12月の民間雇用者数は非常に堅調。労働市場は強さを維持している。

米国の労働市場は引き続き堅調さを保っています。昨日発表されたADPによる民間雇用者数は市場予想を上回る結果となり、インフレが落ち着く中にあっても労働市場が堅調に推移していることが確認されました。労働市場が強いということでインフレはしばらく続きそうですが、雇用環境悪化による経済失速の懸念は少ないと見ていいでしょう。

12月の民間雇用者数は予想以上に強い

昨日発表された昨年12月の民間雇用者数は市場予想を上回る結果となりました。

米企業の採用活動は昨年12月に活発化した。労働市場の熱気が冷めつつある中でも依然、労働力が求められていることが示唆された。賃金の伸びは引き続き鈍化した。ADPリサーチ・インスティテュートとスタンフォード・デジタル・エコノミー・ラボが共同でデータをまとめた。 

  娯楽・ホスピタリティーや教育・医療サービスといったサービスセクターで特に増加。製造業は引き続き減少した。地域別では西部と北東部で増加した一方、南部と中西部では減少した。

  データはコロナ禍後の雇用市場が堅調を維持していることを浮き彫りにした。労働力需要に軟化の兆候がいくらか見られるものの、企業は依然健全なペースで人員を雇用しており、失業率は低水準を維持、賃金の伸びは引き続きインフレ率を上回っている。

  賃金の伸びがさらに減速したことがデータに示された。同じ職にとどまった人の賃金は中央値で前年同月比5.4%、転職した人の賃金は8%それぞれ上昇。いずれも2021年以来の低い伸びだった。

  ADPのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は「労働市場はパンデミック(世界的大流行)前の雇用にかなり近い状態に戻りつつある」と発表文で指摘。「最近のインフレは賃金によるものではない。賃金の増加ペースが落ち着いた現在、賃金・物価スパイラルのリスクは消失したも同然だ」と解説した。

  労働市場の動向、特に賃金の増加ペースは連邦公開市場委員会(FOMC)が利下げの開始時期を判断する重要材料となる。3日に発表された12月のFOMC議事要旨は、インフレ面で「明確な進展」が見られるとし、参加者の間でインフレの道筋に対する楽観が強まったことが示唆された。

  5日に発表される12月の雇用統計では、民間部門雇用者数の約13万人増が予想されている。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は引き続き堅調です。インフレが高く推移し、金利も急激に引き上げられる中にあっても労働市場は非常に力強く推移してきました。その労働市場が昨年末にかけてやや勢いを失いかけましたが、思ったよりも悪化せずに保っている印象です。雇用が安定しているということで、FRBは思い切った金融政策も打ち出しやすいでしょう。引き続きインフレとの戦いは継続すると思われますが、これだけ強い労働市場というのは経済を支える重要なファクターとなると思われます。そういう意味では景気失速のリスクは今のところ少ないと言っていいのかなと思います。

金融緩和は市場が期待するほど早くはないだろう

相変わらずの堅調な労働市場は引き続きFRBや市場関係者の安心材料となるのは間違いないでしょう。労働市場が堅調であれば消費も強くはならないまでも大きく失速するという懸念はなさそうです。そういう意味で景気も予想よりも交代しない可能性が高いと言っていいのかなと思います。しかし、労働市場た堅調であればそれだけインフレも長く居座る可能性も高いので、より厳しい金融政策も継続されるのではないかと思います。FRBとしてはなんとしてもインフレを抑制したいはずです。しかし、経済を必要に悪化させることも容認はできませんから、インフレの悪化と経済の失速という2つのことが同時に起きるという事態が最も望まない未来ということだと思います。しかし、現状、経済は強い雇用を背景にそこまで失速するとは思えませんから、インフレ抑制に集中して進めるのかなという印象です。それだけに安易に金融政策を緩和するという選択は取らないのではないかとも思います。最近のパウエル議長の発言を含め、FRBはかなり金融緩和に対する意識を強く持ってきているような気はします。それだけに市場でも早期の緩和期待というものが大きくなってきていますが、やはり強い雇用などを考えるとそこまで早い段階での緩和というのはやや期待し過ぎのような気がしています。

まとめ

今日は12月の民間雇用者数について見てきました。米国の労働市場は引き続き堅調です。一時期ほどではありませんが、強さを堅持しており、急激な経済失速のリスクはかなり低いのかなという印象です。そういう意味でもFRBはよりインフレ抑制に軸足をおいた政策を実行してくると思われ、市場が期待するような早期の緩和というのはやはり難しいのかなという印象です。