ISM非製造業総合景況指数は非常に低調。景気後退は確実に迫っている。

米国経済は景気減速の懸念がさらに高まってきています。ISM非製造業総合景況指数は大きく下落をし、景気後退の足音は確実に迫ってきています。今月のFOMCでも大幅な利上げを決定した後ということもあり、景気に対する懸念というのはさらに高まったといえるでしょう。そういうわけで今日ISM非製造業総合景況指数についてみていきます。

米国経済は確実に減速している

先日発表されたISM非製造業総合景況指数は2020年5月以来の低水準となり、景気の減速がまたしても明らかとなった形です。

米供給管理協会(ISM)が発表した10月の非製造業総合景況指数は市場予想以上に低下し、2020年5月以来の低水準となった。受注と業況の指数が鈍り、経済が引き続き低調なことを示唆した。

  ISM製造業指数の生産に相当する業況の指数は55.7に低下し、5カ月ぶりの低水準。新規受注は56.5と、6月以来の低水準となった。

  一方、仕入れ価格の指数は70.7に上昇し、高止まり。1日に発表されたISM製造業総合景況指数では同指数は低下傾向にあり、対照的な内容となっている。

  この日の非製造業指数は高インフレと金利上昇、不透明な景気見通しという状況下で、サービスへの需要が弱まりつつあることを示唆した。

  雇用の指数は低下して縮小圏。前月は6カ月ぶりの高水準だった。人員を削減している業界がある一方、一部の業界では採用に依然苦慮している様子が示唆される。

  ISM非製造業景況調査委員会のアンソニー・ニエベス委員長は発表文で「能力のある人員を採用するのが引き続き困難という状況がある。経済情勢に関する不確実さを背景に、一部の企業は空きポジションを埋めるのを控えている」と指摘した。

  10月は16業種が全般的な活動拡大を報告。鉱業や農業、娯楽・レクリエーション、運輸・倉庫がけん引した。

  受注残の指数は52.2と、前月からわずかに低下し、5カ月ぶりの低水準。新規輸出受注は47.7と、1月以来の低い水準となった。前月(65.1)からの低下幅は統計開始以降で最大だった。

引用:Bloombergより

このように米国の景気は確実に減速してきています。異常なまでの物価上昇と急激な金融引き締めは経済に対して大きな影響を与え続けていることは確実です。来年の成長予想も米国は非常に低調なものであり、その予想通りに経済は進んでいきそうな感じです。

労働市場は相変わらず堅調

これだけ景気に減速が予想されると金融引き締めの手も緩まるのではないかという予想も出てきますが、相変わらず雇用の方は堅調に推移しています。先週の新規での失業保険申請件数は小幅に減少し、景気減速の中でも雇用についてはまだまだ堅調に推移していることがわかります。

米国では失業保険の新規申請が先週小幅に減少し、引き続き低水準で推移した。景気の軟化にもかかわらず、労働力の需要が強いことが示された。

  より変動の少ない失業保険申請の4週移動平均は21万8750件に小幅に減少した。

  依然として低水準の失業保険申請件数は、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が指摘した雇用市場の「過熱」を裏付ける。米金融当局はインフレ沈静化を目指して労働市場を軟化させようとしているが、パウエル議長が2日の会見で述べたところによれば、まだ「明らかな」形で実現していない。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、イライザ・ウィンガー氏は「労働力不足の中で従業員を解雇したくない雇用主の立場を、失業保険申請件数は引き続き反映している。しかし見通しはもっと暗くなっている。レイオフは近く小幅増加するとわれわれは予想する。労働市場は依然タイトだが、徐々に冷え込んでいくという見立てと整合する」と分析した。

  失業保険の継続受給者数は22日終了週に約149万件に増加し、3月以来の高水準。このペースが続けば長期失業者の数が増えている兆候となり得る。

  4日発表される10月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が20万人増加したと予想されている。失業率は3.6%への小幅上昇が見込まれている。

  季節調整前の失業保険申請件数は先週に18万5594件に増加。州別ではカリフォルニア、オレゴンでの増加が著しかった。最も減少したのはハリケーン「イアン」の被害から回復中のフロリダ州だった。

引用:Bloombergより

このように労働市場は相変わらず堅調です。雇用の安定というのは非常に良いことですが、それではインフレ抑制という目標の達成はまだまだ先といわざるを得ません。おそらくこれだけ堅調に労働市場が推移しているとなると物価についてもそれほど大きく減少するということはないでしょう。多くの識者がインフレ抑制にはある程度の雇用の悪化や景気の後退は避けられないとみています。そういう意味では雇用がこれだけ安定しているというのはいいように見えてもインフレ抑制という観点から見ると問題があるのかもしれません。

ソフトランディングは本当に可能か?

米国の景気は確実に減速してきています。そういう意味では今後は景気刺激策というのを期待したいところですが、インフレ下においてそれはなかなか期待しづらいのかなという印象です。FRBは現状では景気よりもインフレ抑制を重視しています。なので少々の景気や雇用の悪化が起きたとしてもその手を緩めるということはないでしょう。もちろんいつまでも急激な引き締めが続くということはないと思います。そろそろそのペースが緩むという可能性も十分にあるので景気が悪化してきている現在、それが可能であれば景気にとってもよいニュースとなることもあるでしょう。しかし、事態は非常に不安定なバランスの上に立っていることは確実であり、一歩間違えばインフレも高止まりし、景気も大幅に減速するというような事態に陥ることも十分にあり得るのだろうという感じです。

まとめ

今日はISM非製造業総合景況指数についてみてきました。米国経済は確実に減速してきています。そういう意味では可能であれば景気刺激策を打ちたいところでしょうが、インフレを考えるとそれもままならないというところだと思います。政策金利と十分に上げきった後まで景気が持ちこたえてくれるのであれば多少は金融政策の自由も出てくるとは思いますが、現状そこまでもってくれるのかというと何とも言えないといったところでしょう。仮にうまくいったとしても景気をそれほど減速させることもなくインフレを抑制するというのはかなり困難な作業であることには変わりがありません。そうなることを願ってはいますが、過度な期待はしない方がいいでしょう。