7月は50bpでの利上げが行われるのか

予想外に弱さを見せた雇用統計の結果、やや6月の利上げの行方については不透明感が増してきています。依然として引き締めを望む声が多くある一方、この結果を受けて一旦利上げを停止するのではないかという意見も出てきています。そういう意味ではますます不確定要素が多くなったような気がしますが、依然としてインフレは強く、とても油断できる状況ではありません。そういう意味ではたとえ6月の利上げが行われなくても楽観視はできないような気がします。

6月利上げが停止でも安心はできない

元財務長官のサマーズ氏はインタビューにて今後の金融政策について述べていました。

サマーズ元米財務長官は、連邦公開市場委員会(FOMC)が6月の会合で利上げ見送りを選択した場合、7月会合では政策金利を0.5ポイント引き上げる可能性を残しておくべきだと述べた。

  サマーズ氏は「米金融当局が留意しなくてはならない主要なリスクは景気過熱リスクであるという状況に再び陥っている」と2日のブルームバーグテレビジョンとのインタビューで語った。

  米連邦準備制度理事会(FRB)の副議長に指名されているジェファーソン理事は5月31日、FOMCが経済見通しを精査する時間を持てるよう、6月13-14日の会合では金利据え置きに傾いていることを示唆した。

 ハーバード大学教授のサマーズ氏は、今月の利上げの是非は判断が難しいとした上で、相対的にリスクが低い戦略は利上げ実施だと指摘。「もし6月に利上げを行わず、経済が好調を維持してインフレ率も高水準だった場合、7月会合で50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利上げが必要になる可能性にオープンでなくてはならないだろう」と述べた。

  この日発表された5月雇用統計では失業率が前月の3.4%から3.7%に上昇したが、サマーズ氏によればこの数字の算出元となる家計調査のデータはノイズが混じることがある。学校の年度末が近づく5月は特にそうだという。

  「労働市場は引き続きタイトかつホットだ」とサマーズ氏は語った。

引用:bloombergより

このようにサマーズ氏は6月に利上げが行われなかった場合、7月に50bpでの利上げが行われる可能性について考慮すべきとの発言をしています。サマーズ氏は以前から積極的に引き締めを行うべきという発言をしており、そういう意味ではこの発言はおかしなものではないのだろうと思います。厳しい引き締めを求めるサマーズ氏でも6月の利上げ判断には迷いが生じているようで、積極的に引き上げるべきとは考えていないようです。ですが、全体としてインフレ抑制のための引き締め政策の必要性は感じており、たとえ今回引き上げがなかったとしても次回には相当の対応が必要になると見ています。それだけ厳しい対応がインフレ抑制のためには必要ということなのでしょう。実際どのようになるのかはわかりませんが、インフレが予想以上にしつこく、なかなか鈍化していないことは事実であり、その可能性も否定できないのではないかと思われます。

より選択肢が増え不安定になってきている

実際のところどのようになるのかというのはわかりません。しかし、FRB内部から聞こえてくる声も6月は引き上げをすべきという声と一旦停止すべきという声が複数存在し、なんとも判断できない状況であるというのは間違いないでしょう。そして雇用統計の結果を受けて更に状況は混沌としているのかなという感じがします。その中で経済の原則を考えれば一旦停止という判断をする可能性も十分にあるのだろうと思います。しかし、何度も言っているように、今回のインフレは非常に粘着性が強く、そう簡単には2%へと下落していくことはないでしょう。そういう意味では6月の利上げが停止された場合、予想外にインフレが加速する懸念があることも事実です。もしそうなればサマーズ氏が言うとおり、7月は大きな引き締めが必要になる可能性も考慮して置かなければならないということでしょう。それだけ今回のインフレは強くしつこいものであり、制御するには相当の時間と覚悟が必要なのだと思います。

まとめ

今日はサマーズ元財務長官の発言を見てきました。タカ派なサマーズ氏が6月の引き上げについてやや迷っているような発言をしていることは驚いたというのが正直なところです。しかし、それでもタカ派であることには変わりなく、利上げを停止したときにはそれなりの覚悟が必要であることを警告しているということでしょう。実際、インフレは予想外に強く、今後また上昇する可能性もないとは言えないと思います。そういう意味では6月一旦利上げが停止されたとしてもそれを持ってあまり楽観的になることは良くないのかなという印象です。