果たして利下げはいつ行われるのか

予想外に金融緩和に積極的なパウエル議長の発言や最近の経済指標により、市場では来年の金融緩和はほぼ確実と見られています。問題はそれがいつ起きるのかという時期の問題へと移ってきています。多くの専門家は来年半ばから後半での利下げを予想していますが、マーケットではより早い時期での利下げを期待しているようです。実際にどうなるかはわかりませんが、少なくとも金融緩和政策が実行されるのは間違いないのでしょう。

利下げの時期について意見が割れる

長らく引き締め政策が継続されてきましたが、ようやくそれも終わりに近づいてきたようです。そしてその時期についていろいろな議論が出てきています。

米金融政策の見通しを巡り、エコノミストと市場参加者との間で見方が割れている。エコノミストは当局が2024年半ばまで利下げを見送るとみる一方、市場参加者は、より早期に緩和サイクルが始まると予想している。

  ブルームバーグが実施した月間調査では、連邦公開市場委員会(FOMC)が24年6月の会合で政策金利を0.25ポイント引き下げ、同年後半にさらに3回の追加利下げに動くことが予想の中央値で示されている。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは7月以降、5.25-5.5%に据え置かれている。

  1カ月前の時点では、エコノミストは最初の利下げが7月になると予想していた。ただ12月のFOMC会合の前に実施された別のブルームバーグ調査では、既にその時点で最初の利下げは6月との予想が示された。

  一方、市場参加者はFOMCによる3月会合、ないしそれより前の利下げについて90%超の確率を織り込んでおり、FF金利は24年末時点で約3.77%になるとの予想だ。

  複数の米連邦準備制度理事会(FRB)当局者はここ1週間、3月に利下げが実施されるとの観測を押し返す姿勢を示してきた。

  パウエルFRB議長は12月のFOMC会合後の記者会見で、利下げ開始がいつ適切になるかについて会合で議論したことを認めた。

  ブルームバーグが実施した最新のエコノミスト調査ではまた、24年中のインフレについて、前月の予想よりも大きく鈍化するとの見通しが示された。

  エコノミストは、金融当局が注目する物価指標である個人消費支出(PCE)コア価格指数に関して、向こう4四半期で0.2ポイント程度予想を下向きに修正した。最新調査では、PCEコア価格指数が24年に平均で前年比2.3%上昇すると予想。前月の調査では2.5%上昇と見込まれていた。

引用:bloombergより

このように市場では来年早期にも金融緩和が行われるのではないかという期待がすでに高まってきています。多くの専門家はそこまで早期には金融緩和は行われるとは思っていないようですが、市場はいつものように楽観的な期待感を高まらせています。最近ではパウエル議長が予想外に金融緩和に対して積極的な姿勢を示し、大きなサプライズとなったのは覚えている人も多いのではないでしょうか。そしてその後に発表された経済指標も非常に低調なものが多く、パウエル議長の発言を十分に正当化するものとなっているような気がします。この発言のあとは市場の期待を打ち消すためか、多くの関係者が早期の緩和を否定するような発言を相次いでしています。アトランタ連銀のボスティック総裁のようなハト派の人でさえ、来年早期での利下げを否定しています。そういう意味ではやはり早期の緩和期待というのは行き過ぎなような気はしますが、そのあたりは人それぞれなのかなと思います。

全てはデータ次第

来年度中に金融緩和が行われるのはほぼ確定と言っていいのでしょう。最近は経済指標が比較的鈍化傾向を示すものが多くなってきています。そのことがパウエル議長の発言を更に効果的に見せているような気がします。問題はそれがいつになるのかということですが、いつものことですがデータ次第ということでしょう。年明け以降、急激にインフレ指標が鈍化してくれば市場が期待しているように来年早期に盛り下げが行われることでしょう。しかし、そこまで急激に減速してこなければ利下げは後ろにずれていくということです。まあ、当たり前といえば当たり前のことだろうという感じでしょうか。今回のインフレは当初から非常に粘着性が高く、厳しい引き締め政策にも関わらず、なかなか落ち着きを見せませんでした。ようやく最近鈍化傾向を示してきましたが、このあと急激に落ち着きを見せる保障はどこにもないと言っていいでしょう。むしろ強さを残す労働市場などを考えるとゆっくりと鈍化していく可能性が高いのかなと感じています。そういう意味では来年早期での利下げの可能性はやや低いのかなと個人的には思っています。もちろん、全てはデータ次第ですし、今の段階では如何様にも変化する可能性があることは事実です。そのことは頭に入れておきたいところです。

まとめ

今日は今後の利下げ期待について考えてきました。市場では早期の利下げを期待しているようですが、そこはやはり厳しいのかなというのが正直な感想です。おそらくは来年半ばから後半にかけて利下げが行われるのだろうと今のところは考えています。しかし、全てはデータ次第です。それによって早期利下げも利下げの見送りも十分にありえることは頭に入れておくべきでしょう。