9月の雇用統計はハードランディングの可能性を感じさせるもの

9月の雇用統計の結果は大きなサプライズとなりましたが、この結果についてはやはり悲観的に見る人が多いような気がします。著名な専門家たちも今回の結果によって今後の展開に非常に悲観的になっています。

金融政策の効果があまりない

元財務長官のサマーズ氏はインタビューに低下のように述べています。

サマーズ元米財務長官は、9月の米雇用統計について今のところ「素晴らしいニュースだ」と評価したが、米金融政策当局による利上げが以前のようには効果を発揮していないことも示唆していると指摘。米国経済のハードランディングのリスクを押し上げると警戒感を示した。

  サマーズ氏は6日、ブルームバーグテレビジョンの番組「ウォールストリート・ウィーク」でのインタビューで、長持ちする乾電池エナジャイザーの広告マスコット「エナジャイザー・バニー」を例に「米国の景気は『エナジャイザー・バニー』のようだ」と語った。その上で同氏は、どちらかといえば雇用の伸びが加速しているため、恐らくハードランディングのリスクを「やや大きく見せる」と続けた。

  米国の非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は9月に前月比33万6000人増加と、市場予想の約2倍。同雇用者数は過去2カ月分も大幅に上方修正された。ただ賃金の伸びは減速した。

  サマーズ氏は「これは良好な数値だと認識しなければならないが、ソフトランディングの保証のようなものだとは言えない」と語った。

  さらに「かつてのように金利が経済を導く手段ではなくなりつつある世界にわれわれは生きているのかもしれない」とも述べ、「つまり状況を冷却化させる必要がある際には、金利はこれまで以上に不安定にならざるを得ないことを意味する」と続けた。

引用:bloombergより

このようにサマーズ氏は結果については良いニュースだと述べていますが、ソフトランディングの可能性が低下したと述べています。労働市場が好調なことは良いことですが、マーケットや金融当局にとっては非常に悪いニュースであり、今後の金融政策にも大きな影響を与えるとのことです。また、金利についても経済を正常化させる手段になりづらくなっている可能性について言及し、非常に将来に対する不透明さを危惧しているようです。

厳しい金融政策は更に厳しく、長期化へ

また、アリアンツのモハメド・エラリアン氏も今回の結果について非常に悲観的な見解を述べています。

アリアンツの首席経済顧問を務めるモハメド・エラリアン氏は、6日発表された米雇用統計を受けて米金融当局は政策金利をより高く、より長く維持する方針を堅持するとし、この先「何かが壊れる可能性が高い」と指摘した。

  ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストでもあるエラリアン氏は、ブルームバーグテレビジョンで、9月の非農業部門雇用者数の伸びについて「現時点で米経済には明るいニュースだ」としつつ、「市場と金融当局にとっては悪いニュースだ。金融当局は今回の統計を好ましい内容とは受け止めないだろう。長期的に見た場合、最終的に経済にとっても悪いニュースとなる可能性がある」と述べた。

  金融政策については「11月の利上げが再び選択肢に上がる。市場としては『高く、長く』だけでなく、『より高く、より長く』を織り込む必要性が生じている。インフレサイクルの始まりの時点で後れを取れば、終わりの局面で代償を払うことになる」と指摘した。

  9月の雇用統計は、リセッション(景気後退)を予想する声と「整合している」とし、「米経済は尋常でない低金利、そして流動性注入に慣れ過ぎてしまった。レジームの変化は極めて速いペースで起きている」とエラリアン氏は語った。

引用:bloombergより

このようにエラリアン氏は述べ、金利水準が想定よりも高く、より長くなる可能性について言及しています。これだけ長期間に渡り金利を引き上げ続けてきましたが、その効果というのは思っていたほど現れていないというのが現実です。そういう意味ではさらなる強硬手段に出る必要があるというのは間違いないでしょう。そしてその可能性というのがかなり高くなったということです。

明るい兆しが見えなくなる

両名ともに今後の経済に対して非常に悲観的になっています。しかし、雇用統計の結果を見る限りそれは当然のような気がしますし、そう考えているのはおそらくはこの二人だけではないでしょう。それだけ今回の結果というのは衝撃的でした。この結果を持って、おそらくは年内にもう一段階の利上げの可能性というのが更に高まったのは事実であり、エラリアン氏が言うとおりそれが長期化する懸念も出てきたと思います。インフレを放置するわけには行きませんが、これだけ厳しい金融政策を実行しても抑えきれないという現実は、かなり厳しい未来が待ち受けていることの証拠なのかなという感じがします。

まとめ

今日は9月の雇用統計の結果を受けた専門家の意見について見てきました。どう考えても今回の結果というのは未来について非常に悲観的にならざるを得ないというのが正直なところです。いつかの段階で制御不能となり、ハードランディングの覚悟を決めなければならない時期が来ることも想定しておいたほうがいいでしょう。それほど今回のインフレは粘着性が高く、収束までの道のりは困難であると改めて認識させられる事態だったと思います。