6月の労働市場は雇用が鈍化するも賃金は依然強い。

米国の労働市場はいくらか減速をしてきているようです。昨日発表された6月の雇用統計は雇用者数が予想よりも伸びていないことが確認できました。ただ、賃金は依然として堅調な伸びを示しており、額面通り安心できるものかはなんとも言えないという感じがします。

雇用者数は減少も賃金は強い

昨日発表された雇用統計では労働市場が一定程度冷え込んできていることが確認できました。

米国では6月、雇用者数の伸びが市場予想を下回った。労働市場が徐々に減速しつつあることが示された。ただ、賃金は堅調な伸びが続いている。

  今回の雇用統計は、高金利と数カ月にわたる消費低迷で景気見通しに対する懸念が生じる中、労働市場が幾分か勢いを失いつつあることを示唆している。ただ労働市場はなお十分健全で、賃金の伸びも底堅く、米連邦公開市場委員会(FOMC)は7月会合で利上げを再開する可能性が高そうだ。

  スティーフル・ファイナンシャルのチーフエコノミスト、リンゼー・ピエグザ氏は「引き締まった労働市場環境が幾分か緩む必要がある。そうなれば金融当局は賃金が落ち着き始めるとの確信を強められる」と指摘した。

  6月の雇用の伸びは医療や政府、建設といった分野で特に目立った。一方、小売りや運輸・倉庫では雇用が減少した。5月と4月に関しては、雇用者数の増加幅が2カ月合わせて11万人下方修正された。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、スチュアート・ポール、イライザ・ウィンガー氏は「6月の雇用減速とその前の2カ月の下方修正でも、金融当局を安心させるには不十分だ。労働需給のバランスは改善しつつあるが、金融当局がスーパーコアのサービス価格上昇を重視していることを踏まえると、前月比で賃金と労働時間が増加したことは、当局が抑制する必要のあるインフレの勢いを強める」と分析した。

  平均時給は3カ月連続で前月比0.4%増。前年同月比では4.4%増加した。週平均労働時間は若干伸びた。

  労働参加率は62.6%と、前月比変わらず。25-54歳の年齢層では21年ぶり高水準に上昇した。

  インディード・ハイアリング・ラブの調査ディレクター、ニック・バンカー氏は「労働市場は減速しているが、強い状況からの減速だ」とリポートで指摘。「保証はできないが、米労働市場は引き続き、ペースは落ちるがより持続可能な経済成長への方向を指している」と分析した。

  また経済的な理由からパートタイムでの仕事を余儀なくされている労働者の数は2020年4月以来の大幅な増加となり、これも労働需要鈍化の兆候を示している。「U6」と呼ばれる不完全雇用率は昨年8月以来の高水準に上昇した。U6にはフルタイムでの雇用を望みながらもパートタイムの職に就いている労働者や、仕事に就きたいとは考えているものの積極的に職探しをしていない人が含まれる。

引用:bloombergより

このように労働市場はいくらか落ち着いてきているようです。先日発表されたADPのデータでは未だ労働市場は過熱気味だったことを考えると相反する結果となっています。これをどう読むのかというのは正直なんとも言えませんが、非常に難しい状況であるということは言えるでしょう。依然として賃金も上昇傾向が続いており、FRBが安心して金融政策を変更できるというほどではないような気がします。

マーケットもまだ判断しかねているような感じ

マーケットも同様な見方をしているようで、一時会が優勢だった債券市場でその勢いが続くことはありませんでした。

7日午前の米国債市場では、6月の雇用統計を受けていったんは買いが優勢となったが、長期債を中心にすぐに失速。10年債と30年債の利回りは年初来の高水準をつけた。

  2年債利回りは非農業部門雇用者数がおよそ1年ぶりに市場予想に届かなかったことに反応し、一時12ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。前日は米追加利上げ観測の高まりで、年限2~5年の国債利回りが2007年以来の水準に跳ね上がっていた。

  ところが、雇用統計で賃金が予想以上に伸びたことが注目され、長期債を中心に流れが反転。10年債利回りは4.09%、30年債利回りは4.06%に達した。短期債利回りは当初の低下分を失い、ほぼ変わらずとなっている。

  シカゴ大学のランドール・クロズナー教授はブルームバーグテレビジョンに対し「賃金の伸びは米金融当局が満足するような水準をなお上回っている」と指摘。「そのため(追加利上げを)進める必要があると話すだろう」と述べた。

引用:bloombergより

このようにマーケットも雇用者数の減少を歓迎する動きもありましたが、賃金の強さを見てそこまで確信を持てなかったようです。そういう意味ではこの結果を持ってまだ今後の金融政策がどのようになるのかということはなんとも言えないのかなという感じがします。

利上げはまだ続くだろう

ADPと雇用統計のデータがずれるということは時々あるのでそこまで意外ではないけれども、やはり判断に困るなという感じがします。ただ、賃金が強いことを考えればまだまだ労働市場は力強いという判断を変えるわけには行かないような気がします。そしてややタカ派に傾いているFRBの利上げ判断を変えるのにも不十分でしょう。そういう意味でも7月以降も利上げは続くと見られますし、予想外の結果になる可能性も十分考慮すべきだと思います。

まとめ

今日は6月の雇用統計の結果について見てきました。労働市場は落ち着きを見せ始めていますが、まだインフレが確実に落ち着いてきていると言うには不十分といったところでしょう。もちろん今後の消費者物価などの他の経済指標次第のところもありますが、まだまだ厳しい金融政策は続くものと見られます。