FRBは年内に利下げを行うか

高すぎるインフレに金融不安と米国経済を取り巻く環境は日々悪化してきています。実体経済も業績が悪化している企業も多くなっており、不透明感が増してきています。そういう意味で金融当局が利下げを行うのではないかという観測も出てきています。インフレが依然として高すぎる状況下で利下げというのはなかなか判断しづらいとは思いますが、経済状況によっては十分にありえることでしょう。

政策金利の年内引き下げ論が浮上

最近、米国経済を悲観的に見ている人の中から今後FRBが利下げを行うのではないかという観測が出てきています。

パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる金融当局が追加利上げ見通しについて語るのは「間違い」とのシグナルを市場が発しているが、投資会社ダブルライン・キャピタルのジェフリー・ガンドラック氏も同じ見方を示した。

  景気見通しに悲観的な投資家の間で、米金融当局は年内に利下げする必要があるとの見方が強まる中で、米国債やドイツ国債、オーストラリア国債など年限短めの国債利回りはここ2週間に大幅に低下した。引き締めサイクルの終了に備えるトレーダーの動きが世界に広がっている。

 パウエル議長は22日、連邦公開市場委員会(FOMC)会合後の記者会見で、年内の利下げは見込んでいないと強調。それでも、スワップ市場は米利上げサイクルがすでに終わった可能性を示唆しており、5月のFOMC会合で0.25ポイント利上げが決まる確率はわずか3分の1に低下した。

  ダブルラインの最高投資責任者(CIO)を務めるガンドラック氏は米金融当局が近く「大幅」利下げを行うと予想しているとツイート。米国債の利回り曲線が発している「リセッション(景気後退)の赤信号」について警告した。

  米2年債利回りは23日の取引で一時18ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下し3.75%となった。

  シティグループ・グローバル・マーケッツの米金利ストラテジスト、ウィリアム・オドネル氏は「銀行ストレス不安や金融環境の引き締まり、商業用不動産業界を巡る懸念、米金融当局やイングランド銀行(英中央銀行)が政策金利をあまりにも深く景気抑制的な領域に押し上げているという全般的な見方から、投資家は今のところセーフヘイブン(安全な避難先)の利回りを求めている」と述べた。

引用:bloombergより

このように今後の金融政策について、年内に利下げがあるだろうという考えが広がってきています。パウエル議長はその可能性を否定していますが、現在の金融不安等、経済状況を考えると金利を引き下げざるを得ないと考えているのでしょう。たしかに現在の金融不安は依然として収束する見通しは立っていません。クレディスイスの問題は収束しそうな感じはしますが、それで事態がすべて丸く収まるかどうかはなんとも言えないところです。特に今後も引き続き引き締めが続くのであれば、経営が苦しくなる金融機関もが出てきても不思議ではありません。そういう意味では今後事態がより悪化し、経済状況が悪化すれば金融緩和へ移行する可能性も十分にあるでしょう。

FRBは否定的

しかし、FRBは現状その可能性を否定しています。米セントルイス連銀のブラード総裁は政策金利のピークの見通しについて従来予想を引き上げました。

米セントルイス連銀のブラード総裁は経済の力強さが続いているとし、今年の政策金利のピークに関する自身の予想を引き上げたことを明らかにした。予想引き上げは銀行セクターのストレスが和らぐとの想定に基づいているという。

  総裁は24日、講演後に行った記者団との電話会見で「私は従来5.375%と見込んでいたが、現在の予想は5.625%だ。つまり25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き上げたことになる。より力強い経済を示すニュースを踏まえて判断した」と説明。「今後数週間、そして数カ月で金融ストレスが緩和するとの想定の下で」予想を上方修正したと続けた。

  「金融ストレスが悪化するという下方向のシナリオもあり得るが、それは私の基本ケースではない」とブラード氏は述べた。

引用:bloombergより

このようにブラード総裁は政策金利の見通しを引き上げました。現在の非常に強いインフレを抑えるという目的を考えればそれは当然のような気がします。しかし、それが実際可能かどうかはなんとも言えないところです。ブラード総裁も述べていますが、これはあくまで金融不安がこのまま収束することを前提としています。なので事態が悪化するのであれば予想を修正する可能性も十分にあるでしょう。そういう意味ではまだなんとも言えないというのが実情でしょう。

未来は誰にもわからない

結局の所、インフレ抑制が重要というところは誰もが一致するところだと思います。ですが金融不安が経済に与える影響も小さくないというのも同じでしょう。問題はそれがいつ収束するのかというところなのだと思います。ブラード総裁の考えるように短期間で収束するのであれば金利を引き上げるのということに多くの人は否定しないでしょう。しかし、経済状況がより悪化していくというのであればインフレ抑制よりも実体経済救済をすべきという意見も強くなるのも当然ではないかと思います。そしてそのラインがどのへんにあるのかというのがわからないところがなんとも言えないところです。今の所、FRBはその可能性を否定していますし、そのラインというのはかなり後ろにあるのだろうと思いますが、経済状況が悪化してくればその可能性を匂わせる言葉を発してくると思います。それを注意深く見ていく必要があるでしょう。

まとめ

今日は今後の金融政策について考えてきました。利上げ取り下げ、どのような展開となるかはなんとも言えないところです。どちらの展開も十分に起こり得ることだと思いますし、それを決定するのは今後の経済状況次第ということです。そういう意味では未来のことについて決定づけて論じることはかなり難しい状況なんだろうと思っています。個人的には今回の事態はリーマンショックほどにはならないとは思いますが、それなりのダメージを経済に与えるのではないかと思います。そういう意味ではFRBが政策変更するかどうかはなんとも言えない微妙なところなのかなという感じがします。