米国の第3四半期のGDPは予想に反して堅調

深刻なインフレに悩まされている米国経済ですが、相変わらず力強さは健在です。第3四半期のGDPは市場予想に反して力強いものとなり、米国経済はまだまだ堅調だといえるでしょう。ただ、今後については不透明な部分も多く、安心はできません。そういうわけで今日は第3四半期のGDPについてみていきたいと思います。

第3四半期のGDPは予想外に好調

米国の第3四半期のGDPは市場予想を上回る結果となりました。個人消費が弱くなっているとはいえまだ力を失ってはおらず、成長をけん引している形となっています。

米経済は7-9月(第3四半期)、個人消費と設備投資が堅調さを示したことなどを受け、3四半期ぶりにプラス成長となった。ただ、インフレと金利上昇を背景に、向こう数カ月の経済成長は不安定となる可能性がある。

  7-9月は米経済の最大部分を占める個人消費が1.4%増え、市場予想(1%増)を上回った。ただ4-6月(2%増)に比べると伸びは鈍化した。サービス支出は2.8%増。一方、財への支出は1.2%減少し、3四半期連続のマイナスとなった。 

  設備投資は3.7%増加。機器と知的財産がけん引する形で力強く拡大した。

  GDPから純輸出と在庫を除いた実質国内最終需要は前期比年率0.5%増。基調的な需要の強さを測る同指標は、新型コロナ禍が始まって以降で最も低い伸びの一つとなった。 

  個人消費はサービス分野への支出が全体を押し上げた格好。政府支出も増加した。GDPへの寄与度が最大だったのは純輸出(プラス2.77ポイント)で、住宅投資はマイナス寄与の度合いが大きかった。在庫もマイナス寄与となった。

  家計がいつまで持ちこたえられるかは不透明だ。インフレ抑制に向けた金融当局の取り組みは、消費拡大には向かい風となる。住宅ローン金利は約20年ぶりの高水準まで上昇し、住宅市場は急激に悪化の様相を示している。多くのエコノミストは、金融当局の行動により米経済は今後1年でリセッション(景気後退)に陥ると予想している。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、アンドルー・ハスビー、イライザ・ウィンガー両氏は「米金融当局は7-9月に弱まった要素について、金融引き締め策の意図した結果だと見なす公算が大きい。引き締めサイクルを今すぐに後退させる理由とはみないだろう」と分析した。

  米金融当局が注目するインフレ指標である個人消費支出(PCE)価格指数は、7-9月に年率4.2%上昇。2020年10-12月(第4四半期)以来の低い伸びにとどまった。食品とエネルギーを除くコアのPCE価格指数は4.5%上昇した。

  住宅投資は年率26.4%減少と、コロナ禍後で最大の落ち込み。住宅ローン金利の急上昇が住宅需要を損なっている状況を浮き彫りにした。 

引用:Bloombergより

このように米国経済は異常なインフレ下においてもまだまだ力強さを残しています。弱くなってきているとはいえ、GDPの大きな要素を占める個人消費が堅調であったことが大きな要因の一つです。先行きについては不透明な部分も多く、まだ油断することはできませんが、FRBや政府にとっては朗報といっていいのではないかと思います。

イエレン米財務長官も現状に満足している模様

この結果を受けてイエレン財務長官は現在のインフレ対策がうまくいっており、米国を減速させることなくコントロールできる旨の発言をしました。

イエレン米財務長官は27日、第3・四半期の国内総生産(GDP)統計で米経済の強さが示されたとの認識を示した。同時に、インフレに望ましい影響を及ぼす可能性のある健全な景気減速の証拠もいくつか示されたと述べた。

イエレン氏は中間選挙に先立ち訪れたオハイオ州のクリーブランドで記者団に対し、景気後退(リセッション)は予想していないとし、経済が軟調になれば政府には必要に応じて対応する財政力があると述べた。

商務省が朝方発表した2022年第3・四半期の実質GDP速報値は年率換算で前期より2.6%増えた。ロイターがまとめたエコノミスト予想は2.4%増だった。

イエレン氏は「これまでに何度も述べたように、強い労働市場を維持しながらインフレ率を低下させる道筋が見えている。今回のデータはわれわれが期待するものと一致していると思う」と指摘。経済の一段減速を見越しており、政府は必要に応じ対応する財政的余裕を持つとしながらも、財政政策がインフレを悪化させないように注意すべきとの認識も示した。

引用:ロイターより

このようにイエレン氏は述べ、現状米国はうまくコントロールできているとの認識を示しました。これだけ引き締めているのにもかかわらず、成長を続けているのですからそう感じるのも当然でしょう。100点満点とはいかなくとも今のところ十分合格点は与えられるのかなといった印象です。

今後についてはいまだ不透明

問題は今後の展開です。今のところはうまくいっているようには見えますが、多くの識者は今後の米国経済については悲観的です。来年度の成長率は非常に低く、日本よりも劣るという予想が出ているほどです。そういう意味では本当にソフトランディングができるのかはまだ未知数だといっていいでしょう。サマーズ元財務長官など悲観的な論者からは今も明るい見通しが持てないという暗い予想しか出てきていません。そしてそのような指揮者の方が今はたくさんいることも事実です。そういう意味では今回のGDPをもって安心できるということにはならないのかなという印象です。

まとめ

今日は第3四半期のGDPについてみてきました。相変わらず米国経済は強いです。本当に感心してしまいます。これだけのインフレや引き締め化においても消費が伸びており、成長を続けられるというのはある意味異常だなという印象です。日本とはまるで違います。このくらい消費にどん欲な国民性だったのなら日本もとっくにデフレから回復して成長をしていたのかなとも思ってしまいます。しかし、この力強い個人消費もいつまでも持続することはありません。不動産市場や企業業績など景気後退の足音は着実に近づいています。本当にソフトランディングができるのか、はっきり言って可能性はいまだに低いといわざるを得ません。そういう意味ではまだ楽観視はするべきではないと思います。