労働市場は引き続き堅調。インフレは依然として強さを見せ続けている。

米国の労働市場は依然として堅調です。先日発表されたADPによる民間雇用者数は大幅な増加となり、労働市場は今もなお力強さを維持していることが確認されました。インフレが健在であるため、金融政策も厳しく推移する見込みですが、それをさらに後押しするような結果であり、FRBがさらなるタカ派へと進む可能性もあるのかなという印象です。

労働市場は引き続き堅調

昨日発表されたADPによる民間雇用者数は非常に大幅な増加となりました。

米国の民間企業は6月に50万人近く雇用を増やした。この1年余りで最速の増加ペースで、労働市場の力強さが続いていることが鮮明になった。ADPリサーチ・インスティテュートがスタンフォード・デジタル・エコノミー・ラボとの協力でまとめた統計で6日、明らかになった。

  雇用は建設や貿易・運輸、娯楽・ホスピタリティーといった比較的広い範囲で増加した。地域別では南部を除いた全地域で増加。特に従業員250人未満の企業で大幅に増えた。

  一方で賃金の伸びは減速した。同じ職にとどまった労働者の6月賃金は、前年同月比で6.4%増加。転職した労働者の場合、年間報酬の増加率は中央値で11.2%で、いずれも2021年以来の鈍いペースだった。

  ADPのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は発表文で「消費者と対面するサービス業では6月に雇用が力強く伸び、予想を上回る雇用増の流れと整合する動きだった」と指摘。「同時にこれらの業界では賃金の伸びが鈍化を続けており、雇用はサイクル終盤の急増局面を終えて頭打ちになっている可能性が高い」と分析した。

  統計を受けて金融市場では米国債利回りが急伸。株式指数先物は軟調なままだった。

  同日発表された別の統計では、先週の米新規失業保険申請件数が前週比1万2000件増加し、24万8000件となった。失業保険の継続受給者数は6月24日終了週に1万3000人減の172万人。

  広範囲に及ぶ雇用増に、比較的低い失業保険申請件数が重なり、米雇用市場の底堅さが浮き彫りになった。テクノロジーや金融など弱い部分も散見されるが、労働市場の全体像は依然として強い。

  ADP統計によると、製造業や情報、金融など幾つかのセクターでは雇用が減らされた。再就職あっせん会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスのリポートによれば、6月に発表された解雇者数は前月からほぼ半減した。前年比はなお25%多い。

  7日には米労働統計局が6月の雇用統計を発表する。この統計には政府雇用者も含まれ、労働市場の先行きについてより深い洞察を得ることができる。非農業部門雇用者数は22万5000人増が予想されている。賃金の伸びは前年比でいくらか鈍化したとみられている。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は非常に堅調です。厳しい引き締め政策や金融不安などものともしない力強さであり、米国経済を支える力となっています。雇用が強いということは労働者にとって非常に良いことであり、経済にとっても悪いことではないと思いますが、インフレが高く推移している現在においてはやや頭の痛い問題となってきます。雇用が堅調であれば消費者の消費意欲というのも強くなっていくことでしょう。そうなれば当然物価の上昇圧力となって価格を押し上げる可能性が出てきます。そうなればただでさえ高いインフレがいつまで立っても落ち着かず、経済を急減速させる可能性が出てきます。それを抑制するためにFRBは金利を引き上げ続けているのですが、その努力はまだ実を結んでいないということになります。そのため今後も厳しい金融政策が実行される可能性があると見たほうがいいのかもしれません。

引き締めの必要性を強調

事実、さらなる厳しい金融政策の必要性についてFRB内部からもすでに出てきています。

米ダラス連銀のローガン総裁は6日、有意なディスインフレを促して物価上昇率を金融当局の目標に戻すには、さらなる利上げが必要になる公算が大きいとの見解を示した。

  同総裁はニューヨークで行われたセントラルバンク・リサーチ・アソシエーション(CEBRA)年次会合で、「インフレ率が持続可能かつ適時な形で目標に戻るかどうかについて、依然として非常に懸念している」と発言。「物価安定と最大雇用という連邦公開市場委員会(FOMC)のゴールを達成するためには、より景気抑制的な金融政策が必要になると考える」と述べた。発言は講演原稿に基づく。

  6月FOMC会合後では初の公での発言機会となった同講演でローガン総裁は「6月の金融政策決定会合で出された全体的なコミュニケーションのパッケージが金融市場に強いシグナルを送り、金融環境を有意に引き締めることを期待していた」と語った。

引用:bloombergより

このようにローガン総裁はインフレ抑制のためにさらなる金融引き締めの必要性を訴えています。先日明らかになったように前回のFOMCの時点でさえさらなる引き締めを求める声が上がっていました。その後に発表された経済指標は今回のも含めて非常に強いものが多く発表されています。そういう意味ではこのようにさらなる引き締めの必要性を考える委員の数が更に増えている可能性は十分にありえることでしょう。そういう意味では7月以降も予想以上に強い引き締め政策が実行される可能性も考えておく必要があると思われます。

まとめ

今日は引き続き強い労働市場について見てきました。なかなか米国の労働市場が冷えていきません。あまり急激に冷え込んではそれこそ経済に大ダメージを与えることになるため絶対に回避しなければなりません。かと言って身長になりすぎても今回のようにいつまで立ってもインフレが落ち着かずにズルズルと引き伸ばされるということにもなりかねません。そういう意味では非常に難しい舵取りを今後も求められ続けるのだろうという感じです。そしてソフトランディングができる可能性というものそこまで高くないのだろうという感じがします。