昨年12月に開催されたFOMC議事録が公開。利上げ局面は終了し、利下げの時期に焦点が移る。

大きなサプライズを起こした昨年末のFOMCですが、その議事録が公開されました。その中で、政策金利は十分に引き上げられていることが確認され、当面その水準を維持すべきとの見解が出ていたようです。インフレも落ち着きを見せており、これ以上金利は引き上げる必要はなくなったとの発言は、今後の金融政策を占う上でも非常に重要な発言でしょう。パウエル議長の発言にもあったとおり、すでに利上げ局面は終了し、今後はいつ利下げが行われるのかにより焦点があたっていくことでしょう。

FOMC議事録公開

昨日、昨年12月に開催されたFOMCの議事録が公開され、政策金利などについてどのような議論がなされたのかがわかりました。

米連邦公開市場委員会(FOMC)が昨年12月12ー13日に開いた会合では、景気抑制的な政策スタンスを「当面」維持するのが適切との見解で一致した。一方、政策金利はピークにある可能性が高く、2024年中に利下げが開始されるとの認識が示された。1月3日に公表された議事要旨で明らかになった。

  議事要旨には「政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークか、それに近い可能性が高いとの認識を参加者は示した」と記された。

  その上で、当局者らは「インフレの持続的な鈍化が明確になるまで、当面は政策が景気抑制的なスタンスにとどまることが適切になるとの見解を再確認した」という。

  議事要旨ではインフレ面で「明確な進展」が見られるとし、参加者の間でインフレの道筋に対する楽観が強まったことが示唆された。そうした傾向が続いた場合に、FOMCは24年中に政策金利を引き下げる意向だと表明。ただ引き下げのタイミングについてはなお不透明とした。

  「提出された予測では参加者ほぼ全員が、自身のインフレ見通し改善を反映させた基本予測として、24年末までのフェデラルファンド(FF)金利誘導目標レンジ引き下げが適切になることを示唆した」と議事要旨は記した。

  FOMCは12月会合でFF金利の誘導目標を5.25-5.5%で据え置いた。据え置きは3会合連続。決定は全会一致だった。声明では追加利上げの選択肢を残したが、参加者の予測では、積極的な引き締めサイクルが終わりを迎えたことが示唆された。

  インフレをさらに鈍化させる上での供給の役割について、当局者らは会合で議論。幾人かの当局者は、サプライチェーンの改善と労働力供給の増加は「おおむね完了」したと指摘した一方、さらなる改善の可能性を見込む当局者も数人いた。

  賃金の力強い伸びが根強く続いたり、経済成長が予想外の堅調さを示した場合、インフレの当局目標に向けた進展が減速、または脅かされる恐れさえある。当局者の最新予測では24年の成長率は1.4%と大きく減速し、雇用への影響はほとんどないとの見方だ。

  「参加者は総じて、経済見通しを巡っては不確実性が高いとの認識を示した」と議事要旨は記した。

引用:bloombergより

このようにFRBでは政策金利は十分に引き上げられているとの見解となっているようです。これまではまだ引き上げの可能性について言及する声も多くありましたが、今回のFOMCを持ってその声というのはほぼなくなったのかなという感じがします。つまり、相当なタカ派から見ても現状はすでに十分に引き締まっており、これ以上の利上げは必要ないとの見解になっているということです。そういう意味では今後金利が引き上げられる可能性はかなり低くなったと言っていいでしょう。そして今後はいつ利下げが行われるのかに焦点が当たりそうです。今の所、その時期については名言はされていないようで、先行きに対しても不透明感を指摘していることから、まだまだその見通しは立っていないというところでしょう。

マーケットの期待ほどは利下げは早期に行われないでしょう

前回のFOMCではパウエル議長の予想外に強いハト派寄りの姿勢が市場の動揺を誘っていましたが、その裏ではこのような議論がなされていたということです。予想外にタカ派な発言は消えているような気がします。そういう意味でもインフレはもう十分に落ち着きを見せていると見ていいのでしょう。そして問題はいつ利下げが実行されるのかということです。マーケットではかなり早期の利下げを期待している声もありますが、この声明文を見る限り、そこまで早期の利下げというのはまだ期待できないのかなという感じです。インフレが落ち着いてきたとはいえ、非常に困難な状況であることは間違いありません。目指すソフトランディングを実現するためにもより慎重な判断をしてくると思います。そういう意味では非常に不確実性が高い現在、早期の利下げというのはやや難しいのかなという感じがします。それが実現するには相当な実体経済の落ち込みというのが必要になるでしょう。企業業績も厳しく、今年の米国経済は厳しくなるとは思いますが、大幅なリセッションや雇用の悪化というのは今のところそこまで可能性は高くないように思います。そういう意味では経済状況をそこまで気にする必要はないだろうと思いますし、そうであれば引き締めの手を急激に緩める必要もないでしょう。そういう意味で早期の利下げというのはなかなか実現しないのではないかと思います。

まとめ

今日は昨年12月のFOMC議事録について見てきました。すでに利上げ局面は終了していると言っていいのでしょう。そしてこれからはいつ利下げが行われるのかということに焦点があたっていくことでしょう。個人的にはマーケットが期待するような早期の利下げというのはやや考えにくいのかなという感じがします。現状、労働市場はそこまで悪くはないですし、雇用が悪化して経済状況が急激に落ち込むということはないのかなという感じです。そうであればより確実にインフレを抑制するためにも慎重な判断をFRBはしてくるでしょう。