8月の求人件数は予想外の伸びを見せる。

米国の労働市場は今もなお力強さを維持しています。昨日発表された8月の求人件数は市場予想を大きく上回る結果となり、労働市場の底堅さを確認する内容となりました。労働者からすれば非常に喜ばしいことですが、インフレ抑制を目指すFRBにとってはやや頭の痛い問題かもしれません。

求人件数は大幅な伸び

8月の求人件数は、市場予想を大きく上回る結果となりました。

8月の米求人件数は予想外に増加した。ホワイトカラーの求人が急増したことが主因で、労働需要の底堅さを浮き彫りにした。

  採用がわずかに増加し、レイオフは低水準にとどまった。

  自発的離職者の割合である離職率は前月と同じ2.3%。離職者の減少は、現状では別の仕事を見つける能力に対して自信が薄れていることを示している。

  求人件数の増加は、専門職およびビジネス・サービス業で50万人余り増加し、金融・保険、教育、非耐久財製造業でも伸びたことを反映している。

  求人の回復は、いかに底堅い需要が人材ニーズを支えているのかを示している。労働参加率の改善と一貫した賃金上昇が労働者不足の緩和に役立っているとはいえ、課題は残っている。

  失業者1人に対する求人件数は前月から変わらずの1.5件。ピークの2022年には2件に達していた。

  米金融当局は、労働市場で起きている再均衡に向けた進展を注意深く見守っている。この傾向が続き、物価上昇圧力が緩和されることを期待している。しかし、雇用市場の強さが持続すれば、連邦公開市場委員会(FOMC)は再び利上げに踏み切る可能性がある。

  ハイ・フリークエンシー・エコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、ルビーラ・ファルキ氏は「求人件数はパンデミック前の水準を大きく上回り、8月は悪い方向に動いている。これらのデータはFOMCの金利高止まりメッセージを支持するもので、FOMCは年内の再利上げに前向きである可能性が高い」と、リポートで指摘した。

  採用は辛うじて3カ月ぶりに増加したが、今年初めの水準をなお下回っている。採用増加は、宿泊・飲食サービス業の加速を反映。一方、低水準のレイオフは、企業が依然として従業員の解雇に消極的であることを示している。

  ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のスチュアート・ポール氏は「8月の求人件数は急増したが、労働市場が緩和しているとのわれわれの見方はほぼ全く変わっていない。スキルのミスマッチは求人を募集している企業にとってますます困難な問題になっているようで、求人数が依然として高いにもかかわらず、雇用と賃金の伸びは鈍化している。労働市場指標の多くは軟化を示しており、FOMCは指標全体の大きなトレンドに注目するとみている」と指摘した。

  この調査は回答率が低いことから、信頼性を疑問視するエコノミストもいる。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は今なお健在です。労働市場の安定は社会にとって非常に不可欠なものであり、米国経済の力強さを示すものとなっています。しかし、インフレ抑制という観点で見れば、より圧力をかけることとなるために金融政策も緩めることができなくなる可能性も高くなったといっていいのかもしれません。

金融政策はより厳しくなる

相変わらずの労働市場の力強さを見せつける結果となりました。雇用環境の強さというのはそれだけ労働者が職を失うリスクが少なくなることを意味し、高待遇を求めてどんどん流動化することになります。そうなれば企業側もより高待遇を準備する必要があり、賃金も更に上昇する可能性も高いと言わざるを得ません。そうなれば落ち着き出したインフレもあまり鈍化しなかったり、最悪再加速という可能性も出てくることでしょう。それはFRBにとっては最悪の結果であり、絶対に見過ごせるものではありません。そういう意味では今後の金融政策がよりタカ派へとシフトする可能性が一段と高くなったと言っていいでしょう。

まとめ

今日は8月の求人件数について見てきました。相変わらず労働市場は強いです。ここまで来ると何をやっても鈍化することはないのだろうかと疑ってしまうほどです。ただ、強い労働市場は金融政策にとっては今は悪材料でしかありません。そういう意味ではさらなる利上げの可能性はより高まったと言わざるを得ないと言えるのかなと感じます。