米国の家計は急速にその力を減少させてきている

インフレが厳しさを増す中、米国経済は何とか保っていますが、いつまでそれが続くのかはわかりません。当然ながら永遠にインフレに耐えられるということはないので、何とか経済が保てているうちに状況を改善したいところですが、あまり時間はないように思います。米国の家計はここのところ急速に資産を減らしてきており、米国のGDPの多くを占める個人消費に対する影響というのはそろそろ出てくるのではないかという印象です。もしそうなれば米国経済は非常に厳しい状況に陥ることでしょう。FRBが目指すソフトランディングについてもかなり難しいといわざるを得ません。そういうわけで今日は米国の家計についてみていきたいと思います。

米国の家計は急速に悪化してきている

先週FRBが公表したレポートによると、米国の家計の資産というのは急激に減少してきていることが判明しました。

米家計の純資産は4-6月期(第2四半期)に過去最大の減少となった。急激なインフレを抑えるための積極利上げで株式相場が急落したことが背景にある。

  米連邦準備制度理事会(FRB)が9日公表したリポートによると、家計の純資産は4-6月期に6兆1000億ドル(約870兆円)、率にして4.1%減少した。1-3月期には1470億ドル減っていた。2四半期連続の減少で資産総額は143兆8000億ドルと、過去1年の最低水準になった。

  株式保有額が7兆7000億ドル減った一方、家計が保有する不動産の価値は1兆4000億ドル増えた。

  4-6月期はインフレが加速したほか、ガソリン価格が過去最高まで急上昇。米金融当局は歴史的な大幅利上げを連続で実施し、リセッション(景気後退)懸念が増大した。これを受け、この間のS&P500種株価指数は16%超下落した。

  米国民の主な資産である住宅は、市場が急減速する中でも価格は上昇傾向が続く。とはいえ、住宅ローン金利の上昇が需要を抑え、注目される全米ベースの住宅価格指数は6月に鈍化。1年超ぶりの低い伸びとなった。

  一方、家計が銀行口座などに保有する決済性預金は過去最高の4兆9000億ドル弱に達したことも、今回の統計で明らかになった。

  住宅ローンを除く消費者信用残高は4-6月期に年率8.51%増え、2001年末以来の大幅な増加率となった。

引用:Bloombergより

このように米国の家計は急速にその力を減少させてきています。米国では現金よりも株式や不動産などの投資商品で資産を保有している人が多くいます。そのため最近の株価下落による資産価格減少というのは消費に対して悪影響を与えることは間違いないでしょう。一方で不動産価格は上昇しているので問題なさそうに思えますが、株式の減少額を補うほどの上昇はありません。しかも住宅ローンの上昇により不動産市場は急激に冷え込んできています。そういう意味でも米国の個人資産の置かれている状況というのは急激に悪化しているといわざるを得ません。

このままの状況は続くわけがない

さらに決済性預金の額が増えていることや消費者信用残高が増加していることも家計の購買力の低下を如実に表しています。これらの数字が上昇しているということは過去の資産を取り崩して消費をしていることの証明であり、実質的に所得が減少しているということです。当然ながら持っている資産には限界があり、いつまでも取り崩せるというわけはありません。いつか必ず底をついてしまいます。そうなればもう消費をすることはできず、個人消費の額はさらに落ち込むことになるでしょう。そうなれば米国GDPの多くを占める個人消費が減少するため経済にとっても大打撃となることは間違いありません。今は何とか保っていますが、もう時間はあまり残されていないといっていいのでしょう。FRBはソフトランディングが可能とみていますが、そろそろ何とかしないと取り返しのつかない状況になってしまいます。ただ、この状況を正常化させるのにはかなりの難しい仕事が待っているといわざるを得ません。そのうえでウクライナ情勢や中国の減速等予想不可の不安要素はいくらでも湧いて出てきます。そう考えると米国の景気後退という確率はかなり高くなっているといわざるを得ないのかなと感じます。

まとめ

今日は米国の家計についてみてきました。米国の消費者は本当によく消費をするので経済は日本などに比べると回りやすく、それだけ成長もしやすいのだろうと思います。しかし、その消費にブレーキがかかるとなるとかなり先行きは不安定になっているといわざるを得ません。極端な悲観論の人だと10年以上も正常化にはかかるといっている人もいるくらいです。さすがにそこまではかからないと思いますが、数年程度の景気後退は覚悟しておいた方がいいのかもしれません。そのくらい今置かれている状況というのはまずいというわけです。