米国の個人消費は依然堅調。これはいつまで続くのか。

インフレとの戦いはまだまだ続いていきそうです。30日に発表された米国の個人消費支出は市場予想を上回るものとなりました。これだけインフレが続いてもまだ米国の個人消費は堅調に推移しています。消費が堅調であるということはいいようにも思えますが、物価の安定を目指すFRBにとっては非常に頭の痛い問題かもしれません。というわけで今日は米国の個人消費支出についてみていきます。

米港の個人消費支出はいまだに堅調

30日に発表された米国の個人消費支出は市場予想を上回る結果となりました。

8月の米個人消費支出(PCE)統計によれば、インフレ指標が市場予想を上回る伸びとなった。一方で消費支出も増加が示され、広範にわたる物価上昇の中でも、家計の堅調な支出が続いていることが浮き彫りとなった。

インフレ調整後の実質PCEは0.1%増。前月は0.1%減(速報値は0.2%増)に下方修正された。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、アンドルー・ハスビー、イライザ・ウィンガー両氏は「容認できないほど高いインフレ指標を踏まえると、米金融当局は連続利上げを確実に進める可能性が高い。それにより経済を減速させることになってもだ」と指摘。「7月の実質PCEが下方修正されたことから、7-9月(第3四半期)の国内総生産(GDP)の伸びに対する下方向のリスクが高まっている」と分析した。

  インフレ調整前の個人所得は前月に続き0.3%増。賃金・給与の伸びは0.3%増に減速し、今年1月以来の低い伸びとなった。賃金上昇ペースの鈍化を目指す金融当局にとっては明るい兆候だ。

  実質PCEを見ると、財への支出は2カ月連続でのマイナスとなった一方、サービス支出は0.2%増えた。モノからサービスへと消費パターンが変化している現状が浮き彫りとなった。インフレ調整前のPCEは前月比0.4%増だった(前月0.2%減)。

  貯蓄率は3.5%と、非常に低い水準にとどまった。

引用:Bloombergより

このように米国の個人消費支出は非常に堅調な推移を見せています。これだけ高いインフレが続いているにもかかわらず、消費が鈍化しないというのは本当にすごいなという印象です。それだけ給与や所得が増えているということなのでしょう。もちろん実質的にはマイナスというところなんでしょうけれど、見た目の所得や資産が増えているのであれば心理的にはやや消費に寛容になるのも理解できるところです。

いつまでもこの状態は続かない

ただ、当然ながらこのような状態はいつまでも続くことはないでしょう。企業も利益が上がらないのであれば賃金を支払うことはできません。なのでしっかりと利益を上げ続けることが求められますが、企業業績の先行きはそれほど明るいということもないと思います。実際、業績見通しの下方修正も相次いでいますし、今後の経済状態は全く不透明といっていいでしょう。そうなれば労働者が受け取る賃金もこれまでのような上昇は見込めず、消費にも影響が出るでしょう。すでに米国の消費者の貯蓄率は非常に危険なレベルにまで低下しています。もうすでにギリギリのところまで来ているのです。ローン残高も上昇しているというニュースもありますし、今後はこれまでのような堅調な消費というのにも期待できないような気がします。このように米国の経済は堅調な消費と労働市場によって保っていますが、それはかなり脆弱なものの上に成り立っているような感じがします。

FRBはインフレ優先で経済は二の次

そうなると今度は金融緩和などの経済を後押しするような政策も期待されますが、なかなかそれは難しいようです。FRBのブレイナード副議長は早期に金利を引き下げることには慎重な姿勢を見せています。

米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード副議長は、借り入れコスト上昇が世界的な金融安定に与えるリスクを警戒する必要性を認めながらも、インフレを抑制するため米政策金利をしばらく高く維持する必要があると述べた。

  副議長は30日、ニューヨークで講演。事前のテキストによれば「金融環境引き締めの完全な効果が様々なセクターを通じて波及し、インフレを押し下げるまでには時間がかかる」と述べた。「しばらくの間は景気抑制的な金融政策を維持し、インフレが目標に戻りつつあるという確信を得る必要がある。従って、われわれは時期尚早な政策巻き戻しを避けることにコミットしている」と続けた。

引用:Bloombergより

このようにブレイナード副議長は述べ、早期に今の引き締め政策を変更するのに消極的な発言をしています。現在のFRBはインフレを抑制することに第一の目標を置いています。ある程度の経済へのダメージは仕方がないとみているのは間違いないでしょう。そのため今後、消費や労働市場が減速してきたとしてもそれを回避する行動に出る可能性が非常に低いといわざるを得ません。そのため米国は予想以上に急激な景気減速を引き起こし、大きなリセッションへと突入する危険性をマーケットは警戒しています。実際ここのところ、米国の株式市場は非常に軟調な展開が続いています。これは今後の米国の株式市場に悲観的な見通しが広がっており、FRBの後押しも期待できないという気持ちの表れだと思います。一部では行き過ぎた引き締めにより景気を冷やしすぎるのではないかという懸念も出てきていますが、まさにそれが株価にも表れているといっていいでしょう。そういう意味では何とかFRBにはこのような事態を回避してほしいと思いますが、そのような発言は今のところ聞かれません。とにかくインフレ抑制が第一という感じです。そういう意味ではなかなか今後の見通しというのは厳しいなという印象です。

まとめ

今日は米国の個人消費から今後の米国経済について考えてみました。多くの識者が懸念しているFRBが引き締めすぎるのではないかという危険性は日に日に増しているような気がします。おそらくはかなりこの状態は継続され、インフレが落ち着いたときにはかなりの経済的なダメージを負うことになりそうです。そうならないことを切に願うばかりですが、なかなか厳しいような気がします。FRBは以前も行動がおそく、インフレをここまで増大させてしまったという前科があります。そういう意味では何とか同じ過ちは繰り返さないでほしいところですが、どうなのかなという感じです。