11月の雇用統計は予想外に強いものとなり、市場の楽観論を完全に消し去ることとなった。

米国の労働市場は相変わらずタイトであることが判明しました。先日発表された11月の雇用統計では市場予想を大きく上回る結果となり、依然として米国の労働市場は堅調であることが確認されました。このことはインフレが全く鈍化しておらず、最近の兆候というのは一時的である可能性が高くなったということです。これまでやや楽観的な空気が漂っていたマーケットですが、この発表を受けて大きくその期待をそがれることとなりました。今後の見通しについてはかなり悪化したといっていいのかなという感じです。というわけで今日は11月の雇用統計についてみていきたいと思います。

11月の雇用統計は予想以上に良好な結果

2日に労働省から発表された11月の雇用統計は市場予想を大きく上回る結果となり、依然として労働市場は力強さを残していることが判明しました。

11月の米雇用統計で、非農業部門雇用者数は市場予想を上回る増加となり、賃金は前月に比べて伸びが加速した。インフレ圧力の根強さが示された格好で、米金融当局が政策金利を一段と引き上げる可能性が高まった。

  平均時給は前月比0.6%増と、市場予想の2倍の伸び。今年1月以来の大きな増加率だった。10月分も0.5%増(速報値0.4%増)に上方修正された。11月は前年同月比では5.1%増加。市場予想は4.6%増、10月は4.9%増(速報値4.7%増)に同じく上方修正された。

  生産部門・非管理職の賃金は前月比0.7%増と、約1年ぶりの高い伸びとなった。

  みずほのエコノミスト、アレックス・ペレ氏らは「今回の統計の要点は、労働市場が依然として極めてタイトで、非常にゆっくりとしたペースで緩和しているに過ぎないということだ」とリポートで指摘。「景気は底堅く、一段の利上げや景気抑制策の長期化に対応可能であることを示唆している」と記した。  

  11月の雇用者数は娯楽・ホスピタリティーやヘルスケア、政府部門などで特に増加した。一方、小売りや運輸・倉庫などでは雇用が減少した。

  予想を上回る雇用者数の伸びは、金利が上昇しリセッション(景気後退)懸念が高まっている中でも雇用市場の強さが続いていることを示す。労働需給のミスマッチがなかなか解消されない状況は、賃金上昇を引き続き下支えしている。

  ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のエコノミスト、アナ・ウォン、イライザ・ウィンガー両氏は「平均時給の伸び加速は、労働者不足が依然としてインフレ圧力を強めていることを示す」と分析。「労働市場の調整が緩慢であることを踏まえると、米金融当局は9月のドット・プロット(金利予測分布図)で示したターミナルレートの予測を引き上げざるを得ない公算が大きい」と指摘した。

  労働参加率は62.1%に若干低下し、4カ月ぶりの低水準。25歳から54歳までの労働参加率は3カ月連続で低下した。女性の参加率低下が目立った。

  週平均労働時間は6月以降で初めて減少した。

  今回の雇用統計は12月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合前に入手できるものとしては、最後のデータ。

引用:Bloombergより

このように11月の雇用統計も依然として堅調であり、高いインフレの中でも全く弱くなる気配がありません。平均時給も伸びており、全くと言っていいほど労働市場は鈍化していないという印象です。これだけ企業業績が悪化してきており、労働者の解雇のニュースが相次いでいる中でこの結果というのは正直予想外という印象があります。

市場に漂う楽観論を吹き飛ばした

そのため市場では楽観論の修正が相次いでおり、債券市場では金利が急激に上昇しました。

11月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数、賃金ともに伸びが市場予想を上回った。この発表後、市場が見込む来年のピーク金利は大きく跳ね上がり、米国債利回りも上昇した。

  米国債は売られ、2年債利回りは一時18ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い4.41%に達した。10年債利回りは13bp上昇して3.63%。連邦公開市場委員会(FOMC)の政策発表日とリンクしたオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)が示唆するピーク金利は、雇用統計発表前と比べて10bp余り高い4.98%に上昇した。

  パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が利上げペース減速を示唆して以降の2日間で大きく上げていた米国債市場にとって、雇用統計の内容は予想外だった。2年債利回りは11月30日、パウエル議長の発言前に4.54%を付けていたが、その後に急低下。2日の雇用統計発表前の時点で4.20%を下回り、10月初め以来の水準にあった。

  アメリベット・セキュリティーズの米金利トレーディング・戦略責任者、グレゴリー・ファラネロ氏は「市場の値動きは誤っていた」と指摘。「米金融当局は今月、政策金利を0.5ポイント引き上げ、2年債利回りは恐らく4.75%近辺になるだろう」と予想した。パウエル議長の発言に対する反応は「利上げ減速の期待が行き過ぎた」との見方を示した。

引用:Bloombergより

このように市場では今回の雇用統計の結果は全くと言っていいほど予想していなかったということでしょう。そのため発表後は大きくマーケットは動きました。特に債券市場では金利が急上昇し、今後の金利の先行きについて大きな上方修正をしたという感じです。

インフレ退治は非常に困難な仕事

今回の発表は本当に予想外でした。最近の経済指標を見る限り、もうインフレもピークを付け、落ち着きだしたのかなという印象ですが、それは全くの間違いだったといわざるを得ません。これだけ労働市場が強固であればインフレが落ち着いてくるということはまずないでしょう。そういう意味ではFRBとしては今後も強力な引き締めを続けていかざるを得ないということです。今後はややその引き締めの加減は緩やかになるのではないかという期待も大きくなっていただけに、その影響というのは大きなものになったということでしょう。今回の発表を受けて金利のピークの予想は大きく跳ね上がり、今後もしばらく厳しい引き締めが続くことが予想されます。そういう意味でも少し見えてきた明るい未来というのはかなり遠ざかったといった印象です。

まとめ

今日は11月の雇用統計についてみてきました。今回の発表は本当に予想外なものでした。多くのマーケット関係者もそうだったようで、予想の修正が相次いでいます。大変残念な結果ではありますが、明るい未来というのはかなり先の話になったのかなという感じです。今回のインフレはそれだけ強力なものだということでしょう。苦しい状況が続いていくことが予想されますが、頑張っていくしかありません。