9月の雇用統計は予想外に強いものとなる。

米国の労働市場はまだまだ力を失っていません。昨日発表された9月の雇用統計は市場予想を大幅に上回る結果となり、改めて米国の労働市場の強さを示すものとなりました。労働市場の強さは労働者にとっては心強いものとなるとは思いますが、インフレが今後さらに強く加速する可能性が出てきたために、金融政策はさらに厳しく推移することとなるかもしれません。

雇用統計は予想外に強さを見せる

9月の雇用統計の結果は市場予想を大きく上回るものであり、米国の労働市場は未だ熱を失っていないことを確認する内容でした。

米国の非農業部門雇用者数は9月、市場予想を大幅に上回る伸びとなった。1月以来の大幅増で労働市場の堅調ぶりがあらためて示され、米金融当局による追加利上げの論拠を強める格好となった。

  非農業部門雇用者数は過去2カ月分が大幅に上方修正された。今回の統計を受け、金融市場では過去1カ月に長期金利を上昇させてきた国債売りが加速。国債利回りの急上昇はいずれ消費者や企業の借り入れコストを押し上げ、景気を悪化させる恐れがある。

  調査会社インフレーション・インサイツ創業者のオメイア・シャリフ社長は今回の雇用統計について、「圧倒的だ。米金融当局が年内追加利上げの引き金を引くとの観測につながるだろう」と顧客向けリポートで指摘した。

  雇用市場が驚くほどの力強さを保っていることは、企業が売上高見通しに引き続き自信を持っていることを示唆する。雇用のペースは昨年以降に鈍化しているものの、その底堅さは家計支出および広範な経済の強さの重要な源泉であり続けている。

  ただ、米金融当局にとっては、労働市場の強さは物価上昇圧力の持続という脅威にもなる。先に発表された8月求人件数など他の指標とともに、今回の統計は米金融当局が年内に0.25ポイントの追加利上げに動く論拠を強めた。

  雇用は比較的幅広い分野で伸び、娯楽・ホスピタリティー、ヘルスケア、専門職・ビジネスサービスで特に増えた。政府部門も増加した。

  平均時給は前月比0.2%上昇で、前月と同じ伸び。市場予想(0.3%上昇)を下回った。前年同月比では4.2%上昇と、2021年半ば以来の低い伸びにとどまった。週平均労働時間は34.4時間と前月と変わらず。

  労働需給のミスマッチは、ここ数カ月の労働参加率の改善もあって均衡状態に戻りつつある。全体の労働参加率(就業者および求職者の合計である労働力人口の生産年齢人口に占める割合)は前月と同じ62.8%となった。

  9月の雇用統計は例年、娯楽・ホスピタリティー産業での季節要因のレイオフや新学期開始に伴う雇用増の影響を調整する必要から、予想外の数字になる傾向はある。

引用:bloombergより

このように米国の労働市場は驚異的な力を示しています。最近では軟化を示すようなデータも散見されたため、労働市場は落ち着きを見せ始めたかに思えましたが、そんなことは全くありませんでした。労働市場は今なお強い力を維持しています。このことはインフレ抑制を目指すFRBにとっては非常に頭の痛い問題として意識されることになるでしょう。最近では金利の引き上げを停止するなど、インフレの落ち着きを意識したやや緩めの政策を実行してきました。しかし、ここへ来て予想外に強いインフレの動向を目の当たりにして、その政策は大きく変更される可能性が高くなったと言っていいでしょう。すでに金利水準は十分に高いといった意見も出てきてはいましたが、その意見もかなり小さくなると思われます。そういう意味では年内に利上げが行われる可能性はかなり高くなったと言わざるを得ません。

ソフトランディングの可能性がかなり後退

本当に米国の労働市場の強さには驚かされます。最近の雇用関係の指標を見る限り、ここまで強いものは正直予想できませんでした。そのくらい衝撃的なものであり、マーケットも大きく動くこととなりました。おそらくFRBにとってもサプライズであっただろうと思いますし、金融政策にも当然ながら影響を与えることになるでしょう。今後も金利は更に引き上げられることになり、ソフトランディングへの可能性というのはやや後退したのかなという印象です。

まとめ

今日は9月の雇用統計について見てきました。ここまで強いと正直なんと形容していいのかわからなくなります。そのくらい我々の常識が通じないほどの強さを見せる労働市場です。なぜここまで強いのか全くの謎ですが、インフレ抑制の道のりは更に遠のいたと言っていいでしょう。今後金融政策は厳しさを増し続け、株式市場にとっても試練が続くものと見られます。