石油精製施設が増強されないため、需給の改善は厳しそう

エネルギー価格の高騰は依然続いています。ウクライナ情勢をはじめ、エネルギーに関する状況は少なくとも近い将来、落ち着く様子はないといっていいでしょう。多少の変動はあるとは思いますが、しばらくは高止まりしそうな感じです。それを裏付けるような発言もあり、大変厳しい環境は続いていくとは思いますが、そういう時こそ投資のチャンスはあるような気もします。そういうわけで今日はエネルギーについて考えていきます。

石油精製施設が増強される可能性は非常に低い

現在、原油の先物価格は上昇を続けており、世界的にエネルギー価格は上昇を続けています。その原油に関して米国の石油大手、シェブロンのマイク・ワース最高経営責任者(CEO)が大変興味深い発言をしていました。

石油メジャー、シェブロン(CVX)のマイク・ワース最高経営責任者(CEO)は、今後、米国内に新たな製油所が建設されることはないだろうとの見方を示しました。これは、ブルームバーグTVが行った最近のインタビューで、記録的高水準にある米国のガソリン価格を緩和するにはどうしたらよいかについて議論する中での発言です。現在、シェブロンをはじめとする石油生産企業が増産しても、ガソリン、ジェット燃料、ディーゼルなどの石油製品の需要を満たすだけの十分な精製能力はありません。つまり、石油会社がこれまで以上に多くの原油を汲み上げたとしても、価格は高止まりが続くということです。これは、消費者にとっては悪いニュースですが、精製企業にとっては良いニュースです。精製マージンが堅調に推移することを示唆しており、精製企業の業績好調を下支えしてくれる可能性があります。

引用:マネクリより

ワースCEOはこのように述べ、米国では新たな石油の精製施設は建設されないとの見解を述べました。石油というのは取り出してすぐに使えるものではありません。取り出した石油をそれぞれの用途に合ったものへと変換してあげる必要があります。ガソリンや灯油、経由等の燃料やポリエチレンやプラスチックなどの加工品など石油をあらゆるものに変換する必要がありますが、そのための精製施設が必要になります。なので大きな需要を満たすためには石油を大量に取り出すとともに、石油を精製する設備も増強しなければ供給は増えていかないのです。

いわゆる環境規制が足かせになっている

しかし、米国ではその精製施設を増強しようという動きはないようです。これは最近の世界的な流れである環境規制の動きに関係しています。世界は化石燃料の使用を控えていこうという流れになっています。なので今現在は需要が大きくても将来的には需要が縮小していくことは明らかです。であれば多額の投資が必要となる精製施設を建設するのに消極的になるというのは当然であるといえます。しかも、精製施設というのは10年にわたって投資をしていかなければならず、コストもそうですが時間もかかるというのです。であれば民間企業がこの環境規制の中で新たな精製施設を建設しようとはならないのは明らかであるといえます。

いくら石油を掘ったところで精製できないのであれば意味がない

よって現在の需給を考えると、エネルギー価格が高止まりする可能性が非常に高いということになります。原油の生産については増やそうと思えば増やすことができるでしょう。しかし、いくら石油を生産したとしてもそれを精製することができなければ役に立ちません。つまり石油の精製能力を超えた供給はできないために、需給は改善しづらいということです。そしてその精製施設が供給されないということは今後もこの状態は続いていくということになります。

石油メジャーよりも精製に特化した企業が有望

エネルギー価格の上昇はエネルギー関連銘柄の株価を押し上げています。しかし、今後はシェブロンのような石油メジャーよりも石油の精製をメインの事業としている企業の株価が伸びやすいのかもしれません。

精製品の需要が旺盛で、新たな精製能力が建設される予定もないことから、精製企業にとってまたとない好機が訪れています。これは、シェブロンの米国の川下事業の第1四半期業績を見ると明らかです。同社は第1四半期に4億8,600万ドルの利益を生み出し、前年同期の1億3,000万ドルの赤字から大逆転しました。需要の増加に対応するために精製所の稼働率を引き上げ、精製品の利益率上昇が業績向上に大きく寄与しました。

石油精製に特化したエネルギー企業の業績好調はさらに顕著です。例えば、独立系大手精製企業のマラソン・ペトロリアム(MPC)は第1四半期に、精製・販売から14億ドルの調整後の利払い・税引き・減価償却前利益(EBITDA)を生み出しました。前年同期のわずか2,300万ドルから大幅な増加です。精製マージンが2021年第1四半期の1バレル当たり10.16ドルから2022年第1四半期には同15.31ドルに上昇したこと、および設備稼働率が同期間に83%から91%に上昇したことが増益に寄与しました。

同じく独立系精製企業のバレロ・エナジー(VLO)も、石油精製市場の市況改善の恩恵を受けています。第1四半期の調整後営業利益は14億7,000万ドルとなり、前年同期の5億600万ドルの調整後営業損失から大幅に改善しました。

精製マージンがここ数週間で改善し、精製企業の稼働率がフル稼働に近づいていることから、石油業界は今後数四半期にさらなる利益の増加が見込まれます。こうした恩恵の大半は、増配や自社株買いといった形で投資家に還元されると思われます。精製企業は従来の精製能力の増強に資本を投下していないからです。その代わり、ほとんどの精製企業は既に、未来型燃料に焦点を移しています。マラソン・ペトロリアムは最近、20億ドルを投じ、再生可能燃料プロジェクトを推進するための合弁会社を設立しました。バレロ・エナジーは、ダイヤモンド・グリーン・ディーゼル(DGD)プロジェクトの拡張を加速させ、2022年第4四半期までの完了を目指しています。

引用:マネクリより

このようにエネルギー関連企業は好調を維持していますが、その中でも石油精製に特化した企業の業績・株価は非常に堅調です。そして今後も精製施設の増強が行われないとすればその恩恵を長期間にわたって受けられる可能性もあるのです。特にインフレ下においてはエネルギー関連企業というのは歴史的に見て好調であるということは証明されています。そういう意味でもエネルギー関連企業、特に精製に特化した企業というのは今後得に有望であるといえるかもしれません。

まとめ

今日は今後のエネルギー需給について考えてみました。現在の環境規制の動きを見れば、供給能力が大きく伸びる可能性というのは低いといわざるを得ません。しかし、需要は今後も伸びていくものとみられます。そういう意味でもエネルギー関連企業というのは投資先として非常に有望であり、特に精製部門というのは非常に注目すべきところです。