パウエル議長の議会証言が行われるが大きなサプライズはなかったかな

昨日は市場が注目していたパウエル議長の議会証言が行われました。内容としてはこれまで発言してきたことを改めて確認するようなものとなっており、大きなサプライズはなかったのかなという印象です。すべての結論はこれからのデータ次第ということもこれまで通りであり、何が起こるかは全くわからないと言ってもいいのでしょう。

パウエル議長の議会証言

FRBのパウエル議長は昨日、下院の金融委員会にて発言し、インフレ抑制のためにこれまで通り全力を注いでいく旨の発言を行いました。

パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、米経済成長を長期の潜在成長率を下回るペースに減速させ、物価圧力を抑制するために、政策当局者らは金利が上昇する必要があるとみていると述べた。その上で、追加利上げのタイミングについては今後入手するデータに左右されると説明した。

  パウエル議長は21日、米下院金融委員会で半期に一度の議会証言に臨んだ。議長は過去1年余りの利上げペースについて触れ、「プロセスのより早い段階では、スピードは非常に重要だった」とした上で、「今はあまり重要ではない」と述べた。

  冒頭証言後の質疑応答で議長は、連邦公開市場委員会(FOMC)の今後の計画について、向こう数カ月に利上げを継続するが、ペースはより緩やかなものにすることが理にかなう可能性があると回答。冒頭証言では、追加利上げのタイミングは入手するデータに左右されると述べていた。

  FOMCは先週13、14両日の会合で政策金利を据え置いた。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは5-5.25%。ただFOMC参加者の予測中央値では、政策金利は年末までに5.6%に上昇すると見込まれており、0.25ポイントの利上げがあと2回行われることが示唆されている。

  また質疑応答では議員から、今年春に起きた複数の銀行破綻を受け、地銀や大手行の監督・規制をどう強化していくのか、FRBの計画について説明を求める声も上がった。

  パウエル議長は、FRBは銀行規制の変更についてまだ投票を行っていないとしつつ、スタッフは検討中のいくつかの修正について説明を受けたと回答。米大手行の「資本は極めて十分」だとしたほか、FRBは中小規模の銀行の事業モデルに悪影響をもたらさないよう慎重になる必要があると語った。

  冒頭証言では、議長は「同僚と私は高インフレがもたらしている困難を理解しており、インフレ率を目標の2%へと戻すことに引き続き強くコミットしている」と言明。「われわれは、入手するデータとそれらが経済活動とインフレの見通しに対して持つ意味合いの全体像、さらにリスクのバランスに基づき、今後も会合ごとに判断を行っていく」と述べた。

  パウエル議長は「FOMC参加者ほぼ全員が、年末までに幾分かの追加利上げが適切になると予想している」と発言。「インフレ鈍化には、経済成長が潜在成長率を一定期間下回ることと、労働市場環境の幾分かの軟化が必要になる可能性が高い」と指摘した。

  パウエル議長は利上げペースの減速について、自動車走行における速度減速に例えた。議長は「幹線道路を時速75マイル(約120キロメートル)で走行していたとして、その後に地域の主要道に入った時点で速度を50マイルに落とす」とし、「さらに目的地に近づき、その目的地を探そうとする中で、スピードをさらに落とす」と説明した。

  議会証言の準備原稿は、先週のFOMC後の記者会見での発言とおおむね同内容だった。

  冒頭証言では、失業率は5月に3.7%に上昇したものの、労働市場について「非常にタイト」だと発言。その上で、「労働市場の需給がよりバランスの取れた状態になりつつある兆候がいくらか見られる」と述べた。

  このほか、3月の銀行破綻を受けた米与信環境の引き締まりに対するFRBの認識についても触れた。この認識については、16日に公表された半期に一度の金融政策報告に記された。

  議長は「経済は、家計と企業に対する与信環境引き締まりに伴う逆風に直面している。この逆風は、経済活動や採用、インフレへの重しとなる可能性が高い」としつつ、「そうした影響の程度については引き続き不透明だ」と述べた。

引用:bloombergより

このようにパウエル議長はインフレ抑制のための決意を改めて表明した形となっています。経済の先行きや金融不安など金融政策に与える要素というのは他にもあるとは思いますが、それよりもインフレ抑制に重きをおいた政策を実行していくとの決意を再度示したものなのかなという印象です。しかし、内容自体はこれまで発言してきたものとそう大きな違いはなく、改めてFRBの意思の確認をしたというところでしょう。そういう意味では大きなサプライズはなく、特別混乱を招くようなものではなかったのかなと思います。そして今回の結果、大きな変化がなければあと2回ほど年内に利上げが行われる可能性が高くなったと言えます。もちろん全ては今後のデータ次第なのでこの利上げがどのようになるかはわかりません。しかし、考えられる可能性の高いシナリオではそのようになるということは覚えておいたほうがいいでしょう。

大きなサプライズはない

今回の議会証言については大きなサプライズもなく、淡々と事実確認と改めてのインフレ抑制への決意を表明したというところでしょうか。そういう意味では市場に与えるインパクトはそう大きくはないのかなという印象です。しかし、今後はデータ次第ということですが、よほどのことがない限りはこのシナリオを崩すということはないのだろうと思います。これまでも金融不安や企業業績の悪化などのサインがあっても金融政策に大きな変更は行ってきませんでした。政治サイドからも引き締めの停止の圧力があったりもしましたが、それでもパウエル議長は淡々と仕事をしてきたという印象です。そういう意味では今後はデータ次第ということは間違いないとは思いますが、そのシナリオを変更させるにはよほどの事態が起こらなければないのだろうと感じています。

まとめ

今日は先日行われたパウエル議長の議会証言について見てきました。特別サプライズもなく、原理原則を確認したというところでしょうか今後の方針もかなり固まったのかなという印象です。おそらくは年内2回の利上げはほぼ確実であり、よほど大きな事態が起きなければこれが変わることはないのでしょう。特に緩める方向への変化はかなり厳しいのかなと思います。それだけインフレ抑制に対する強い決意が今のFRBにはあると言っていいのでしょう。