9月の民間雇用者数は小幅な伸びにとどまる

米国の労働市場はやや鈍化し始めたのかもしれません。昨日発表された9月の民間雇用者数は小幅な伸びにとどまり、労働市場が以前ほど堅調ではなくなった可能性が出てきました。最近は弱いとは行かなくとも以前ほどの強さを見せないことも多くなってきた労働市場ですが、今回もその流れに沿った内容となっています。

労働市場は鈍化傾向

9月の民間雇用者数は市場予想よりも小幅な伸びにとどまり、米国の労働市場が力を失いかけている可能性が出てきました。

ADPによると、9月の米民間雇用者数は前月比マイナスとなった2021年1月以降で最も小幅な伸びにとどまった。賃金増のペースも緩やかになっており、複数の業種で労働需要が鈍化している兆候を示した。

  データはADPリサーチ・インスティテュートとスタンフォード・デジタル・エコノミー・ラボが共同で算出した。

  娯楽・ホスピタリティーが伸びをけん引し、専門職・ビジネスサービス、製造業、貿易・運輸業の落ち込みを相殺した。規模別では大企業が雇用を削減した。

  これまでは労働市場が個人消費、ひいては米経済を押し上げる原動力となってきたが、今回のデータで労働市場がさらに減速している兆しが改めて浮き彫りとなった。

  ADPのチーフエコノミスト、ネラ・リチャードソン氏は発表文で「9月は雇用が大きく落ち込んだ」と指摘。「加えて、過去12カ月に賃金も着実に鈍化している」と述べた。

  ADPによれば、同じ職にとどまった人の賃金は中央値で前年同月比5.9%上昇と、ここ2年で最も小幅な伸び。転職した人の賃金(中央値)の上昇率も9%と、21年6月以来の弱い伸びにとどまった。

  過去数年は賃金が力強く上昇してきたが、労働参加率の上昇に伴い、賃金増のペースも減速し始めている。

  従業員500人以上を抱える企業は雇用を8万3000人削減。コロナ禍初期より後で、2番目に大きな落ち込みとなった。地域別では南部を除いて、雇用が全て増加した。

  6日に発表される9月の雇用統計では、民間雇用者数が15万5000人増と予想されている。

  JPモルガン・チェースのエコノミスト、ダニエル・シルバー氏は「ADPと米政府発表の雇用統計の緩い相関関係はさておき、ADPのデータは雇用の伸び鈍化というここ数カ月のトレンドを示している。これは労働市場で起こっているはずのこととおおむね整合すると当社では考えている」とリポートで指摘した。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は以前ほどの力強さを失ってきた可能性が出てきました。ADPのデータは雇用統計と若干異なるため、今週発表の9月の雇用統計と誤差が生じる可能性もあります。なのでこの結果を持ってどうこう言えるものではありませんが、少なくとも最近はデータが鈍化してきていることは事実です。そういう意味では労働市場も以前ほどの力強さがなくなっているということは間違いないでしょう。もちろん今すぐに雇用が悪化し、リセッションに突入するというほどではないとは思いますが、あまり楽観的に離れないような気はします。しかし、インフレ抑制を目指すFRBにとっては非常に喜ばしいニュースであり、この程度の鈍化であればむしろ好感するかもしれません。最近はハト派な意見も多く出てきてはいましたが、依然として金融政策はタカ派が多く存在しています。そういう意味ではその政策変更への期待ももしかしたら高まるかもしれません。

この程度であれば問題はないのであろう

最近の労働市場の指標は以前ほどの強さがなくなってきたことは事実です。今回の民間雇用者数もそうですが、その他の失業保険等の指標も以前ほどの結果ではなくなっていました。しかし、雇用環境の悪化を示すほど悪いというわけではないのでこの程度の鈍化であればむしろ好都合という感じがするのではないかと思います。労働市場の強さというのはインフレを助長することは事実です。そういう意味で労働市場のある程度の軟化というのは現在の経済状況においては必要なことなのかなとは思います。しかし、あまりに急激に鈍化するようであれば、当然ながら経済にとってもマイナスであることは間違いないので、そのあたりは注意が必要なのだろうと思います。

まとめ

今日は9月の民間雇用者数について見てきました。米国の労働市場は確実に鈍化してきています。現状の水準であれば大きな問題にはならないでしょうし、むしろ好都合ではないかと感じています。しかし、安心はできるものではないのでそのあたりの舵取りは非常に難しいものになることでしょう。ただ、今回の結果と雇用統計の結果には必ずしも一致するとは限りません。そういういみでも週末の雇用統計の発表には注目だろうと思います。