米国は今後10年リターンゼロ?

米国のインフレは全く収まる気配がなく、最近は悲観論ばかりが聞こえてきます。ここ数年は米国の一人勝ちという状況が続き、米国だけを見ていればよいという時代が長く続きました。しかし、これからはそれではいけないかもしれません。そのような意見はいまではいくらでも見ることができますが、その中でも特に厳しい意見を言う人がいますので、今日はその意見についてみていきたいと思います。

常に悲観的なジェレミー・グランサム氏

評論家の中にはいつも楽観的な意見を言う人や悲観的な意見しか言わない人など非常に多種多様な人がいます。ジェレミー・グランサム氏はその中でも後者の人で、常に米国に対して厳しい意見を述べる人です。なので今回のような下落局面では比較的予想が当たったと取り上げられることが多いですが、常に悲観的なことを言っていればそれはいつかは当たるでしょうという気もしないでもないです。なのであまり真に受けない方がいいかもしれませんが、無視していいということもないと思います。いろいろな視点での意見を聞いておくということで損をするということはないでしょう。

米国が割高であることは間違いないのではないか

そのグランサム氏ですが、先日のモーニングスターのインタビューで次のようなことを述べました。

バリュー株はグロース株に比べてひどく割安で、米国は他の先進国と比べて限界まで割高だ。結果、米国以外の株式が奇妙なことにほぼ合理的な株価になっている。割高だがひどくなく、日本や英国などは実質的に割高ではない。これは異常なことだ。

引用:The Financial Pointer 今後10年米国株のリターンはゼロ:ジェレミー・グランサム より

このように述べ、米国がほかの国と比較して異常に割高になっているといっています。確かにここ数年は米国の一人勝ちが続いていたので多くの投資家の資金は米国に集まりやすくなっていたと想像はできます。そしてコロナによって極限まで市場に資金があふれる状態となり、さらなる上昇をもたらしたのです。その結果として特に米国が異常に割高となってしまったのでしょう。私もそうですが、最近は米国市場を見る時間が昔と比べて多くなっている気がします。周りにもそのような人は大勢いるし、ネットで見てもやはり米国株の話題が多くみられます。そうであれば米国に資金が集中しすぎているというのは納得いく話ですし、割高となるのも仕方ないのかもしれません。

今後10年、米国はリターンゼロとなる?

割高になってしまった米国ですが、グランサム氏は非常に悲観的に見ています。そして今後10年について以下のように予想しています。

  • 米国以外のバリュー株:「平均以下でもちゃんとしたリターンが得られる。」
  • 米国: 「リターンは全くないだろう。」

ここまで米国を批判するのもなかなかすごいなとは思います。確かに米国はしばらくは低調な推移になる可能性はあると思いますが、10年も続くというのはさすがにどうなんだろうとは思います。しかし、グランサム氏は単なる思い付きで言っているわけではありません。独自のPERモデルを持ち、それにより高確率でPERをあててきているのです。それによると現在はあまりに上方に乖離しすぎているため、これほど強気な悲観論を述べているようです。このようにきちんとした理論と証拠をもって批判されればさすがに無視はできないのではないかなとは思います。

さすがに10年は長すぎる

個人的にはさすがに10年はないだろうとは思います。もちろんグランサム氏ほどの根拠を持っているわけではありませんが、同じような専門家の中でもそこまで悲観的な意見を言う人ばかりではありません。楽観的な意見を言う人もたくさんいます。そういう意味では警戒は必要だが、あまり悲観することもないのであろうというのが正直なところです。非常に長期的な視点で見れば、米国をはじめ、世界経済はずっと成長を続けています。もちろんときどき大きな下落はありますが、長期的な視点で見れば常に右肩上がりです。過去を振り返れば今回のインフレのような重大局面はいくらでもありました。世界大戦や大恐慌のようなことも経験したうえで今の経済があるのです。ですから、超長期的に見ればそこまでは心配する必要はないでしょう。

まとめ

今日はジェレミー・グランサム氏の非常に悲観的な意見について考えてみました。個人的には賛同しませんが、それでも数年程度の停滞は十分にあり得るだろうとは思います。それだけ今のインフレというのは非常に大問題ですし、明らかにここ数年の流れからは変わってきていると思うからです。しかし、長期で見ればむしろ安く買えるチャンスともいえますから、長期投資家であれば慌てる必要もないでしょう。このまま米国が一切成長もせず、日本のようになるのであれば資金を引き揚げるということも必要でしょうが、おそらくはそうならないでしょう。よほどの悲観的な人でない限り、米国は十分有望な市場であり続けると思います。