。このような祝日があったりと、通常とは違う環境では経済指標の値というのは若干ブレることがよくあります。そういう意味では今回の失業保険の申請件数が低下したというのはあまり鵜呑みにしない方がいいでしょう。それよりも継続での失業保険申請件数が増加していることの方が注目されます。これは新しい仕事を見つけることが困難になってきている可能性を示しているからです。求人が豊富にあるのであれば仕事を失ったとしてもすぐに新しい仕事を見つけることも容易にできるでしょう。ですが現状では景気の悪化もあり企業が、新たな労働者を雇うことを躊躇している可能性があり、そのため仕事を見つけることが困難になっている可能性が見て取れます。そういう意味では堅調だった労働市場もついに減速してきたとみていいのかもしれません。

ようやく労働市場は減速しだした

今回の労働環境の悪化を示唆する指標はFRBが金融政策を変更する後押しになるかもしれません。パウエル議長も先日、金融政策の変更の可能性について言及しました。なので今後はこれまでのような急激な引き締めというのは変わってくる可能性があります。そこで労働市場の減速も加わるのであれば、その確信というのもさらに高まることでしょう。そして金曜日には雇用統計の発表も控えています。もしこの雇用統計の結果もあまりよいものでないのであれば金融政策の変更というのもほぼ確実と見ていいのかなと思います。そういう意味でも雇用統計の結果など労働市場の変化に非常に注目が集まるところでしょう。

まとめ

今日は米国の労働市場についてみてきました。労働市場はこれまでよくもってきましたが、さすがにもう限界ということでしょう。確実に減速の兆候が見られています。しかし、インフレ抑制を目指すFRBとしては適度な減速はむしろ望むところなのでようやく引き締めの結果が出てきたと胸をなでおろしているかもしれません。いずれにせよ、これまでのようにインフレが進み、FRBが引き締めを続けるという構図はそろそろ変化しそうな感じです。もちろんすぐにインフレが落ち着くとは思えませんし、しばらく強力な引き締めは続いていくことでしょう。しかし、今後はこれまでのような単純に利上げが続いていくという状況ではなくなるのかもしれません。