消費者物価を受けて楽観的な見方も増えてきた

良好な消費者物価の数値を受けて、マーケットではかなり期待感が出てきています。しかし、楽観は禁物であり、まだまだ油断しない方がいいでしょう。今回の結果を受けて行き過ぎた引き締めに警戒する声が多く上がってきていることは事実であり、今後はややこれまでとは違った空気になる可能性は高くなったのかなと思います。しかし、それを警戒する声も当然ながら多く存在します。そういう意味ではまだ何とも言えないといったのが正直なところです。というわけで今日は消費者物価を受けての要人の発言についてみていきたいと思います。

行き過ぎた引き締めを警戒

今回の消費者物価を受けて多くのFRB関係者は行き過ぎた引き締めに対する警戒感を表しました。ボストン連銀のコリンズ総裁もその一人であり、以下のような発言をしています。

米ボストン連銀のコリンズ総裁は、インフレ沈静化の仕事はまだ終わっていないが、これまでの一連の大幅利上げによって金融引き締めが行き過ぎるリスクは高まったと指摘した。

  「これまでの利上げに伴い、引き締め過剰となるリスクは高まったと考えている」と、ブルームバーグのインタビューで話した。インタビューはロードアイランド州プロビデンスで10日に行われた。

  コリンズ総裁は今年の連邦公開市場委員会(FOMC)で議決権を持つ。金利は9月に想定していたよりも高い水準で頭打ちになるとの見方を示したが、どの程度の水準になるかはまだ判断できないと述べた。

  「具体的な数字を挙げることが役立つと考えるような状況ではない」とし、「さらに金利を引き上げることが必要になるはずだとは考えている」と発言。

  これまでよりも小幅で「慎重な」利上げを、米金融当局が物価圧力を抑える手を緩めている兆候だと見誤ってはならないとも指摘した。

引用:Bloombergより

コリンズ総裁はこのように述べ、今後の行き過ぎる引き締めに対して警戒感を示しました。このような警戒感を示したのはコリンズ総裁だけではありません。多くのFRB関係者がこのような発言をしています。そういう意味ではまだまだ楽観はできませんが、今後の金融政策についてようやく転換点となるようなタイミングが近づいてきた可能性が出てきました。

楽観論に対する戒め

しかし、当然ながら慎重論も依然として存在します。その一人がイエレン財務長官であり、以下のような発言をしています。

イエレン米財務長官は11日、前日に発表された10月の米消費者物価指数(CPI)を「良好な数字」と評価しつつ、一つの指標の単月データに依存し過ぎないよう注意を促した。

  インドのニューデリーを訪問中のイエレン長官は「コアインフレは想定されていたよりずっと低かった。一方で、住居費は高い数字が続いているのも事実だ」と記者団に述べた。  イエレン長官は数週間前から、インフレが減速し始める兆候について発言してきたが、11日には住居費など一部の項目が大幅な価格上昇をあおり続けるだろうと強調した。住居費は総合CPIの約3分の1を占め、来年に入っても長く物価上昇に寄与するとみられる。

  「住居費は帰属家賃と家賃の両方において、今後も勢いを維持し、何カ月もの間、インフレに上方向の圧力を加えるだろう」とイエレン長官は述べた。

引用:Bloombergより

イエレン財務長官はこのように述べ、過度な楽観論に対する警戒を表しました。イエレン財務長官は消費者物価の落ち着きに対しては素直に評価しましたが、たった一つの指標のみで今後の金融政策にどうこう言うべきではないという意志を示しています。確かに消費者物価の落ち着きというのはいいことですが、それだけでインフレが収まったというのにはさすがに無理があるところでしょう。そういう意味では当然の発言といったところです。

やや行き過ぎた動きかなという印象

個人的にはイエレン財務長官の発言に共感するところです。確かに今回の消費者物価の結果を受けて、今後の金融政策が大きく変わる可能性は高くなったと思います。しかし、消費者物価の数値だけをもってそのように考えるのはやや早急な考えではないでしょうか。これまでも何度もそのような楽観論で臨んだ投資家はあえなくマーケットに返り討ちに合っています。そういう意味でも懸命な投資家はもう少し慎重になった方がいいのかなと思います。

今後も荒い展開が続く可能性

ただ、マーケットはすでに今後の金融緩和の動きを先取りしています。株式市場は大幅に上昇し、今回の結果を素直に好感しています。為替市場でも一時1ドルが138円台に乗せるなど大きくドルが下落しています。つい先日までは150円に乗せるとか言っていた為替がいきなり140円を割るというのはかなり激しい動きといっていいでしょう。短期売買をしている人にとってはいい稼ぎ時といった感じですが、素人はあまり手を出さない方が賢明です。こういう時はおとなしくしておくに限ります。いずれにせよマーケットは今後の金融政策の変更について織り込み始めました。そういう意味ではもし今後の経済指標があまり冴えないものであればまた反動でドルが買われる可能性もあり、荒い値動きが続いていく可能性もあるのかなといった感じです。

まとめ

今日は消費者物価を受けての発言についてみていきました。個人的には今後の金融政策が大きく変わる転換点になった可能性があるのかなという感じです。ただ、まだそれを断定するには早いと思いますし、今後の展開に注意が必要でしょう。そういう意味では今後もマーケットは荒い展開になりそうな感じがします。