8月のPCEは大きく鈍化。そしてマーケットとFRBの意見が大きく乖離しているように見える。

米国のインフレは予想よりも勢いをなくしているのかもしれません。昨日発表された8月のPCEは市場予想を大きく下回るものとなり、インフレが大きく落ち込んできていることが確認されました。このことはインフレ抑制を目指すFRBにとっては朗報となりそうです。

PCEは大幅に鈍化

昨日発表された8月のPCEは非常に小幅な伸びにとどまり、インフレが想定よりも鈍化してきていることを示唆する内容でした。

8月の米個人消費支出(PCE)価格指数は食品とエネルギーを除くコアベースで、前月比で2020年終盤以来の小幅な伸びにとどまった。連邦公開市場委員会(FOMC)が次回会合で利上げを見送る根拠を強めそうだ。

  インフレ調整をした実質PCEは前月比0.1%増加した。

  コアインフレ率が前月比で低い伸びを維持することは、金融当局者がインフレとの闘いに勝利しているとの自信を強め、追加利上げを見送る余地を生み出すために不可欠だ。

  ブルームバーグの算出によれば、住宅とエネルギーを除くサービス業の価格指数は前月比0.1%上昇した。米金融当局が注目するこの「スーパーコア」サービス価格指数は2020年以来の低い伸び。

  キャピタル・エコノミクスの米国担当次席エコノミスト、アンドルー・ハンター氏はリポートで、「米金融当局のインフレ見通しが悲観的過ぎるとの当社の見方を裏付ける内容だ」と指摘。前月比でのペースが劇的に再加速すれば話は別だが、労働市場の落ち着きなどを考慮するとその可能性は低いとし、「PCEコアインフレ率は当局の年末予想である3.7%を大幅に下回るとなお予想している」と記述した。

  米個人消費は6、7月に爆発的に伸びたが、8月は力強さが消えた。底堅い労働市場が所得を下支えしているものの、物価高やガソリン代の上昇、学生ローンの返済再開などの累積的な影響が支出を冷え込ませる恐れがある。

  こうした動きはインフレ圧力をさらに抑制するのに寄与する可能性があるものの、同時にリセッション(景気後退)入りのリスクもはらんでいる。

  インフレ調整後のサービス支出は前月比0.2%増。輸送と娯楽がけん引した。財への支出は0.2%減と、3月以来のマイナス。自動車と家具の購入が減少した。

  ブルームバーグ・エコノミクスのスチュアート・ポール、イライザ・ウィンガー両エコノミストは「所得と消費の年次改定は、今年の家計支出が従来考えられていたよりも少なく、貯蓄は多かったことを示唆している。家計の消費見直しに伴う予防的な貯蓄の特徴だ」と指摘した。

  議会が10月1日から始まる新会計年度の予算案で合意するまで、今回のPCEが最後の主要経済統計となりそうだ。予算が成立しない限り、米政府は資金不足に陥り、必要不可欠なサービスを除き政府機関が閉鎖される。

  賃金・給与が加速した一方、個人消費を支える実質可処分所得は2カ月連続で前月比0.2%減少した。上昇する金利の支払いも家計を圧迫している。

  貯蓄率は年初からの数値が上方改定されたこともあり、8月は3.9%と、8カ月ぶりの水準に低下した。夏季に見られた消費ペースが今秋に持続できない可能性が高いことを示唆した。

  連邦準備制度理事会(FRB)の最新の調査によると、所得上位20%を除くすべての世帯で新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)期間に蓄えられた余剰貯蓄が底をつき、流動資産がインフレ調整後の実質ベースで2020年3月の水準を割り込んだ。

引用:bloombergより

このように米国のインフレは大きく落ち着きを見せてきています。これまでの急激な利上げの効果がかなり発揮されてきたということだろうと思われます。この結果はFRBにとっては非常に大きなものとなるでしょう。インフレ抑制を第一の目標に起き、とにかくインフレを鈍化させると行動してきた結果がようやく出たという感じがします。そして今回の結果を見る限り、今後の利上げについてはその可能性が大きく後退したことは間違いないでしょう。株式市場にとってもこのことは朗報と言っていいのかなと思います。

マーケットとFRBの意見が乖離しているように感じる

もちろんこの結果を持ってすべてが終わったということではありません。落ち着いてきたとはいえまだまだインフレは高水準です。目標とする2%への道のりはまだまだ忍耐のいることだろうとは思います。そういう意味ではあまり期待を持ちすぎるのも良くないのかなと思います。事実、この発表を受けてニューヨーク連銀総裁がそれでもしばらくは高金利を維持する必要があるとの発言をしたあとに、マーケットは大きく下落をしています。FRBはマーケットが考えるほど楽観的には見ていないことがこのことからもよくわかります。そういう意味では多少の利上げ圧力が緩和されたからと言って我々が期待するほど金融政策が変更されるかどうかはまだ未知数だろうと思います。

まとめ

今日は8月のPCEについて見てきました。インフレは確実に鈍化してきています。そういう意味では非常に期待が高まりますが、マーケットが考えるよりもFRBはそこまで楽観的に考えていないような気がします。そこに意見の乖離が見られ、今後の波乱要因となる可能性もあるでしょう。いずれにせよまだまだ戦いは続きます。過度な楽観論は控えたほうがいいと思います。