米国は相変わらず堅調。よって引き締めが継続されるだろう。

米国のインフレはまだまだ収まりそうもありません。先日発表された経済指標はいずれも力強いものであり、インフレが落ち着いている様子は見られませんでした。このことにより、今後もFRBは強い引き締め政策に出てくる可能性が高くなったといえるでしょう。最近はまた根拠が不明確な楽観論により金融緩和が緩むのではないかという憶測も出てきています。毎度のことながら懐疑的に見ていましたが、おそらくは今度もその観測は外れそうだなという印象です。そういうわけで今日は力強さを示した経済指標についてみていきます。

9月のPCEは依然堅調

先日発表された9月の個人消費支出はまだまだ力強さを残しており、改めて米国の個人消費がインフレ下においても旺盛であることが確認できました。

9月の米個人消費支出(PCE)コア価格指数は前年同月比で伸びが加速し、個人消費支出は引き続き堅調に増加した。物価上昇圧力の広がりと需要の底堅さが示されたことで、米連邦公開市場委員会(FOMC)が11月の会合で再び大幅利上げを行うとの見方が強まった。

  インフレ調整後の実質個人消費支出は前月比0.3%増と、市場予想(0.2%増)を上回った。8月は0.3%増(速報値0.1%増)に上方修正された。インフレ調整前のPCEも同0.6%増と市場予想(0.4%増)を上回り、前月分は0.6%増(速報値0.4%増)に上方修正された。

  今月発表された9月の消費者物価指数(CPI)と同様に、PCEも米国のインフレの強さと広がりを浮き彫りにした格好。米金融当局はインフレ率を目標の2%に引き下げるため、11月の会合でも0.75ポイントの利上げを行う可能性が高いとみられている。これらの統計はこういう市場の見方を補強した。

  PCE統計では貯蓄率が低下し、2008年以来の低水準を若干上回る3.1%となった。

  インフレ調整後の財への支出は前月比0.4%増。処方薬や新車などへの支出増を反映している。前月はほぼ横ばいだった。一方、サービス支出は0.3%増で、前月の0.5%増から伸びが鈍化した。

  個人所得は0.4%増で市場予想に一致。3カ月続けて同じ伸び率となった。賃金・給与が0.6%増と、伸びが加速した。

引用:Bloombergより

このように米国の個人消費は堅調です。インフレと金融引き締めにより経済も悪化傾向にあることは確かであり、その影響もあるとは思いますが、それでもこれだけの数値を示すということはさすがに米国の個人消費は強いなという印象です。貯蓄率は低下をしているため、いつまでもこの状態が続くということはさすがに考えられませんが、少なくともこの指標をもって金融引き締めを緩める根拠とはならないでしょう。

雇用コストも堅調に推移

労働市場についてもまだ衰えてはいません。第3四半期の雇用コストはやや落ち着いてきているとはいえ、依然堅調に推移しており雇用についてもまだ悪化するようにはみられません。

米国では7-9月(第3四半期)の雇用コストが前期に比べて勢いを弱めたものの、依然堅調な伸びを示した。根強いインフレ圧力を浮き彫りにし、米連邦公開市場委員会(FOMC)の積極利上げ軌道維持に寄与するとみられる。

  米金融当局は労働市場がいくらか軟化し、高止まりしている賃金と物価の上昇圧力が緩和されるのを確認したい意向だ。雇用創出は減速しているとはいえ、いまだに力強く、失業率は歴史的な低水準にあり、労働力の需要は供給を大きく上回っている。

  産業別では医療ケアと教育が比較的高い伸びを示した一方、財生産での賃金の伸びは弱まった。

  ブルームバーグの米国担当チーフエコノミストで、FRBのエコノミストを務めた経歴を持つアナ・ウォン氏は「インフレのデータが総じて芳しくない中で、第3四半期に雇用コスト指数の伸びが鈍化したのは希望の光だ。労働市場はこれまでほどタイトではなくなってきているが、賃金の上昇ペースは依然として米金融当局のゴールからほど遠い」と述べた。

引用:Bloombergより

このように労働市場も引き続き堅調です。これだけの引き締めを行っているのにもかかわらず雇用が強いというのもすごいというしかありません。企業収益も厳しさを増してきていることは事実であり、今後についてはやや厳しいのではないかという感じはしますが、こちらも今のところは堅調であるといっていいでしょう。

FRBは今後も引き締めを継続する

これらの指標を見る限り、米国経済はまだまだ安定しているといっていいと思います。ただ、このことを素直に喜んでいいのかどうかは何とも言えないところです。というのもインフレが一向に収まっていないということの証明にもなるため、FRBは引き続き引き締めを行う良い根拠となってしまうからです。これだけ消費が強く、雇用も安定しているのであればインフレが落ち着くというのはなかなか難しいでしょう。インフレ抑制を目指すFRBにとっては非常に頭の痛い問題です。そういう意味でも次回FOMCでも引き続き強力な利上げが行われる可能性は高くなったといっていいと思います。

まとめ

今日は米国の強い経済指標についてみてきました。本当に米国経済は堅調です。本来であれば喜ばしいニュースですが、インフレ下においては何とも複雑な心境になるものでもあります。おそらくFRBは今後も急激な引き締めを行っていくことでしょう。よって株式市場にとってはしばらく厳しい状態は続いていくということです。しかし、この状態が何十年も続くということはないと思います。いつか必ず上昇をしていくことでしょう。その時までじっと辛抱するのみです。