雇用統計の結果を受け、マーケットはいつものように楽観的になる

弱い雇用統計の結果を受け、市場ではすでに利下げがいつ行われるのかということに関心が移っています。米国経済の現状などを考えればいつかは利下げが行われることになるでしょう。しかし、それにはインフレが確実に減速するという事実が必要になると思われます。そういう意味ではやや先走った思考のように思えますし、現実にFRB関係者の間ではまだまだ慎重論が多く存在します。

利下げの時期が早まる可能性

先日の雇用統計の結果を受け、マーケットでは利下げの時期についての議論が活発となっています。

予想より弱い米雇用統計を受けて、トレーダーらは利下げ開始予想を従来の7月から6月に前倒しした。

  金利スワップ市場は現在、6月までの30ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下を見込んでいる。雇用統計が発表される前は23bpの低下が織り込まれていた。

引用:bloombergより

このように弱い雇用統計の結果を受け、従来よりも早い時期の利下げを予想する声が多くなってきました。米国経済は今のところ強い労働市場等の影響もあり、なんとか保てていますが、労働市場の減速の可能性が出てきたこともあり、かなり不透明な状況になっています。そういう意味で市場では利上げ局面の終了と利下げの開始が早まるのではないかという期待が出てきています。

FRBは依然として慎重

しかし、市場の基体とは裏腹に、金融当局は非常に慎重です。

米リッチモンド連銀のバーキン総裁は、10月雇用者数の伸び減速は労働市場の正常化を示す歓迎すべき兆候だが、追加利上げの是非に関する自身の見解はどちらかと言えばインフレ統計に左右されるとの考えを示した。

  バーキン氏は3日の経済専門局CNBCとのインタビューで、「この日発表されたのは、雇用市場の漸進的な緩和を示すデータだ」と発言。「追加利上げを望まない人々が望むような内容だと考える。インフレがどうなるかを見極める」と述べた。

  労働市場の「バランスは改善」しつつあると、同氏は指摘。「供給が改善してきている半面、特に専門職の分野などで需要が減少しつつある」と話した。

  米連邦公開市場委員会(FOMC)の12月会合については、あらかじめ判断することはしないとした。

引用:bloombergより

このようにリッチモンド連銀のバーキン総裁は今回の結果を歓迎しながらも利上げの可能性について否定しませんでした。このように今回の結果を歓迎しながらも利上げの可能性について否定しないという発言は雇用統計のあとにFRB内部から多く上がってきています。そういう意味でもFRBはまだ利上げの可能性を排除していないことは事実でしょう。もちろん、アトランタ連銀総裁のようなハト派の人もいますし、どうなるかはわかりませんが、少なくとも今回の雇用統計の結果で全てが決まったということだけはないように思います。

いつもの楽観論

いつものように市場は結論を急ぎすぎていると言っていいでしょう。もちろんその可能性も十分にあるとは思いますし、FRBもその可能性は否定しないと思います。しかし、少なくとも雇用統計一回だけを持ってその結論を出すというのはやや早いのかなという感じはします。最近は雇用統計の数値を始め、やや弱含んだ結果が多くなってきて入るのでそのような結論に至る気持ちはわかりますが、まだ決めつけるのは早いでしょう。その可能性が従来よりも大きくなったとは思いますが、利上げの可能性も全くなくなったわけではないことは理解しておくべきです。

まとめ

今日は雇用統計の結果を受けての市場の反応や金融当局者の反応を見てきました。市場はいつものように楽観的に動いています。しかし、当局はそこまで楽観的ではなく、慎重に物事を判断しようとしています。そういう意味では今後大きな市場との齟齬が生まれ、株価が大きく動くということもあり得るでしょう。もちろん投資家としてはマーケットの期待通りに利下げが行われ、景気が回復していくことを望んではいますが、現実を無視した楽観論というのはやめるべきです。