米国の不動産市場はさらに悪化を続けている

米国の景気に大きな影響を与える不動産市場ですが、一向に改善の兆しは見られません。相次いで悪い指標の発表があり、米国経済の回復というのはまだまだ先の話だなという印象を持ちます。そういうわけで今日は米国不動産市場についてみていきます。

住宅販売が大きく落ち込む

米国の住宅販売は大きく落ち込んでいますが、8月は過去最大の落ち込みを示したようです。

S&P・コアロジック/ケース・シラーがまとめた8月の全米ベースの住宅価格指数は、上昇率が過去最大の減速となった。倍増した借り入れコストが需要を抑えていることが浮き彫りになった。

  インフレ抑制に向けた利上げを受け、住宅市場は低迷し始めている。価格は伸びが鈍化しているが、依然として昨年の水準を上回っている。7%に近づいている住宅ローン金利も影響し、潜在的な買い手が遠ざかり、一部の売り手も撤退している。

  統計発表元であるS&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズのマネジングディレクター、クレイグ・ラザラ氏は「われわれが1カ月前に指摘した米住宅価格の大幅減速が続いた」と発表資料で指摘。「マクロ経済の厳しい環境が続くとの見通しを考慮すれば、住宅価格の減速は続く可能性が高い」と記した。

  不動産情報サイト、リアルター・ドット・コムで経済調査を率いるジョージ・ラティウ氏は「冬季に向かうにつれ、住宅販売はさらに減少し、価格の下方調整が続くだろう」と指摘した。

引用:Bloombergより

このように米国の住宅価格は大きく落ち込んできています。不動産というのは米国でも重要な資産の一つであり、その家賃収入や売買収入などは個人にとっても企業にとっても大きな収入になります。そして米国経済を支える大きな存在です。その住宅価格が大きく下落しているということは経済に与える影響も非常に大きいといっていいでしょう。

住宅ローン金利が大きく上昇している

その理由としてはやはり金利の上昇が大きく影響していると思われます。米国の30年物の住宅ローン金利はついに7%を超えるようになりました。

米国の住宅ローン金利が21年ぶりに7%を突破した。全米抵当貸付銀行協会(MBA)が26日発表した。

  30年物ローンの固定金利は21日終了週に22ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し7.16%。10週連続で上げ、住宅需要を一段と圧迫している。

  MBAの住宅ローン申請指数は1.7%低下。ここ11週間で10週目の下げとなり、1997年以来の低水準。

引用:Bloombergより

このように米国の住宅ローン金利は21年ぶりに7%を超え、住宅市場に対して大きな悪影響を与えています。FRBが政策金利を上昇させているために当然ではありますが、影響は小さくないということです。今後についてもしばらく金利は上昇をする見込みの上、その後しばらく高止まりすることが考えられているため、住宅ローン金利の高止まりするでしょう。そういう意味では不動産市場はしばらく大きな低迷を続けるとみていいと思います。

しばらくこの状況は変わることはないでしょう。

不動産市場が米国経済に与える影響は甚大です。不動産から発生する資産効果や家賃収入などは個人にとっても企業にとっても非常に大きなものです。それが今後しばらく悪化し続けるということになれば影響は避けられないでしょう。そのため米国のリセッションというのはかなりの確率で起こるのではないかという印象です。そのためか最近はFRBの政策もややマイルドになるのではないかという観測も出てきています。確かに関係者からも若干景気に配慮するような胸の発言も聞こえるようになってきており、現在の不動産市場をはじめとする景気の現状をあまり無視できないとなっているのかもしれません。いずれにせよ、不動産市場はしばらく改善はしないでしょう。金融政策が多少変わったとしても今度はインフレが長く居座ることになるため、新たな副作用による影響も出てくるかもしれません。そういう意味では今後の不動産市場に対してはあまり楽観できないのではないかという印象です。

まとめ

今日は米国の不動産市場についてみてきました。非常に現状厳しいといわざるを得ません。FRBは引き締めを緩めるようには今のところ見えませんし、仮に多少の路線変更をしたところで焼け石に水といったところでしょう。個人的にはある程度行くところまで行くしかないのかなという感じには思っています。多くの識者が見るように米国のリセッション入りの確率というのは日に日に高くなっているような気がします。