10月の雇用統計は市場予想を大きく下回る結果となる

ついに米国の労働市場にも変化の兆しが見えてきたのかもしれません。10月の雇用統計は市場予想を大きく下回る結果となり、労働市場が鈍化しつつあることを示しました。労働市場の悪化は労働者にとっては非常に厳しいものですが、インフレ抑制を目指すFRBにとっては朗報となることでしょう。

10月の雇用統計は予想を大きく下回る

昨日発表された10月の雇用統計は市場予想を下回る結果となり、労働市場が強さを失いつつあることを示しています。

10月の米雇用者数は予想以上に伸びが鈍化し、失業率はほぼ2年ぶりの高水準となった。労働者に対する雇用主の旺盛な需要が冷え込みつつある兆候を示した。

  賃金の伸びも縮小した。

  過去1年の労働供給の改善と労働需要の緩和により、雇用市場は緩やかに正常化してきたが、今回の統計はやや亀裂が生じ始めていることを示唆している。

  最も顕著なのが失業率の上昇で、これまで雇用主が総じて回避してきたレイオフが増加していることがうかがえる。家計調査によると、職を失った、または臨時雇用を終えた人が20万人余り増加した。

  業種別ではヘルスケアと社会扶助、政府部門が雇用の伸びをけん引したが、その他の業種は低い伸びまたはマイナスとなった。製造業の雇用は3万5000人減少したが、これは主に全米自動車労組(UAW)のストライキを反映している。だが、労使協議はその後、暫定合意に至っているため、打撃は一時的なものになるだろう。

  個人消費と経済全般を支える雇用市場の軟化が続けば、米経済がリセッション(景気後退)に陥ることなく、高金利による逆風を乗り切れるのかとの懸念が高まりそうだ。

  インディード・ハイヤリング・ラボの経済調査責任者、ニック・バンカー氏は「今回の雇用統計は、ソフトランディング(軟着陸)に向けた労働市場の緩やかな緩和とも、より厄介な景気悪化の始まりという可能性とも整合する」と指摘した。

  労働者への需要後退は賃金の伸びを下押ししている。平均時給は前月比0.2%上昇。前年同月比では4.1%上昇と、2021年半ば以降で最も小幅な伸びとなった。労働力人口の大半を占める非管理職の賃金は2カ月連続で0.3%増となった。

  最近の傾向とは異なり、労働参加率(就業者および求職者の合計である労働力人口の生産年齢人口に占める割合)は労働供給の減少を受けて62.7%に低下した。25-54歳の労働参加率は男性が主導する格好で、半年ぶりの水準に落ち込んだ。

  アナ・ウォン氏ら、ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のエコノミスト陣は「10月の雇用統計は、求職者にとっては一様に失望を誘うものだが、米金融当局にとってはインフレ率を目標の2%に戻す上で心強い内容となった。最大の注目点は失業率の上昇であり、これは非農業部門雇用者数の著しい伸び鈍化と過去分の大幅な下方修正を上回るものだ」と指摘している。

  雇用者数の伸び縮小に加え、賃金の上昇ペース鈍化と労働時間の減少が重なり、労働市場の健全性を示す広範な指標である労働所得は停滞の水準を示した。さらに、手取り賃金に関する指標は2022年初め以降で最大の減少となった。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場はこれまでの強さを示すことができていません。ようやくという感じもしますが、労働市場にも軟化の兆しが見えてきました。これまではいくら引き締めても労働市場は弱くならず、雇用が維持されてきました。それは労働者にとってはいいことかもしれませんが、インフレ抑制を目指すFRBにとっては厄介な問題であったと言っていいでしょう。しかし、ここへ来てようやく雇用に強さが失われ始め、過熱感を抑えることができるようになってきたのかもしれません。

ソフトランディングかリセッションか

FRBにとっては今回のことは間違いなく朗報と言っていいのだろうと思います。ようやくインフレが落ち着きを見せ始め、それが労働市場にも形となって現れてきたということで、仕事の結果が出てきたというところでしょう。そういう意味でFOMCでの利上げの停止というのは非常にタイミングが良かったのかなという印象です。この雇用統計の結果というのは利上げの終了という目標にようやく到達したことを表すものとなるのかもしれません。ただ、このままうまくソフトランディングへ向かうかどうかはまだ慎重に判断しなければならないでしょう。落ち着いてきたとはいえ、インフレはまだまだ高水準です。しばらくは金利は高く据え置かれることになるでしょう。それまで雇用や消費などが持ちこたえてくれる保証はどこにもないということを覚えておく必要があります。今回のことがソフトランディングへのきっかけとなるのか、もしくはリセッションの入口だったのかはあとからわかることになるでしょう。

まとめ

今日は10月の雇用統計について見てきました。ようやく労働市場にも落ち着きが見え始め、インフレ抑制もさらなるステップへと進んだ感があります。しかし、これがソフトランディングへ続くのか、リセッションへと落ちていくのかはまだわかりません。そういう意味では慎重に事を運ぶべきだろうと思います。