来年度の緩和期待を牽制するFRB

FOMC後のパウエル議長の発言によって、市場では来年早期に盛り下げが行われるとの観測が高まってきました。もちろん全てはデータ次第であり、決まったことはありません。状況によっては金利の維持が継続されたり、もしかしたらさらなる引き上げもあるかもしれません。いずれにせよ様々な可能性がある中で利下げの可能性を匂わせたというのは市場関係者にとって非常にポジティブなサプライズだったのだろうと思います。しかしながら、その観測というのはやや楽観的すぎるような気はしますし、その点について釘を指すことも金融当局は忘れていなかったようです。

市場の緩和期待を牽制

昨日はパウエル議長の発言から来年早期にも金融緩和が行われるのではないかという市場の観測を打ち消すような発言が当局から相次いで発信されました。

米金融市場では、早ければ来年3月といわれる利下げ観測が高まっているが、15日は米金融当局者2人がこれに否定的な見解を相次ぎ示した。

  ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は経済専門局CNBCとのインタビューで、金融当局の関心事はインフレ率を2%に下げるために金融政策が十分に景気抑制的かどうかであり、金利を3月にも引き下げることを考え始めるのは早過ぎると述べた。

  アトランタ連銀のボスティック総裁はロイター通信とのインタビューで、来年2回の利下げを予想したが、始まるのは第3四半期になるとの見方を示した。

  ウィリアムズ総裁は「利下げについて協議しているというほどでもない」と発言。来年3月の利下げについて考えるのは「時期尚早」だと述べた。

  LHマイヤー/マネタリー・ポリシー・アナリティクスのエコノミスト、デレク・タン氏はウィリアムズ総裁の発言について、連邦公開市場委員会(FOMC)がインフレ状況のさらなる進展を確認できない場合に備え、来年初めも引き続き金利を据え置く余地を残す意図的な試みのようだと指摘。「FOMCは3月の利下げを見送る選択肢を残したいのだろう」と語った。

  FOMCは13日、積極的な利上げからの政策転換を示唆し、当局者は来年の利下げを予想した。しかしウィリアムズ総裁は、金融当局者の四半期ごとの金利見通しは、市場が予想するよりも緩やかな緩和の道筋を示唆していると指摘した。

  予想の中央値では、2024年の利下げは3回だが、金利先物市場では3月から6回の利下げが織り込まれている。

  ウィリアムズ総裁は3月の利下げ観測を巡り、「その質問について考えること自体が時期尚早だ」と発言。「それは喫緊の課題ではない」と述べた。

  パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長はFOMC会合後の記者会見で、物価上昇圧力が再び台頭しないようにするため、追加利上げの選択肢を外す用意はないとした。ただ、利下げ開始がいつ適切になるかについて今回のFOMC会合で議論したことは認めた。

  ロイターによると、ボスティック総裁は「これが差し迫った問題だとはあまり感じていない」と述べ、十分なデータを吟味し、インフレ率が低下を続けるとの確信を得るには「数カ月」必要だと語った。

  ウィリアムズ総裁は「市場はわれわれが予測で示したもの以上に強く反応しているようだ」と指摘。

  さらに「パウエルFRB議長が言ったように、問題はインフレ率が2%に下がるのを確実にするために、金融政策が十分景気抑制的なスタンスになったかどうかだ。それが目前にある問題だ」と話した。

引用:bloombergより

このように本日は市場の金融緩和期待に対して釘を刺すような発言が相次ぎました。パウエル議長の発言を受けて市場では早期の利下げ観測が強くなってきていましたが、その期待は時期尚早だということのようです。特にボスティック総裁はFRB内部でもハト派として有名であり、最近では強気な発言を否定するような物言いだったような気がします。そのボスティック総裁ですらも早期の利下げについては否定的のようです。そういう意味ではパウエル議長の発言を受けての市場の緩和期待というのは流石に行き過ぎということでしょう。

何事もデータ次第

やはり市場の緩和期待というのはやや楽観的すぎるというところでしょう。個人的にはその意見には同意であり、やはりそこまで簡単に利下げはするべきではないのかなという感じがします。今回のインフレは非常に粘着性が高く、なかなか簡単に落ち着くとは思えません。たしかに最近はインフレもようやく落ち着きを見せては来ていますが、まだまだ十分すぎるほど高いところにいるのには変わりません。そこからの減速スピードはこれまで想定以上に遅かったということは紛れもない事実です。そういう意味でも今後もそこまで減速が順調に行くとは行かない可能性も考えておく必要があるでしょう。もちろん今後は急激にインフレが落ち着く可能性もありますし、確定的なことは何も言えません。しかし、確実なことは何もないことは理解しておくべきでしょう。

まとめ

今日は市場の緩和期待に対して当局が釘を刺すという記事について見てきました。パウエル議長の発言もあり、緩和期待は高まっていますが、個人的にはそんなに簡単にインフレが収束するとは思えません。であれば金融政策も期待するほど緩和的にはならないでしょう。もちろん今後のことはどうなるかわかりませんが、何が起きてもいいように準備しておくべきことは間違いないでしょう。