米国の家計の貯蓄は更に減少。消費が落ち込むのも時間の問題か。

米国の消費者の懐事情は徐々に厳しくなってきているようです。米国の家計の貯蓄はここ6年間で164兆円も少なくなっていることがわかりました。インフレの進行とともに物価はどんどん上がっていきますが、家計の厳しさは増すばかりのようです。

家計の貯蓄は徐々に減少

先日発表された統計によると、米国の家計の貯蓄が大きく減少してきていることがわかりました。

米国では家計の貯蓄が過去6年間で従来の推計よりも1兆1000億ドル(約164兆円)程度少なかったことが、28日発表の政府統計の見直しで明らかになった。

  米商務省経済分析局(BEA)によると、2017-22年の貯蓄率(可処分所得に占める貯蓄の割合)は平均8.3%と、従来の9.4%から下方修正された。会計上の調整で投資信託や不動産投資信託(REIT)からの個人所得が減少したことが要因だ。

  ガソリン価格の高騰や10月からの学生ローンの返済再開により消費者に対する逆風が強まる中、家計の状況は今後の経済を占う上で重要な要素となっている。

  米国では新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期に、政府による大規模給付プログラムもあり、追加的な貯蓄が積み上がったが、その後、コロナ懸念の後退に伴う支出パターンの正常化やインフレ高進により貯蓄が目減りしている。  今回見られた個人貯蓄の減少の多くはコロナ禍前に生じているため、米国人が現在でも追加の資金をどの程度持っていると感じているのかという点への影響は不透明だ。

  BEAは約5年ごとに国内総生産(GDP)など重要統計の広範な見直しを実施している。今回は基準年が12年から17年に変更された。

引用:bloombergより

このように米国の家計は日々その余力というものを失ってきています。その主な要因としては投資信託などからの所得、つまりは配当等が減少したためのようです。そしてガソリン価格の高騰など日々生活にかかるコストは上昇しており、家計の余裕というものは徐々に減少してきているのが実情ということでしょう。今の所、雇用は守られており、経済も予想されていたほどには悪くなっていないませんが、このまま続けば状況も一変する可能性が高いと思われます。米国のGDPの多くを占める個人消費はその力を失いつつあるという現状は今後に対して非常に大きな不安要素であると言って間違いないでしょう。

インフレ収束まで家計は持つのか

米国は予想されていたよりも悪くはないというのは間違いないのかなとは思います。インフレの進行とともに悪化すると思われていた経済も思いの外力強く、まだまだ健在であると言っていいでしょう。雇用も安定しており、実体経済は我々が考えているよりも強固です。しかし、その実態というのは非常に危ういものの上に成り立っているということはしっかり認識しておかなければならないということは今回のニュースによって再認識させられたような気がします。パット見は米国経済はそこまで悪くはないように見えますが、その裏側ではすぐそこまで聞きが迫っていると言っていいのではないでしょうか。もし、家計の余裕がなくなり、消費に大きな影響が出てくればさすがの米国経済も失速を免れないと思われます。そうなれば当然ながら企業も人員削減や賃金カットなどを行うでしょうし、そうなれば現在の安定を支えている労働市場が大きく崩れる可能性が高いのかなと感じています。そういう意味ではなんとかして力を残しているうちにインフレをコントロールできるようにしてほしいものですが、その戦いはより長期化の様相を見せており、不安は募るばかりです。

まとめ

今日は米国の家計について見てきました。米国は予想よりも力強さを残してはいますが、その実態は決してバラ色の未来を約束するようなものではありません。むしろ若干の先延ばしをしているだけなのかもしれません。インフレはより長期化する見込みとなっており、それまで家計が持ちこたえるかというのはかなりの疑問が残ります。そういう意味では非常に未来に対して不安が残るニュースだろうと感じました。