相次ぐ弱い経済指標は何を意味するのか

インフレが落ち着き、先行きに明るさも見えてきたところですが、やや注意しなければならないような事態が起きてきたかもしれません。昨日発表された経済指標はいずれも弱含みのものであり、先行きに対して疑問符をもたせるものでした。これを持ってどうこう言えるものではありませんが、インフレが落ち着きを見せてから続いてきた明るい兆しがやや落ち着いてきた感があります。

製造業の指標がやや冴えない

昨日発表されたISM製造業総合景況指数はやや落ち着いたものとなり、製造業は未だに活気を取り戻せていないことが確認されました。

米供給管理協会(ISM)製造業総合景況指数は、9カ月連続で活動縮小を示した。国内外で米国製品に対する需要が低迷していることがうかがわれる。

  内訳では新規受注と生産が改善したが、なお縮小の領域から抜け出せていない。新規受注は9カ月ぶり高水準となった。一方、輸出は今年最も低い水準に沈んだ。

  製造業全般の弱含みを受けて企業は人員削減に動いており、雇用の指数は2020年7月以来の水準となる44.4に低下した。

  7月に活動が拡大したのは石油製品と家具の2業種に限られた。活動が縮小した16業種のうち、衣類、プラスチック、紙製品の不振ぶりが特に目立った。

  ISM製造業調査委員会のティモシー・フィオレ会長は発表文で、「需要はなお弱いが、6月からはわずかに改善した。生産は受注不足のため減速し、サプライヤーは引き続き生産能力を確保している」と指摘。「近い将来、生産量に合わせるために追加の雇用削減が実施される兆しがある」との見方を示した。

  だが、労働市場は依然として全般的に堅調だ。4日に発表される7月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が20万人増と予想されている。

  製造業の短期的な見通しは依然として暗いが、向こう数年には連邦政府の投資による追い風を受ける見通しだ。バイデン政権主導で制定にこぎ着けたインフラ整備に関する法律やインフレ抑制法(IRA)、CHIPS法により、建設・製造業で投資がすでに相次いでおり、4-6月(第2四半期)の国内総生産(GDP)を押し上げた。

引用:bloombergより

このように米国の製造業は絶不調というわけではありませんが、9ヶ月間に及び低迷し続けているのが現状です。インフレも落ち着きを見せ、やや明るい兆しが見えてきたというところで、経済についても希望を見出したいところですが、まだそこまで入っていないというところでしょう。

労働市場も強さを失いかけているのか?

求人件数についてもやや弱くなってきたかもしれません。6月の求人件数は減少傾向を示しており、堅調だった労働市場も少し力は落ちてきた可能性があります。

6月の米求人件数は減少し、2021年4月以来の低水準となった。労働市場は全般的に堅調だが、労働者に対する需要が幾分軟化していることが示唆された。

  採用は21年2月以来の低水準に落ち込んだ。一方でレイオフも小幅に減少し、昨年12月以来の少なさとなった。雇用主が人員を手放すのに消極的であることを示唆する。週次統計の新規失業保険申請件数も最近、減少傾向にあるほか、失業率は過去最低近辺で推移しており、レイオフが手控えられている動きと整合的だ。

  インディード・ハイアリング・ラボの経済調査責任者、ニック・バンカー氏は「レイオフに関するデータは、いかに労働者に対する雇用主の需要が引き続き底堅いかを示す」とリポートで指摘。「景気下降期だとレイオフのデータは騒々しく鳴り響く非常サイレンのようなものだが、今では、職に就いている人たちに『全て問題ない』という静かなシグナルを送っている」と述べた。

  6月の求人件数は製造業など財生産セクターを中心に減少。ヘルスケアや娯楽などサービスセクターの一部では増加した。

  自発的離職者の割合である離職率は2.4%に低下し、21年2月以来の低水準に並んだ。

  求人件数が記録的な高水準で推移してきたことは、過去1年4カ月に及ぶ積極的な米利上げの重要な論拠となってきた。

  失業者1人に対する求人件数は1.6件で、前月からほぼ変わらず。コロナ禍前はおよそ1.2件だった。 

引用:bloombergより

このように6月の求人件数は予想よりもあまり強いものではありませんでした。労働市場はこれまでインフレや厳しい金融政策のなかにあっても比較的強さを維持してきましたが、やや弱さを見せるようにもなってきたのかもしれません。

まだまだ楽観はできないということ

最近は比較的明るい希望を見せるような経済指標の発表が相次いでおり、非常に楽観的な気持ちになることも多かったように思います。しかし、今回の発表を見ればわかるように米国経済は全く問題がないわけではありません。あくまでこれまでに比べればマシになったというだけであり、問題は山積しているということは理解しておいたほうがいいでしょう。もちろんまだ景気が後退するのかどうかということは言えませんし、全てはデータ次第です。過度に悲観することはありませんが、楽観的になりすぎるのも良くないことを覚えておいたほうがいいでしょう。

まとめ

今日は冴えない経済指標について見てきました。最近はやや楽観的な空気が広がっていましたが、それを正すように悪いものが相次いで発表されたという感じです。米国経済は一時期の最悪期は脱したとは思いますが、以前のような右肩上がりの成長という時期にはまだ程遠いという感じです。そこはきちんとわきまえておきたいところです。