新規失業保険申請件数は増加。労働市場は緩やかに悪化傾向。

労働市場の減速は緩やかに進んでいるようです。先日発表された新規失業保険申請件数は市場予想通りとなり、前週よりも6万人ほどの増加となりました。緩やかではありますが、労働市場は悪化傾向にあるような気配がしてきました。そういうわけで今日は先日発表された新規失業保険申請件数についてみていきます。

新規失業保険申請件数は増加

先日発表された新規失業保険申請件数は約170万人となり、市場予想とほぼ一致する形となりました。前週よりも約6万人ほどの増加となり、労働市場は少なくとも改善しているということはないでしょう。

米国で失業保険の継続受給者数が増加し、2月上旬以来の高水準となった。労働市場で一時的に冷え込みの兆候が示される中、失職者が新たな仕事に就くことが一段と難しくなっている状況が示唆された。

  この統計は、特に祝日前後には週ごとの変動が大きくなり得る。より変動の少ない失業保険申請の4週移動平均は小幅に増加して23万件となった。

  ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、イライザ・ウィンガー氏は「堅調だった11月の雇用統計と合わせて考えると、今回の失業保険申請データは、労働市場の需給均衡回復が緩慢になるとの見方を裏付けた」と指摘した。

  季節調整前の失業保険申請件数は28万6436件と、今年初め以来の大幅増。州別ではカリフォルニアやニューヨーク、テキサスでの増加が目立った。

引用:Bloombergより

このように米国の労働市場は悪化してきています。前回の雇用統計の数値が非常に好調だったために、労働市場の堅調さが目立っていましたが、失業保険の数値を見る限りそこまで強いということもないような気がします。11月は感謝祭のため祝日がありました。そういう意味では通常よりも労働市場のデータというものを評価するときに若干の補正が必要です。なので移動平均で見た方がいいのですが、それでも小幅に増加しているようです。

労働市場は緩やかに悪化

今回の発表を受けて、雇用統計の強さと失業保険の弱さが入り混じっている状態であるといっていいのかなと思います。今まさに労働市場の転換点といっていいのかもしれません。これまでのように労働市場が堅調であるということもないと思いますが、少なくとも一気に悪化するという状況でもなさそうです。そういう意味では緩やかに労働市場は悪化していくということなのかなと感じています。そうであればインフレ抑制を目指すFRBにとっても悪くはないのではないかと思います。一気に悪化すれば景気が悪くなりますし、いつまでも労働市場が強固だとインフレがいつまでたっても収束しないという状況になります。そういう意味ではいろいろ問題はあるとは思いますが、今のところはうまくいっている方なのかもしれません。もちろん今後どうなるかわかりませんし、予想外の事態が起こる可能性も十分にあります。なので安易な楽観論は禁物です。

まとめ

今日は新規失業保険申請件数についてみてきました。雇用統計の結果を見た時はまだまだ労働市場は堅調だなという感じでしたが、今回の指標を見る限り、やはりそこまで強さはもうないのだろうという印象です。そして今後は緩やかに労働市場は悪化していき、インフレも少しずつ鈍化していくという感じなのでしょうか。もしそうなればFRBの金融政策は大成功ということになるでしょう。しかし、今後の先行きを考えるとまだまだ難しい仕事ではないかと思います。やはり来年は景気の後退がかなり確実な状況ですし、労働市場の悪化は予想外にひどくなる可能性もあると思います。そうなればインフレばかりに目を向けるわけにはいかなくなるでしょう。そしてインフレ抑制に時間がかかり、景気もいつまでも悪化し続けるというような悪循環に陥る懸念もあると思っています。いづれにせよ何度も言いますが楽観論は禁物です。