失業者数は大幅に減少。労働市場は底堅さを見せる。

強さを失いかけたように見える労働市場ですが、いきなり崩れていくというほど弱くもないようです。昨日発表された労働市場の指標はいずれも底堅さを見せる結果となり、労働市場はまだまだ健在であることを示しました。強力な強さというのはなくなりましたが、経済を失速させるほどの弱さを見せるということもなく、程々の状態を保つという感じです。インフレからのソフトランディングを目指す現在においては意外と望まれる展開なのかもしれません。

失業者数は大幅に減少

昨日発表された第3四半期の人員削減数は、大幅に減少することとなりました。

米企業が7-9月(第3四半期)に発表した人員削減数は、過去1年で最少となった。季節的な雇用計画の強さが背景にある。人員削減の波が収まりつつある可能性をひとまず示唆する格好だ。

  再就職あっせん会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスが5日公表した月間統計によると、7-9月の人員削減数は14万6305人と、4-6月(第2四半期)から22%減少した。企業が9月に発表した季節従業員の採用計画は55万2800人と、前年同月比54%増加した。

  過去1年間における人員削減の波の中心だったテクノロジーセクターで9月に発表された削減数は2022年6月以来の低水準となった。

  米金融当局の積極的な利上げにもかかわらず、米労働市場が底堅さを維持していることを今回の統計は新たに示唆している。ただし、各種データで相反するシグナルが発せられる傾向は強まりつつある。

  チャレンジャーのシニアバイスプレジデント、アンドルー・チャレンジャー氏は、10-12月(第4四半期)に入る中、「雇用主はインフレや金利上昇、労働問題、消費需要と向き合っている」と述べた。

引用:bloombergより

このように企業はここへ来て人員削減に対してあまり積極的ではないことが確認された形です。このことは年末へ向けての季節的な状況、つまりはクリスマス商戦等の要因が多く存在すると見られますが、それでも雇用が守られているということは重要なことでしょう。一時期に比べると落ち着いてきた労働市場ですが、そこから一気に落ちるということはなく、非常にフラットな状態で推移している印象です。労働者としては強いことに越したことはないとは思いますが、インフレ抑制が非常に重要視させている現在においてはある程度の弱い労働市場というのはむしろ歓迎すべきでしょう。もちろんこの水準が正しいのかどうかはわかりませんが、少なくともインフレがまずい状態に向かっているというサインではないような気がします。

インフレとの戦いは長期化

最近は労働市場の指標が硬軟綯交ぜな状態になってきている感じがあります。やや弱い数値が出てきたなと思ったら、今度はそこそこ強い指標が出てくるという感じです。これらを見る限り、米国の労働市場は適度に落ち着いてきたのかなという印象があります。もちろんインフレ抑制という観点で見ればもっと冷え込んだほうがいいでしょうが、それでは経済が急失速し、景気後退を招きかねません。ソフトランディングを目指すというFRBの目標を考えればある程度の強さも残してもらいたいというところでしょう。そういう意味ではこのような感じで強弱の交じる指標が出てくる状態というのは悪くはないのかなという印象です。ただ、先程も言いましたが、労働市場が弱くならないのであればインフレは相当期間継続すると見るほうがいいような気がします。そういう意味ではインフレ抑制が終了するのは想像しているよりも長くなるのかもしれません。

まとめ

今日は米国の労働市場の動きについて見てきました。労働市場は程々に落ち着いてきているといった感じが正しいのかなと感じます。この程度であれば大きな景気後退はないと思いますが、インフレの早期収束ということもないでしょう。そういう意味ではやはり戦いは長期戦になりそうな感じがします。そのあたりは覚悟しておいたほうがいいでしょう。