12月の雇用統計も非常に堅調。早期の金融緩和期待はかなり後退。

米国の労働市場の堅調さは雇用統計でも確認することとなりました。昨日発表された12月の雇用統計の結果は市場予想を上回る結果となり、先日のADPによる民間雇用者数の結果と共に米国の労働市場が引き続き堅調であることが確認されています。インフレの鈍化と共に景気の減速も懸念されてきていますが、雇用の悪化も伴い、大幅なリセッションのリスクは今のところ低いと言っていいのでしょう。

雇用統計の結果も市場予想を上回る

昨日発表された昨年12月の雇用統計の結果は以下のようになりました。

昨年12月の米雇用統計では雇用者数の伸びが加速し、賃金の上昇率は市場予想を上回った。米利下げ時期が迫っているとの観測が後退した。

  雇用者数が特に増加した部門は医療や政府、建設、娯楽・ホスピタリティーなどだった。雇用が増えた業種と減少した業種との比率を示す雇用DIは上昇した。

  米政策金利は昨年にかけて約20年ぶりの高水準に引き上げられたが、堅調な労働市場は安定した消費支出と健全な経済成長の原動力となっている。

  金利スワップ市場では、雇用統計の発表を受けて一時、3月利下げの確率がほぼ半々に低下した。

  米金融当局は物価上昇が経済全般にわたって鈍化している一段の証拠を得るまで、政策金利を高水準に維持する姿勢だ。労働力の需要と雇用主による賃上げ意欲は、当局のそうした決意を固めさせる可能性が高い。 

  チャールズ・シュワブのチーフ債券ストラテジスト、キャシー・ジョーンズ氏は「雇用市場は底堅いが、徐々に冷えつつあるというのが全般的な姿だ」と指摘。「ただ平均時給の伸びを受け、米金融当局が市場の織り込みより長く政策金利を据え置く可能性がある」と述べた。

  雇用者数の伸びは健全なペースで加速したが、12月雇用統計には留意点もある。

  労働参加率が0.3ポイント低下の62.5%と、約3年ぶりの大幅低下となった。比較的若い世代と年配者で特に下げ、25歳から54歳の労働参加率は0.1ポイント低下となった。

  失業者が仕事を探す期間は長期化し、フルタイム雇用者の数は2020年4月以来の大幅減となった。週平均労働時間は34.3時間と、前月(34.4時間)から減少した。 

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、アナ・ウォン氏らは「12月雇用統計で良いニュースは、非農業部門雇用者数が驚くほど増加したことだけだ。他の項目は、労働市場が急速に冷え込みつつある兆しであふれている。家計調査に基づく雇用者数は2020年4月以来の大きさで減少した。失業期間は長期化し、労働参加率は低下、経済的理由でパートタイムの仕事に就いている人が増え、労働時間は減少した」と分析した。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は今なお健在です。インフレや金融引き締めの長期化により、さすがの労働市場も一時期の強さはなくなっては来ていますが、景気失速を思わせるような減速感を見せることはありません。堅調な労働市場はFRB関係者にとっては非常に心強いものとなるでしょう。金融政策を引き締めようとも強さを見せ続けてきた労働市場はFRBにとって金融政策の柔軟性を可能とさせる重要なことであろうと思います。そういう意味では今後の金融政策についても景気減速を意識他緩和政策を焦る必要はなくなるのだろうと思います。

市場の金融緩和期待は大きく後退

労働市場は今なお健在であることが確認されたということで、今後の金融政策についても見方がやや変化が出てきたように思います。マーケットでは早期の緩和期待というものが大きくなっていましたが、今回の結果を受けてやや後退したように思います。労働市場が堅調であれば景気動向をあまり気にすることなくインフレに対して積極的に関与していくことができるでしょう。であればインフレ収束に向けて引き続き強めな政策を打ち出しやすくなったのかなという感じです。景気が大きく減速する可能性があるのであれば、インフレ抑制と共に景気の下支えも意識した金融政策も意識されるところですが、これだけ労働市場が堅調であればその必要もないでしょう。そういう意味では急いで緩和へ金融政策を移行する必要性がなくなり、よりインフレが着実に鈍化していることを確認してから緩和へと移行できるのではないかという感じがします。

まとめ

きょうは12月の雇用統計の結果について見てきました。引き続き労働市場は堅調です。それ故に金融緩和への以降はより後ろへと移行していくのだろうと思います。マーケットが期待する早期の緩和というのはやや厳しくなったのかなと思います。そういう意味では金融緩和へと移行するのは早くても今年の半ばくらいになるでしょうし、年後半まで行われないというのも、今の強い労働市場を見るとありえるのだろうと思います。