アルトリアグループは投資対象として適切か

アルトリアグループといえば高配当銘柄として有名です。皆さんの中にも配当狙いで保有している人も多いでしょう。私もその一人です。しかし、高配当銘柄は大抵問題を抱えていることが多いことも事実です。もちろん、それをわかっていて私も投資しているんですが、やはり心配になるものです。

最近モトリーフールからアルトリアグループに関する2つのレポートが発表されました。

  • 2021年6月22日 【米国株動向】アルトリア・グループの高配当は出来過ぎた話
  • 2021年9月26日 【米国株動向】10年以内に資金倍増を狙える高利回り配当株2銘柄

下のレポートのうち一つがアルトリアグループを指していました。

6月の段階ではアルトリアグループを保有することは非常に危険だと言っていたと思ったら、9月には保有するべき銘柄として推奨されるというなんとも見事な手のひら返しが起こりました。いい加減な情報メディアが多い中でモトリーフールは割と信用できる媒体だと思っていたのでこれには少々驚きました。もちろん、3か月もあれば状況は変わるだろうし、ちゃんとした理由があれば何の問題もありません。むしろ、自分の考えを事実に基づいてきちんと修正したのであればとても素晴らしいことでしょう。ますます信頼してしまいそうです。というわけで今回はこの二つの記事を比較し、なぜこのようになことになったのか考え、投資対象としてアルトリアグループはどうなのか考えてみたいと思います。

アルトリアグループとは

アルトリア・グループは米国のたばこ・ワイン製造持株会社。フィリップモリスUSAは米国でたばこと無煙たばこを製造、主要ブランドは「マルボロ」や「バージニアスリム」など。また機械製葉巻やパイプたばこ、「スコール」などのブランド名で無煙たばこの製造に従事。セント・ミシェル・ワイン・エステイトはワインを製造・販売する。本社はバージニア州。

引用:ヤフーファイナンスより

アルトリアグループは米国でたばこやワインを扱っている会社です。煙草を扱っていることは多くの人が知っているかもしれませんが、ワインを取り扱っていることを知らない人は結構いるでしょう。実際、売上高の大部分はたばこ関連で、ワインはごくごく一部です。なので、アルトリアグループ考えるときはワインのことはあまり考えなくてもいいかもしれません。

業績セグメント

参照:マネックス証券 銘柄スカウターより

このようにアルトリアグループの主な売上はたばこ事業から生まれています。

業績

参照:マネックス証券 銘柄スカウターより

2008年に大きく落ち込んでからは売上高は若干上昇してますが、ほぼ横ばいです。営業利益も2008年に落ちてからこちらは右肩上がりです。

株価推移

参照:マネックス証券 銘柄スカウターより

2007年位に高値をつけてから下落し、今年に入ったあたりから上昇しています。これが一時的なものなのかどうかよくわかりません。

配当

参照:マネックス証券 銘柄スカウターより

配当は順調に伸びています。

配当利回りも高く申し分ないです。

配当性向は100%を超えていて将来を考えると少々不安になる数字です。

PER

参照:マネックス証券 銘柄スカウターより

一部途切れていてよくわかりませんが、過去10年では少し高めになっているかもしれません。

貴族株指数

それではいつもの貴族株としての指標を見ていきましょう。

増配年数 52年

配当利回り 7.17%

1年増配率 10.7%

3年増配率 9.7%

5年増配率 9.1%

10年増配率 9.1%

配当性向 146.34%

PER 20.42

引用:U.S.DividendChampions 2021/08/31より

増配年数52年というのはもう素晴らしいの一言です。これ以上ない数値で申し分ありません。配当利回りも7%以上あり、配当狙いの投資家からすると非常に魅力的です。各増配率も10%前後あり貴族株としては素晴らしいとしか言いようがありません。唯一気になるのは配当性向でしょうか。146%というのは利益以上の配当金を出しているということです。その姿勢は大変嬉しいですが、今後のことを考えると大丈夫だろうかとは考えさせられる数字です。

モトリーフールレポートではどのように述べられているのか

まず、それぞれのレポートでどのようなことが述べられているのか簡単にまとめてみます。

2021年6月22日のレポート

  • EPSは順調に成長しているが今後には不安がある。
  • 主力のたばこは世の中の禁煙ブームの影響で見通しが悪く、他の事業も成功しそうもない。
  • 規制も強化される可能性がある。
  • 電子タバコについても同様にシェアが広がっている様子はなく、こちらも規制が強化される可能性がある。さらに特許の問題がり、影響が大きく出る可能性がある。
  • 最近合法化された大麻も業績が良くない。

2021年9月26日のレポート

  • たばこの売上が減少するなか多角化を進めている。
  • その取り組みが結果を出すまで時間がかかるかもしれませんが、それまで高い配当を受け続けることができる。
  • 経営陣は配当の支払いに積極的で増配年数を伸ばしている。
  • 配当支払いの裏付けとして毎年80億ドルの営業キャッシュフローを生み出している。
  • 設備投資が少なく多くのフリーキャッシュフローを配当に当てることができる。

この2つのレポートを見る限り、2021年6月22日のレポートは実際に起こっている状況をふまえて、見通しが暗いと言っているように見えます。たいして2021年9月26日のレポートは若干期待の部分が多いような気がします。多角化しているのは事実ですが、それがあまりうまく行ってないと6月に言っています。しかも、成果が出るまで高い配当を受けられると言っていますが、その根拠はどこにも示されていません。もちろん、経営陣は配当に積極であることは事実だと思いますし、多くのキャッシュフローもあるのでしょう。しかし、これから先もそれが保証されるというのは少々、期待し過ぎのような気がします。そうであればその根拠を示してもらいたいです。

なぜこのようなことになったのか

考えられる原因としては以下の3つかなと思います。

  • 記事を書いた人間が違う。
  • 悪意を持って誘導しようとした。
  • 記事になっていない事実がある。

いずれにしても私個人には調べようもないので仕方ありませんから、客観的にわかってる事実だけで判断するしかありません。プレスリリース等調べても個人的にはこんな180度変わるほどのものは見つけられませんでした。

まとめ

今回のモトリーフールの全く異なる記事の原因というのはまあ、書いた記者が違うのでしょう、たぶん。同じメディアであっても書いた記者が違えば当然違ってくると思いますし、会社の方針と違うことを書かせないようなメディアではないということでしょう。そうであれば非常に健全で良いことだと思います。ただ、こう短期間に違う意見の記事が出ると混乱するので書いた記者の署名を入れるとか読者に対する配慮があればよかったのになと思います。

アルトリアグループのついてはやはり将来性は少し不安は残ります。配当を重視する経営方針は素晴らしいですし、自社株買いにも積極的で2022年6月30日まで買い戻しプログラムは続きます。そういう株主重視の姿勢は他社も見習ってほしいものですが、いかんせん事業内容の将来性があるとは思えません。当然経営陣もそのことがわかっているのでビジネスの多角化を図っているようですが、今のところは実を結んでいないようです。たばこ産業は成長は期待できないかもしれませんが、反対にいきなり減少するということもないと思います。たばこを吸う人は定期的にたばこを買わなければいけませんから、安定感は十分です。そいう意味でも短期的には高配当銘柄として十分投資する価値はあると思いますが、長期的には注意が必要でしょう。そのことは肝に銘じていきたいところです。