5月の雇用統計はやや方向性が曖昧な結果

市場で注目されていた5月の雇用統計の結果が発表されました。結果としては強弱どちらも存在する内容であり、なんとも判断が難しいものとなったような気がします。ただ、これまでのような強さばかりが目だつものではないのは確かであり、6月の利上げ判断はやや弱くなったのかなという印象です。

5月の雇用統計は強弱含まれる結果

昨日発表された5月の雇用統計は雇用者数が増加する一方で失業者も増加、賃金は鈍化するという強弱織り交ぜた結果となりました。

5月の米雇用統計では、雇用者数の伸びが加速する一方で失業者数も急増。平均時給は鈍化した。強弱入り交じる内容で、米金融当局が利上げを休止する根拠が増えた格好だ。

  5月は広範囲の業種で雇用が増加。特に専門職・ビジネスサービスや政府部門、ヘルスケアでの伸びが目立った。

  失業率は前月からの上昇幅が2020年4月以来の大きさとなった。金融当局者はこの上昇にも注目するとみられる。失業者数は5月に前月比44万人増加。新型コロナウイルス禍が始まった直後に記録的に急増した時期があったが、それに次ぐ大きさだった。

  5月雇用統計が強弱まちまちの内容となったことで、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が示唆する利上げ休止姿勢が正当化される可能性がある。他の当局者からも、6月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では政策金利を据え置き、7月に引き締めを再開する余地を残す考えを支持する見解が聞かれる。

  雇用統計は2つの調査で構成されている。一つは失業率などを算出する家計調査で、もう一方は雇用者数や賃金などをカバーする事業所調査。

  家計調査の詳細を見ると、労働市場に加わる人が職探しに苦労していることや、以前雇用されていた人が失業するケースが増えていることが分かる。

  一方、事業所調査では堅調さが示された。雇用者数は1年2カ月連続で市場予想を上回り、労働力人口の大半を占める非管理職の賃金は0.5%増と、6カ月ぶりの大きな伸びとなった。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、アナ・ウォン氏らは「5月雇用者数の驚くほど力強い伸びは、ブルームバーグが実施したエコノミスト調査の最高値をも上回り、労働市場の読み取りが困難であることを浮き彫りにした。われわれの見解では、労働市場はヘッドラインの数字が示唆するより弱い。家計調査で示された就業者数は5月に実際のところ減少した」と指摘した。

  平均時給は前年同月比では4.3%増。今年3月と並び、2021年半ば以来の低い伸びにとどまった。市場予想は4.4%増。4月は4.4%増だった。

  労働参加率は62.6%で変わらず。25-54歳の労働参加率は上昇し、07年以来の高水準。上昇分を女性が占めた。

  需要に関して気掛かりな兆候も見られた。週平均労働時間が34.3時間に若干減少し、20年4月以来の低水準となった。景気が弱まり始めると、雇用主は人員を削減するよりまず労働時間を減らす傾向がある。

引用:bloombergより

このように5月の労働環境は非常に複雑なものだったようです。雇用者数は増加したということで労働市場が依然としてタイトであるということは言えるでしょう。しかし、失業者も増えており、これは企業が人員整理を加速させていることとも一致します。そして賃金が鈍化しているなど雇用環境は全てにおいて強いというわけではなさそうです。そういう意味では非常に判断が難しいということになりそうです。これまでは比較的労働市場は強さを見せる指標の発表が多かったように思います。そのため今回の雇用統計もそれを裏付けるものが出てくると予想した人も多かったでしょう。しかし結果としてはやや期待を裏切られた形となったのかなと思います。

より不透明感が増す

今回の結果はやや予想外のものでした。もう少し強いものが出てくるのかなと予想していましたが、さすがの米国もそこまで強くはなかったのかなと感じています。ここまでインフレが続き、金融政策も引き締めが継続されているのであればまあ、ふつうのコトかなとは思います。それでもまだ雇用者数が増加傾向にあることは米国の労働市場の強さを示していると言っていいでしょう。ただ、その中でも弱さが見えてきたということは事実であり、その事はFRBに金融政策の変更を考えさせるのに十分でしょう。最近はやや強めの指標が多かっただけに、6月も引き続き利上げを行うべきというタカ派の主張が通りそうな雰囲気でしたが、今回の結果を受けてややその傾向も変わりそうな感じです。もちろん今回の結果を持って全てが決まるわけではないですし、タカ派の識者もその意見を変えるほどのものでもないでしょう。そういう意味でもより混沌としてきたような気がします。

まとめ

今日は5月の雇用統計の結果についてみてきました。労働市場もやはり以前ほどの強さはないのだろうという印象を持ちました。もちろん急激に悪化するということはないでしょうが、強さを見せつつも徐々に軟化していくという形を取るのかなと感じています。それをFRBがどのように考えているのかというのが今後は注目されるところです。それを問題なしと思えば6月は一旦利上げは停止されるでしょう。しかし、それでもまだ引き締めるべきだという意見が強ければ引き続き金利の引き上げが行われるものと思われます。今後の関係者の発言に注目です。