10月の雇用統計は良好ではあったが、若干悪化の気配も出てきた

米国の雇用環境は依然堅調なようです。10月の雇用統計の値は市場予想よりも上回る結果となり、改めて米国の労働市場は堅調であることが確認できました。しかし、失業率は上昇しているなど雇用環境も徐々に弱含んでは来ているのでこの辺をどう見るかによって今後の行動は変わってきそうです。というわけで今日は10月の雇用統計についてみていきたいと思います。

10月の雇用統計は良好な結果だが弱いものも出てきた

米労働省より発表された10月の雇用統計は市場予想を上回る結果となりました。

米労働市場では10月、雇用者数が市場予想を上回る増加となったほか、平均時給は前月比ベースで伸びが加速した。一方で失業率は上昇し、高インフレの抑制を目指した引き締め策をどの程度続けるか金融当局が議論を続ける中、強弱入り交じった内容となった。

 10月は比較的幅広い業種で雇用が増加。特に医療やプロフェッショナル・ビジネスサービス、製造業などで伸びが目立った。

  平均時給は前月比0.4%増と、前月(0.3%増)から伸びが加速。市場予想は0.3%増だった。前年同月比では4.7%増加した。

  今回の雇用統計は、速いペースでの利上げや景気見通し悪化にもかかわらず労働者に対する需要が引き続き強いことを示唆している。レイオフは増えつつあるものの歴史的に見ればなお低水準で、極めて高水準の求人件数を背景とした人材獲得競争が賃金を押し上げている。

  こうした状況は、経済のエンジンである個人消費を支える上でプラスに働く一方、インフレ沈静化を目指す金融当局の取り組みを一層困難にさせ、この先何カ月にもわたり断固とした引き締めを継続することが示唆される。

  米金融当局者らは、インフレ目標達成のためには労働市場での需給バランスを改善させる必要があると繰り返し強調している。米連邦公開市場委員会(FOMC)は2日、政策金利の0.75ポイント引き上げを決定。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は記者会見で、労働市場の状況について、「明白な」形ではまだ軟化していないと述べた。

  ただ雇用の増加ペースは鈍化しつつある。10月の雇用者数の増加幅は市場予想を上回ったものの、伸びは前月比減少となった2020年12月以降で最小だった。今後を見通すと、1980年代以降で最も積極的な金融当局の引き締め策が雇用に重しとなりそうだ。パウエル議長は労働市場への悪影響について、明白な失業増加ではなく、主に求人件数の減少という形で表れることへの期待を表明している。

  ブラックロックのシニアポートフォリオマネジャー、ジェフリー・ローゼンバーグ氏は、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで「金融当局が年内の引き締めに関して起きてほしいと考えている状況のわずか一部をわれわれは目にしつつあるが、しばらく時間がかかるだろう」と述べた。

  ブルームバーグ・エコノミクスのアナ・ウォン、アンドルー・ハスビー、イライザ・ウィンガーの3氏はリポートで、「10月の雇用統計は労働市場についてまちまちなシグナルを送っている。雇用の伸びは力強かった一方で、失業率が大きく上昇したためだ。データのノイズを整理した上でのわれわれの結論は、労働市場はなお非常にタイトで、失業率が中立水準付近になるにはまだ大きな調整が必要ということだ」と指摘した。

  10月の労働参加率は62.2%と、前月(62.3%)から若干低下。25-54歳の年齢層では、労働参加率は3カ月ぶり低水準に下げた。

引用:Bloombergより

このように10月の雇用統計は相変わらずの好調ぶりを示しました。しかし、そのペースは確実に鈍化してきており、FRBによる引き締めの効果が徐々に表れてきているとみていいのでしょう。内容としては強弱入り混じった結果であり、なかなか判断をするのが難しいのかなといった印象です。

為替市場は今後の引き締め緩和を織り込みだした

では市場がどのように判断したのかというと為替市場を見ると一目瞭然です。雇用統計の発表後、ドル円は一気にドル安へと進み、この結果から市場は引き締めがいったん緩む可能性を見ていることがわかります。

4日の外国為替市場で円相場がドルに対し一時1.1%上昇。10月の米雇用統計後にドル売りが強まっている。

  円相場はニューヨーク時間午前10時38分現在、前日比1.1%高の146円63銭。一時146円56銭まで上昇した。

引用:Bloombergより

このように為替市場は今後の金融引き締めが緩む方向へと舵を切っています。これが正しいのかどうかはわかりません。個人的にはこの判断は時期尚早ではないかと思います。パウエル議長をはじめ、多くのFRB関係者はインフレ抑制に対して断固たる処置をとると非常に強い決意を見せてきています。それが今回の雇用統計で揺らぐ可能性というのはそんなに高くないのではないかと思っています。もちろん雇用統計を受けてのパウエル議長がどのような見解を持っているのかがわからないので何とも言えませんが、ジャクソンホール以降の強い決意を見てみると、そんなに簡単に引き締めをやめるとも思えません。それにこれまで市場は安易な楽観論が広まっては消えるを繰り返してきました。そういう意味では今度の為替の動きというのも一時的なものになるのではないかと感じています。

まとめ

今日は10月の雇用統計についてみてきました。相変わらず米国の雇用環境は良好といっていいでしょう。しかし、確実に引き締めの効果は出てきており、その転換点が今まさに来ているのかもしれません。そんな強弱入り混じった結果だったように思います。また、市場の反応についてはあまり真剣に見なくていいのかなと思います。個人的には若干楽観的過ぎるような気はしています。