引き締め継続が基本路線

弱い消費者物価の発表もあり、金利の引き上げは一時的な緩和措置が実施されるとの観測が出てきていますが、そうかんたんには行かない可能性も十分考慮しておく必要があります。実際、FRB内部からは依然として引き締めをすべきとの声も多くあり、今後の金融政策がどのようになるかは未知数です。一部の経済指標を持ってこうなるはずだとの決めつけは危険であるということです。

引き締め継続の必要性

先日発表された消費者物価の数値は予想外に鈍いものでしたが、FRBではそれでも引き締めの必要性をとなえる声は小さくありません。

米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は11日、物価上昇圧力は依然として強過ぎるとの見解を示した。銀行セクターの緊張が米経済に及ぼす影響の見極めに当局者が努める中で、こうした発言を行った。

 カシュカリ氏はミシガン州マーケットで行われたイベントで、「インフレは低下してきているが、当局の2%目標をなお大きく上回っている」と指摘。「全米レベルでは賃金の伸びが幾分軟化してきたが、強弱入り交じっているといった感が強い」と述べた。

  同総裁は今年の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で議決権を有する。

  カシュカリ氏は先月、シリコンバレー銀行(SVB)が3月に破綻した後、金融市場が落ち着きを取り戻しつつあるという「希望の兆し」はあると述べていた。ただ、これはファースト・リパブリック・バンクが管理下に置かれてJPモルガン・チェースに買収される前の発言だった。この買収後、地銀株は再び大幅に下落するなど不安定な値動きが続いている。

引用:bloombergより

このようにカシュカリ総裁は現在の物価は依然として強く、今後も引き締めが必要だという見解を示しました。物価は落ち着いてきたとはいえ依然として5%を超える水準であり、目標とする2%へはまだまだ遠いというのが現状です。そういう意味ではある意味当然の見解と言えるでしょう。

相次ぐ引き締め継続論

カシュカリ総裁のような発言は他にもあります。つまりは引き締めを望む声というのは小さくないということです。

米連邦準備制度理事会(FRB)のボウマン理事は米物価圧力が弱まらず、労働市場に鈍化の兆候が見られない場合は金融当局として追加利上げを行い、しばらくの間高水準に据え置くことが必要になる可能性が高いとの見解を示した。

  ボウマン氏はフランクフルトの欧州中央銀行(ECB)本部で12日に開かれるシンポジウムでの講演テキストで、「インフレが高止まりし、労働市場の需給が引き続きタイトな場合、十分景気抑制的な金融政策のスタンスを取るため、追加の金融引き締めが適切になる可能性が高いだろう」と述べた。

  さらに、「インフレを鈍化させ、持続的に力強い労働市場を下支えする状況を生み出すために、政策金利をしばらくの間、十分景気抑制的な水準に維持する必要があると予想する」と指摘した。

  その上で、経済の見通しが不透明で政策措置は事前に設定されたコースにはないため、6月13、14両日の次回連邦公開市場委員会(FOMC)会合前に公表されるデータを検討してから政策スタンスに関する立場を決めるつもりだと語った。

  また、「今後の利上げや、どの時点で十分景気抑制的な政策金利スタンスを達成したことになるかを検討する際に、インフレが減速傾向にあることを示す一貫性のある証拠」の兆候を探ると説明した。

  「失業率が低下し、賃金の伸びが続く中、インフレは引き続き非常に高過ぎる水準にあり、コアインフレの指標も高止まりし続けている」とし、直近の消費者物価指数と雇用統計では「インフレの減速傾向を裏付ける一貫性のある証拠は得られなかった」とも話した。

  現在の政策スタンスについては「景気抑制的だが、インフレを減速させるのに十分な程度かどうかは依然はっきりしない」とコメントした。

  FRBは4月28日、経営破綻したシリコンバレー銀行(SVB)の監督を検証する報告書を公表。同行破綻により監督の不備が露呈したと規制当局は指摘し、バーFRB副議長(銀行監督担当)は米金融機関に対する要件の抜本的な見直しを求めた。

  ボウマン氏はこの問題について、第三者機関によるさらなる検証が必要だと指摘した。

引用:bloombergより

このようにボウマン理事も引き続き引き締めの重要性について述べています。FRB内部ではおそらくですがこの様なタカ派的な意見の人は少なくないのではないかという印象があります。これまでいくつもの金融政策に対する発言を見てきましたが、最近は引き締めを継続すべきという旨の発言が多いような気がします。落ち着いてきたとはいえまだまだ物価水準は歴史的に見て高水準です。そしてこの物価高は粘着性が高く、そうかんたんには下落していかないだろうという見解をパウエル議長を始め、FRBはしています。そういう意味ではよほどのことがないかぎり引き締めの手を緩めることはないのだろうという感じがします。

基本的なスタンスは引き締め継続で間違いないだろう

次回のFOMCまではまだ時間があるので結局のところどのようになるのかはわからないというのが正解でしょう。タカ派の人もハト派の人も結局は経済指標次第という点では一致しています。なので今後の指標次第ではどうとでもなるというところです。ただ、現状で考えれば引き続き引き締め継続という可能性が依然として強く、よほどインフレが落ち着き、金融不安が急激に悪化しない限り緩和方向へは行かないのかなという印象です。そういう意味では経済的にはやや悪い傾向なのかなと思いますし、株価もあまり冴えない展開が続いていくのだろうという感じがしています。

まとめ

今日は最近のFRB関係者の発言について見てきました。基本的には引き締め継続という方向でまず間違いないのだろうと思っています。ただ、経済指標次第で柔軟には対応してくるでしょう。その様な柔軟性は持たせるような発言もしているので今後次第でどうとでもなりそうです。ただ、どうなっても株価はしばらく力強い上昇は見せないでしょう。しばらくは我慢の展開が続きそうです。