トランプ大統領が誕生したときのリスクは小さくはないのだろう

今年は日本も海外も非常に重要なイベントが目白押しであり、緊張感を持ったマーケットになりそうな感じがしますが、その中でも最も大きなイベントの一つが米大統領選挙でしょう。世界で一番の経済大国であり、軍事大国でもある最も世界に与える影響の大きな国のトップが誰になるかというのは日本にとっても世界にとっても非常に大きな影響を与えるのは間違いないところです。特に我々投資家にとっては経済政策がどのように変わっていくのかが気になるところですが、今の所なんとも言えない状況です。特に有力な候補の一人である、トランプ氏が大統領になった場合の経済政策については今から大きな反響を生んでおり、あらゆるところから懸念の声が上がっています。

トランプ大統領のリスク

米国の大統領候補の一人であるドナルド・トランプ氏について、サマーズ元財務長官がそのリスクについて指摘していました。

サマーズ元米財務長官は経済界のリーダーたちに対し、バイデン政権の進歩的な政策の行き過ぎに対する懸念を脇に置き、ドナルド・トランプ氏が大統領に返り咲くことの歴史的な危険性を認識するよう呼びかけた。

  サマーズ氏はブルームバーグテレビジョンで、「これは恐らく第2次世界大戦後で最も重大な大統領選挙だ」と発言。11月にトランプ氏が勝利した場合、脅かされることになるのは、「米国内で契約を締結し、執行する能力を含む基本的な正義と権利に関する見通し」と、企業や大学、その他の機関が「自律的に機能する」能力だと述べた。ハーバード大学教授の同氏はブルームバーグテレビジョンに定期的に出演する。

  トランプ大統領の1期目は金融市場こそ好調に推移したが、ポピュリスト的指導者の在任期間が長くなるにつれて状況が変化することを歴史が示しているとサマーズ氏は指摘。イタリアのムッソリーニ政権の最初の数年間も、アルゼンチンのペロン政権も市場は好反応を示したが、どちらも「大暴落」で終わったとしている。

  サマーズ氏は「バイデン政権の過度に進歩的で、過度に政府介入主義的な政策に対する懸念は多くのケースで理解できる。しかし、それは米国とその経済界が私たちの生涯を通じて営んできた枠組みを根底から覆すこととはまったく異なる」と語った。

  サマーズ氏は2017-21年のトランプ政権と、今年の選挙で勝利した場合のトランプ氏の違いを説明。前政権のアドバイザーはムニューシン元財務長官ら共和党の「主流派から集められた」が、今回のトランプ氏は「過激なレトリック 」を駆使しており、「エスタブリッシュメントを打ち壊すことにコミットした人物」に囲まれていると述べた。

  サマーズ氏はトランプ氏が勝利すれば「冷戦に勝利して以来、第2次世界大戦に勝利して以来、米国が持っていた道徳的権威の喪失を意味する。そうなれば、世界の安定性は大きく損なわれるだろう」と話した。

引用:bloombergより

このようにサマーズ氏は述べ、トランプ氏が大統領になったときに起きる状況について懸念を述べていました。トランプ氏が大統領になった場合には第二次大戦後に築いてきたものを大きく損なう可能性について言及しています。トランプ氏は度々過激な発言をして注目を集めており、それが多くの有権者の支持を集めているところから今回の選挙でも最有力の一人となっています。そのためトランプ氏が大統領になる可能性も少なくはないでしょう。実際、就任したあとにどのような結果となるかは神のみぞ知るというところですが、前回の大統領就任時に行ってきたことや、現在発言していることを総合してみると、なかなか厳しい状況なのかなと思います。

前回のようにうまく行くとは限らない

トランプ氏が現在、大統領候補として最有力の一人であることは間違いないでしょう。共和党内でも非常に多くの支持を集めており、再び大統領となる可能性は相当あると思われます。それだけに経済界やその他の分野の専門家の間でも警戒感が高まっているのは事実です。特に経済に関してみると非常に内向きな政策に大きく舵を着る可能性があり、投資環境としてはあまり良くならない可能性が出てきています。前回大統領のときもTPPから離脱してしまったり、あまりにぶっ飛んだ発言を繰り返したりとかなり周囲を困惑させたのは記憶に新しいところでしょう。それでもなんとか4年間こなしたので今回も大丈夫ではないかという声もありますが、なかなか今回はそうは行かないのかなという感じがします。それは記事の中にもあるとおり、今回トランプ氏の回りにいる人は共和党内の正統派というよりはかなり極端な論評をする人が多いような印象があります。そういう意味ではトランプ氏の暴走を止めるような人があまりいないのではないかと思いますし、むしろ加速させる懸念すらあります。また、日本に関して言えば、前回は安倍総理がうまくトランプ氏と関係性を深めることに成功し、かなりうまく乗り切った印象があります。しかし、もう安倍氏はおらず、岸田総理を始め、他にトランプ氏をうまくコントロールできるような人はおそらく日本にはいないでしょう。それは日本にとっても世界にとっても不幸なことであり、誰もトランプ氏を抑えられないという状況になりかねません。もちろんそうならないことを願うばかりですが、果たしてどうでしょうか。

まとめ

今回は米国の大統領選挙のことについて見てきました。サマーズ氏の言うとおり、トランプ氏になったときのリスクというのは小さくはないでしょう。特に経済のことに関しては非常に内向きになり、最悪米国が孤立するリスクというのもあるのかなという感じがします。そうなることは日本にとっても世界にとってもいいことはありませんし、マーケットも大きく失望することになるでしょう。そうならないことを今は願うしかありませんし、日本人としてはそうすることしかできません。なんとももどかしい気がします。