10月の消費者物価は予想外に鈍化する。正常化への道がようやく見えたのか?

景気減速が懸念されるようになってきましたが、少し良いニュースも出てきました。先日発表された米国の消費者物価ですが、市場予想よりも弱いものとなり、思っていたほどインフレは強くない可能性が出てきました。今回の数値だけを見て何かを確定するということはできませんが、その兆候が表れたということは心理的には確実にプラスに働くはずです。そういう意味では株式市場にとっても追い風となることでしょう。そういうわけで今日は先日発表された消費者物価についてみていきたいと思います。

10月の消費者物価は予想外に鈍化した

先日発表された10月の消費者物価は市場予想を大きく下回る結果となり、インフレはやや鈍化してきた可能性が出てきました。

米国では10月、インフレが市場の予想以上に鈍化した。数十年ぶりという物価上昇が勢いを弱めつつあるとの期待を持たせる内容で、米金融当局にとっては急激な利上げを減速させる余地が生まれた格好だ。

  前月比ではコアCPIが0.3%上昇。総合は0.4%上昇した。伸びは共に市場予想の中央値を下回った。

  ドイツ銀行の米国担当チーフエコノミスト、マシュー・ルゼッティ氏は、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで「今回の統計の基調的な要素は良好で、明るい内容だ。インフレがピークから下げつつある兆候がやや見られる」と指摘した。

  コアCPIの伸び鈍化は歓迎すべきニュースではあるが、インフレは金融当局を満足させるには依然として高水準過ぎる。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は今月、当局として前月比でのインフレ指標が着実に鈍化するパターンを目にする必要があると述べている。また政策金利のピーク水準は当局の当初想定よりも高くなる可能性が高いとの見解も示している。

  10月は医療サービスと中古車の価格指数が前月比で低下し、それがコア指数の伸び抑制につながった。総合CPIでは、住居費の上昇が指数全体の伸びの半分余りを占めた。

  今回のCPIを受け、短期金融市場では12月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅について、0.75ポイントよりも0.5ポイントの織り込み度合いが強まった。また来年の政策金利のピーク水準の予想は5%を下回った。

  次回のFOMC会合は12月13、14両日に開催され、それまでにCPIと雇用統計の発表があと1回ずつ予定されている。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、アナ・ウォン氏は「10月のコアCPI減速により、米金融当局のハト派は今後利上げペースを減速させる強力な正当性を得たことになる」と指摘した。

  住居費は前月比0.8%上昇と、1990年以来の高い伸び。ホテル宿泊費がここ1年余りで最大の上昇となったことが背景にある。住居費はサービス分野の最大項目で、総合CPIの約3分の1を占める。

  食品とエネルギー、住居を除いたベースでは、CPIは0.1%低下した。

  食品価格は前月比で伸びが鈍化し、中古車は2.4%低下。ガソリンは4%値上がりした。一方、医療保険は4%低下と過去最大の値下がり。

  高インフレは消費者の購買力を低下させている。CPIと別に発表された統計によれば、インフレ調整後の実質平均時給は10月に前年同月比2.8%減少。21年4月からの減少局面が続いている。

引用:Bloombergより

このように消費者物価は予想よりも鈍化してきています。異常なまでの物価上昇によって消費は確実にダメージを受けており、企業業績にも大きな影響を与えているものと思われます。その結果として当然ながら企業は価格を転嫁できず、上昇率はだんだんと低下してきたということでしょう。これまで急激に金利を引き上げてきたFRBの金融政策がようやく効果を発揮してきたというところかなと思います。

今回の発表をもって何かが決定されたわけではない

今回の結果を受けて、今後の金融政策がどうなるかということは何とも言えません。マーケットではこの結果を受けて金融引き締めの転換を先取りした動きとなっています。株式は上昇し、ドルは大きく下落し、ドル円では一時141円台まで下落しました。このように明らかに空気が変わったという感じです。しかし、本当に今後の金融政策が今回の消費者物価の発表をもって変化するかはまだわかりません。パウエル議長をはじめ多くのFRB関係者は確実にインフレが鈍化するまで引き締めは続けると明言しています。そしてそれはたった一つの経済指標で決めるものではないでしょう。そういう意味でも今回の発表だけで今後の金融政策を判断するというのはやや危険な気はします。しかし、少なくともその可能性が高くなったことは事実ですし、さらに厳しい引き締めが行われるといった可能性はかなり低くなったのかなという印象です。

まとめ

今日は先日発表された消費者物価についてみてきました。物価上昇が鈍化したということは大変良いことであり、一安心といったところです。しかし、そうはいってもまだ7%台後半ということで、とても安心できるレベルではありません。現状でも十分すぎるくらい高いといっていい水準です。そういう意味ではまだ今後の金融政策がどのようになるのかということは何とも言えないといった印象です。しかし、良い兆候であることは確かなので今後もこのような発表が続くことを祈るばかりです。