今後の金融政策はデータ次第

金融政策の今後については非常に不透明感が強いです。一応今の所年内にあと一回の利上げというのが大方の予想だとは思いますが、複数回の利上げを主張している人もいれば、すでに必要なところまで利上げが行われているという人もおり、意見の幅が非常に広がっている印象です。そういう意味で今後の予想が立てづらいなというのが正直なところでしょう。

すでに金利水準は十分に達している

FRBのバー副議長はイベントにて現在の金利水準はインフレ抑制のために十分な水準まで達している可能性があるとの発言をしています。

米連邦準備制度理事会(FRB)のバー副議長(銀行監督担当)は2日、FRBが十分に景気抑制的な金利水準に「達しているか、極めて接近している可能性が高い」と述べ、追加利上げの是非に関して慎重に進めることが可能だとするパウエルFRB議長と同様の見解を示した。

  バー氏はニューヨークで開かれたフォーキャスターズ・クラブのイベントで、より大きな問題は金利がいつまで高止まりする必要があるかだと指摘。これまでの利上げの完全な効果は向こう数カ月に表れると付け加えた。

  バー氏の発言は、年内の金利据え置きを予想するハト派当局者の見解と一致している。

  バー氏は講演後の質疑応答で、「インフレ率を長期的に2%に戻すのに十分な景気抑制的水準に達しているか、極めて接近している可能性が高いと思う」と発言。

  「われわれは長期的な金利の道筋を考えることにますます重点を置くようになると思う。インフレ率を2%まで下げるために金利はしばらくの間高止まりする必要がある。2%に到達すると私は確信している」と話した。

  ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁も9月29日、米金融当局の利上げは完了した可能性があると示唆していた。

引用:bloombergより

このようにバー副議長は述べ、インフレを抑制するために必要な金利水準はすでに達している可能性があることを示唆しました。これは多くのハト派の意見と一致するものであり、とりあえずは状況を見守るべきだという姿勢を示しているものと思われます。実際にインフレは高いとはいえ落ち着いてきていることは事実です。仮に今後の経済指標が更に落ち込むようであればもうもう一段階以上の利上げというのは必要ないということになるのかなと思います。

まだまだ利上げが必要か

しかし、反対意見も当然ながら存在します。むしろ現状ではその意見のほうが多いのではないかと感じています。

米リッチモンド連銀のバーキン総裁は住宅市場の強さについて、米金融政策当局がインフレを封じ込める上で、経済の他のセクターをさらに減速させる必要があることを意味しているかもしれないと述べた。ポッドキャスト「オッド・ロッツ」とのインタビューで明らかにした。

  これまで、住宅市場は金融引き締めを通じて景気を減速させる政策伝達のメカニズムにおいて重要な役割を担っていた。金利の変動に極めて敏感で、経済活動を左右する大きな部分を占めているためだ。

  しかし、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で住宅に対する考え方に「長期的な変化」が生じ、30年物住宅ローン金利の平均が22年ぶり高水準となる7%超まで急上昇する中でも住宅価格と建設を下支えてきたと、バーキン氏は指摘する。米金融当局は幅広く経済全体の需給均衡を図ろうとしており、それは住宅以外のセクターで一段の減速が必要になる可能性を意味するという。

  バーキン氏は「バランスを取るためには、かなり異なる方法で多くのモノやサービスを測ることが可能だ。1つの要素だけに片寄る必要はない。今、住宅は経済全体の中で大きな部分を占めている。従って家賃や住宅が均衡すれば、それは有益なことだろう」と述べた。

  「しかし相対価格は常に動いている。われわれの経験していることが、住宅需要拡大への長期的な変化だとすれば、それは住宅価格の下がり方が弱い一方で、それ以外の価格がより下落することを意味するのかもしれない」と話した。

  さらに「住宅に対する優先順位は長期的に変化した」と指摘。「家で過ごす時間が週5日や3日、7日あるのであれば家はもっと重要になり、在宅勤務環境やパティオ、家具もさらに重要になってくる。その現象はパンデミックの際に見られた」と語った。

引用:bloombergより

このようにバーキン総裁は今後も金利の引き上げが必要だと発言しています。インフレは落ち着いてきたとはいえまだまだ高水準です。ここで手を緩めてしまえばまたインフレが再加速したり、高い位置で停滞してしまう可能性もあるため、安定して落ち着くまで力を加え続ける必要があるということでしょう。実際、ここまで引き締める必要があるかはわかりませんが、多くの関係者の間ではもう一段階乗り上げが必要との意見は出てきているのが現実です。そういう意味では何も極端な話ではないのかなという感じがします。

今後は経済指標次第

このように現在の金融政策に対するスタンスは大きく異なってきているなというのが正直なところです。これまではとにかくインフレを早急に抑えるべきという意見があり、そのための金融政策に大きな違いはなかったように思います。そしてようやくその分岐点のようなところへ来て、各委員の意見が違ってきたのかなという感じがします。そういう意味ではやっと次のステージへ進んだという感じです。だからこそこれほどの意見の対立が生まれてきているということでしょう。実際にはまた引き締めが必要という意見が強いように見られるので、このまま行けばあと一回ほどの利上げが年内に行われる可能性があります。しかし、このようにタカ派、ハト派ともに存在する中では今後の経済指標によって大きくどちらかに傾く可能性も十分にあるでしょう。どちらも多くの識者もデータ次第というところは一致しています。そういう意味では今後の経済指標がどうなるかというのが非常に重要になると思われます。

まとめ

今日は金融政策についての意見の相違について見てきました。これだけ意見が分かれると今後を予測するのが非常に難しくなります。しかし、あくまで全てはデータ次第なのでそこまで強固なものでもないのかなという感じがします。おそらくはあと一回程度の利上げが行われるとは思いますが、今後の経済指標次第でどうとでもなるということは覚えておいたほうがいいでしょう。