5月の民間雇用者数は予想外に増加。

厳しい引き締め政策下においても強い労働市場は健在のようです。昨日発表された5月の民間雇用者数は市場予想を上回る結果となり、労働市場は極めて強いという現実を確認することができました。これはインフレ抑制を目指すFRBにとっては非常に頭の痛い問題であり、引き続き利上げを行う口実にもなると思われます。

5月の民間雇用者数は予想外の増加

昨日発表されたADPによる5月の民間雇用者数は市場予想を大きく上回る結果となりました。

ADPによると、5月の米民間雇用者数は、ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想の全てを上回り、景気を下支えする底堅い労働市場を浮き彫りにした。

  データはADPリサーチ・インスティテュートとスタンフォード・デジタル・エコノミー・ラボが共同で算出した。

  雇用増は娯楽・ホスピタリティーがけん引し、鉱業や建設業、貿易・運輸でも増加した。増加は従業員500人未満の企業に集中。南部が唯一、減少した地域となった。

  2500万人余りの給与を分析したADPの統計によると、賃金の伸びは減速。転職せず同じ職にとどまった労働者の報酬は前年同月比6.5%増加。転職した労働者の年間報酬は中央値で12.1%増加したが、前月からは1ポイント低下し、2021年10月以来の低い伸びにとどまった。

  ADPのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は発表文で「賃金の伸びが大きく減速している。雇用は力強いものの、賃金インフレへの懸念は薄れている可能性がある」と指摘した。

  ADP統計は、家計支出を下支え景気を拡大させている労働市場がなお力強いことをあらためて示した。テクノロジー企業で始まったレイオフは他の産業にも広がりつつあるが、多くの企業が労働者を引き付け、維持するのになお苦戦している。

  連邦公開市場委員会(FOMC)は消費者需要とインフレ見通しの手掛かりとして労働報酬に注目しており、賃金減速は米金融当局にとって良いニュースだ。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は極めて堅調です。景気の悪化懸念や金融不安、更にはFRBによる金利の引き上げ等厳しい状況は依然として変わりませんが、労働市場にはほとんど影響がないと言っていいような状況です。

新規失業保険申請件数はやや増加も依然としてタイト

更に先週一週間での新規失業保険申請件数もやや増加したものの、労働市場の強さを示すには十分なものであり、雇用環境の強さを改めて確認するものとなっています。

先週の米新規失業保険申請件数は小幅に増加。依然として労働需要の堅調さを示唆する水準だった。

  季節調整前ベースでは20万8000件。前週は20万3000件。州別ではオハイオとニューヨークでの伸びが目立った。

  申請件数のデータは特に祝日前後には変動が大きくなりやすい。5月27日終了週はメモリアルデー(戦没者追悼記念日)を控えた週だった。

  より変動の少ない失業保険申請の4週移動平均は22万9500件に減少し、3月11日終了週以来の低水準となった。

  失業保険の継続受給者数は5月20日終了週に6000人増の179万5000人。

引用:bloombergより

このように新規失業保険申請件数は若干の増加は見られたものの、FRBが金融政策を変更するほどの影響はないものと見られます。これらの労働市場の指標を見てもわかるように米国の雇用環境は極めて強いです。強い労働市場というのはプラスの側面もありますが、インフレ抑制という観点から見るとインフレ圧力であることは間違いなく、非常にまずい状況でもあると言えるでしょう。少なくともFRBがこの状況に楽観的になるということはないような気がします。

雇用統計に注目

米国の労働市場は相変わらずです。一時期の力強さはないように思いますが、それでも軟調と言えるほど弱くはないことは事実です。そういう意味では依然として労働市場はタイトであると言っていいと思います。この結果を受けてFRBが今後の金融政策をどのように行っていくのかが非常に注目されます。これまでは引き続き利上げを行うべきという声と、一旦停止すべきという声が両方聞かれていましたが、今回の結果を見る限り、やはり利上げをすべきという声が大きくなることは間違いないのかなという印象です。特に金曜日に発表される雇用統計の結果も同様なものであればその可能性は更に高くなると言えるでしょう。そういう意味では今晩の雇用統計の結果には非常に注目が集まるところだと思います。

まとめ

今日は米国の労働市場について見てきました。労働市場の強さというのは相変わらずです。弱くなりそうな感じも見えたりしましたが、依然として強いと言わざるを得ません。そういう意味では6月も利上げを行う可能性は更に高くなったのかなという印象です。もちろんまだどうなるか決定したことはありませんが、個人的にはほぼ確定的かなと感じています。特に今夜の雇用統計の結果がそれに近いものであればもう確定と言ってもいいのではないかと思います。