FRBが金利を完全にコントロールできるわけではない

世界的なインフレの中、今後の消費者物価や金利動向には特に注目が集まっていると思います。FRBはインフレ抑制に本腰を見せているようですが、本当にインフレを抑制できるのでしょうか。この点に疑問を持っている人もいるかと思いますが、それに対する一つの答えとして面白い意見を見つけたので今日はそれについて述べてみたいと思います。

金利は結局市場が決める

ニューヨーク大学教授のアスワス・ダモダラン教授はCNBCのインタビューで以下のように述べています。

私たちはあまりにもFRBのことを語りすぎる。現実は、金利とはFRBがいようがいまいが上昇するということだ。FRBは同調せざるをえないし、FRBが制御しているように見えるかもしれないが、インフレが4-5%なら、金利が2%に留まる宇宙は存在しない。

引用:The Financial Pointer 【短信】インフレ制御には景気後退が不可避:アスワス・ダモダラン より

私たちは現在のインフレがFRBの政策によってコントロールされることを期待しています。もちろん程度の問題など意見の違いはあるとは思いますが、FRBによってある程度の金利や物価の動向はコントロールできると思っているでしょう。しかし、ダモダラン教授はそれを否定します。FRBがどんな政策を打とうが金利は構わず上昇する、つまり市場原理に従い動くというのです。そのため結局はその動きにFRBも追随せざるを得なくなるだけと教授は考えています。これは鶏が先か卵が先かという話によく似ているような気がします。結局どちらが主導権を握っているのかというのはよくわからないのかもしれません。

景気後退しか道はない

いずれにせよ、ダモダラン教授のいう通りであれば今後は金利は上昇していくでしょう。インフレ率が7%にもなる現在、金利が1%や2%で収まるはずがありません。必ず乖離は収束するようになるはずです。よって今後は金利は徐々に上昇していくことが予想されますが、その現実は非常に厳しいものとなるとダモダラン教授は見ています。

遅すぎないことを祈った方がいい。元に戻す唯一の方法は経済を景気後退入りさせること、おそらく深い景気後退だ。

引用:The Financial Pointer 【短信】インフレ制御には景気後退が不可避:アスワス・ダモダラン より

このようにダモダラン教授は非常に厳しい未来を予想しています。過去を検証してみると、インフレが制御不能となった場合、再び正常な経済に戻るには景気後退を経るしかなかったというのです。この事実は我々にとって、とてもつらい現実です。もし、FRBがインフレの抑制に失敗してしまった場合、大恐慌とまではいかなくともある程度の景気後退は覚悟する必要があるでしょう。なのでFRBには何とかして頑張ってもらいたいところですが、インフレは一過性だとか、多くの過ちを犯してきたFRBが今後は正しい政策を実行できるのかは不透明です。それに教授の言うことが正しいのであれば、金利やインフレをFRBが完全にコントロールするというのは本質的に無理ということになり、ますます絶望への道を突き進むという未来しか残されていないのだということです。

その可能性は非常に高い

ダモダラン教授の話は非常に論理的でわかりやすいものです。なので非常に納得がいき、それだけに今後の展開を想像すると暗い気持ちになります。確かに最近のFRBは多くの失敗をしてきたように思います。結果からそれを導き出すというのは卑怯な気もしますが、実際インフレがここまで進んでしまったという現実は、十分それを裏付けることができると思います。しかし、ようやくといっていいかもしれませんが、FRBもインフレ抑制に本腰を入れてきた感があります。おそらくは今後は少々の株価下落や景気減速は許容してでもインフレを抑制しようとするのではないかと思います。万が一FRBが利上げを踏みとどまったとしても、市場はファンダメンタルズに立ち返り、金利は上昇するだろうとダモダラン教授は見ています。いずれにせよ今後は金利は上昇し、景気後退の可能性が非常に高くなってきたということかもしれません。

まとめ

今日はアスワン・ダモダラン教授の意見をもとに今後の米国経済について考えてみました。教授の意見が正しいのであれば、FRBがどのような政策に出ようとも金利は上昇していくだろうということです。FRBが金利を上げればもちろん、直接FRBがあげずとも市場がファンダメンタルズを反映して金利が上昇していくというのです。たしかに日々の金利動向というのは中央銀行の政策だけで変化するものではありません。日本もそうですが、その国の経済状況や先行きに反応して金利というのは日々動きます。なのでFRBがどのような政策をとろうが、インフレ率が7%もある国の金利が1〜2%程度で収まる道理はないのでしょう。そうなると株式市場にとっては厳しい未来が待ち受けていることは間違いないような気はします。ただ、個人投資家としてはここが辛抱のときです。今後数年は厳しいかもしれませんが、それを過ぎれば必ず明るい未来はやってくるでしょう。その時、市場が低迷する時期に仕込んでおいたものが大きく成長するのです。それを信じて投資は続けていくべきです。