8月のインフレ期待は低下していると判明する

インフレ抑制に日々取り組んでいるFRBにとっては朗報かもしれないニュースがありました。8月の米消費者のインフレ期待は低下傾向にあるということです。インフレ期待が低下しているということはFRBにとっては朗報といっていいでしょう。もちろんこれをもってソフトランディングが実現するというわけではありませんが、少なくともFRBの金融政策に影響を与えるであろう指標がインフレ抑制の可能性を示したのですからまずまずといったところでしょう。そういうわけで今日は8月のインフレ期待についてみていきます。

8月のインフレ期待は低下

12日にニューヨーク連銀が発表した8月のインフレ期待は1年先と3年先ともに低下傾向にあるというものでした。

 ニューヨーク連銀が12日発表した8月の調査によると、米消費者の1年先と3年先のインフレ期待が共に低下した。ガソリン価格が急激に低下したことが背景にある。

1年先インフレ期待(中央値)は5.75%と、前月の6.2%から低下し、2021年10月以来の低水準を付けた。3年先のインフレ期待も2.8%と、前月の3.2%から低下。2020年後半以来、ほぼ2年ぶりの低水準となった。

5年先のインフレ期待は2%と7月の2.35%や年初の3%から低下し、米連邦準備理事会(FRB)の物価目標水準に一致。高インフレ期待の定着を懸念していたFRBにとって好ましい結果となった。

労働市場関係では、今後1年間に職を失う可能性は前月よりも低下し、現在の職を失った場合に新しい職を見つける確率が高いとの見方が示された。

さらに、現在の仕事を辞める可能性が高いとみている人の割合は2021年3月以来の水準に低下した。

引用:ロイターより

このように米消費者のインフレ期待は確実に低下していることがわかります。これはガソリン価格の急激な低下が大きな要因のようです。米国は車社会のため、そのエネルギー源であるガソリンは生活に欠かせません。そのためガソリン価格というのはダイレクトに生活に響いてきます。そのガソリンの価格が低下するのであれば家計にとってプラスであることは間違いなく、消費にも大きな影響があるのは間違いないでしょう。このように今後のインフレ期待が低下しているということはFRBにとって朗報といっていいと思います。このことによってすぐに金融政策が変更されるとは思えませんし、9月の利上げについてはあまり影響はないと思いますが、今後の金融政策には大きな影響を与える可能性があるかもしれません。インフレがこの期待通り低下していくのであれば当然ながらFRBはこれまでのような引き締め政策をする必要はありません。そうなってくれば今後はインフレ抑制よりも景気のことを考えた政策を実行しやすくなります。そうなれば株式にとっても追い風となるのは間違いありません。今回の調査でも労働市場は相変わらず好調であることがわかります。そういう意味でも意外と米国経済は持ちこたえる可能性もあるのかなといった印象です。

これをもって何かが決まるというわけではない

もちろん、まだ油断はできません。今回のインフレ期待低下の一番の要因である原油価格の下落はそもそも世界経済の停滞を見越した価格下落です。景気が減速すれば当然ながら原油の需要も落ち込みますから価格は下がります。米国もそうですが日本や欧州、新興国も含めて今は非常に危機的な状況にあるといっていいです。特に中国の減速というのは原油価格に大きな影響を与えているでしょう。そういう意味では今回のインフレ期待の低下というのはあまり額面通り受け止めない方がいいのだろうという印象です。いいニュースも悪いニュースもどちらも存在し、完全に上向きに変わるというのはまだまだ言えないのだろうといった感じでしょう。

まとめ

今日はインフレ期待の低下から今後の経済について考えてみました。インフレ期待の低下ということはFRBにとって朗報であることは間違いなく、今後に非常に期待を持てる結果だと思います。しかし、インフレは抑制できたとしても景気がいいというわけではないので単純に株価が上昇していくということはないのではないかと思います。少なくとも極端な悲観論は必要ないと思いますし、極端な楽観論も間違っているといったところでしょう。